江戸前鮨 二鶴(にかく)/小倉

小倉駅からタクシーで15分ほどの住宅街に位置する「二鶴(にかく)」。タクシーの運ちゃんが「小倉で二鶴を知らないドライバーはいない」と言うほどの著名店。ミシュラン2ツ星です。1965年に創業し、現在は3代目だそうです。
カウンター6~7席のみの凛とした空気を湛える店内。船橋節男シェフは東京の名店「二葉鮨」で腕を磨いたのち帰郷。物腰の柔らかいナイスミドルといった雰囲気であり、祇園「にくの匠 三芳(みよし)」に通じるイケメンです。
酒は少し高め。ビールは小瓶で1,000円、日本酒は片口(1合ぐらい?)で2千円前後が相場です。一方で、シャンパーニュはボトルが7千円~と相対的に安く感じました。結局ビール→ビール→日本酒→日本酒といつもの流れに落ち着きます。
「氷下魚(こまい)」という、タラの仲間の卵から始めます。クタっと温かく炊かれており、酒を飲む気分を引き立ててくれます。
ヤイトガツオ。漁獲量の少ない幻の魚。ブラインドで食べれば絶対にカツオとはわからない風味であり、マグロとカツオとサバを美味しいとこどりしたようなクリーミーな味覚です。
マダイ。さっぱりとしながらもコクの感じられる上質な味わい。ちなみにシャリは赤酢と塩だけで作られており、ベタベタとしたしつこさがなく私好み。
赤身のヅケ。香り高く品の良い酸味も感じられ、王道の味わい。そうそう、ガリは丸っと漬け込んだものをその場でスライスしてくれるものであり、鋭い酸味が特長的。味も濃く、これだけでかなり酒が進みます。
茶碗蒸しにはシロアマダイとクルマエビ。こちらも希少価値の高い魚であり、こういったタネがバンバン出てくるのが地方の鮨屋の醍醐味です。
シメサバ。〆のポイントは緩く、そのぶん脂のクリーミーな舌ざわりを楽しむことができます。
クルマエビ。茹で置いたものをシャラっと握り、シャリと同じ温度で頂きます。茹でたてアツゥイも好きですが、茹で置きのほうがシャリとの一体感があるように思える。
アマダイの味噌漬け。凝縮感が増しており酒を呼ぶ味わい。
サワラもじっとりとクリーミーな味わい。当店は魚をトロっと仕上げるのが上手い。
はなっこりー。山口県の農業試験場で、ブロッコリーと何かを交配して開発されたもの。ブロッコリーのどぎつい緑味よりも幾分柔らかな味わいです。
冒頭のヤイトガツオを握りで。やはり目をつぶって食べれば絶対にカツオとはわからない味わい。コッテリとしながらもシャラっとした余韻であり、かなり好きな魚です。
アオリイカには沢山の包丁が入っており、まさに飲めるイカ。
唐津の牡蠣。小粒で凝縮感があり日本種にぴったりです。
大トロ。特有の酸味に舌先で溶けていく脂の旨味。これぞ江戸前の横綱といった美味しさ。
ウニは品の良い盛り付けであり、シャリや海苔とのバランスがちょうどよかった。何でも映えれば良いというものでもないのだ。
コハダが美味しい。これぞ江戸前といったグっとした仕込みであり、香り高く後味も爽やか。
アオリイカのゲソ。シンプルに炙ったものですが、もともとクリアな味わいなだけに少し物足りない。追い塩とかタレがあれば良かったんかな。
ブリもやはり脂が多くトロトロと口の中でほぐれていきます。好きだなあ、このクリーミーな鮨。
シロアマダイ再登板。これがタイかと二度見してしまうほどパワフルな味わいです。
アナゴは今にも崩れ落ちそうなほど柔らかなタッチ。塩だけでサッパリと頂き、オシャレな後味です。
赤出汁はベーシックな味わい。この饗宴ももうすぐお仕舞かと思うと寂しくなる。
巻物はカンピョウと鉄火の2種。個人的にはカンピョウをもっと食べたかった。追加すれば良かったかな。
玉はシャリを挟み込み海苔で巻くという面白い見た目。最近はカステラみたいなギョクが流行っていますが、こういう質実剛健な味わいも好き。
紅玉リンゴの水ようかん。おお、これはキッチリとした和菓子だ。鮨屋のデザートは水菓子だけの素朴なことが多いですが、当店はかなり手が込んでいてきちんと美味しい。
豆乳の葛寄せも出てきました。私の記憶を辿る限り2種の甘味を用意する鮨屋はかなり珍しく、そのいずれもがいちいち美味しいのが素晴らしい。品の良い豆の風味を楽しむ逸品でした。

お会計はひとりあたり2.6万円ほど。東京で食べれば3~4万円は確実のクオリティの鮨でした。かなりの江戸前推しですが、食材は地元のものを多用しており、郷土色を湛えた上での江戸前という面白いジャンルです。「照寿司」のような一発芸的な派手さはありませんが、大将の人柄や立地を含め粛々と真面目な鮨。同性の友人と、または大人の真面目なカップルでどうぞ。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。