チッタ アルタ(CITTA' ALTA)/後楽園

後楽園駅ならびに春日駅から徒歩10分強、文京区小石川の伝通院すぐ近くに位置する「チッタ アルタ(CITTA' ALTA)」。東京におけるモダンスパニッシュのはしり。店名は北イタリアの中世の都市にある街の名前だそうです。
店内は感じの良いビストロのような雰囲気でカウンターのみ。料理はもちろんワインのサービスから後片付けまでシェフ独りで行うという、すき家も真っ青のワンオペです。

茂呂岳夫シェフはケータリング系のキッチンで経験を積んだ後に渡欧。イタリアでは日本料理店を経た後に「アンティコ・アルベルゴ」「ダヴィットーリオ」で腕を磨き、興隆期の「エルブジ」にも在籍していたそうです。
コース料理は7,800円、アルコールのペアリングは7杯で6,200円とかなり安い。ただ、当店は飲み物の注文が必須であり子供に対してもノンアルコールペアリング攻撃。別料金の食後のカフェに、テーブルチャージや税を含めると何やかんやで結構高くなるという「いぐち」方式なので、お酒が飲めない方は心して訪れましょう。
自家製のグリッシーニに生ハムを巻き、綿あめを巻き付ける。甘じょっぱく日本人受けする味わいです。
ストラッチャテッラ(クリーム状のチーズ)に食べることのできる折り鶴。豆のペーストを紙状にしており上げるらしいのですが、手間の割に全然美味しくないなという印象です。嫌な予感。
生ガキにキュウリのジュレとトマトのジュレ。旨味の強い牡蠣にウニでまろやかさを補強します。キュウリのジュレが興味深い味わいです。
バルサミコ酢をキャビアに見立てて粒状に。下には鮭とばとホタテが敷かれています。見た目は楽しいですが、鮭とばの食感がボソボソでホタテには素材の良さが無く、バルサミコはただただ酸っぱい。内容の伴わない一発芸はガチで滑るから気を付けたほうがいいなと思いました。殷鑑遠からず。
フォアグラを栗に見立てて面白おかしくプレゼンテーションするのですが、味は今ふたつ。シェフが「お味はいかがでしょうか?」と声をかけてくるのですが、意見を聞いているのではなく褒め言葉を待っているニュアンスがあり、私としては奇妙な笑顔を残すしかありませんでした。
バーニャカウダ。ソースにはサザエの肝が練り込まれており、これは素直に美味しい。なのですが、やはりワンオペでこなしているため皿出しのテンポは非常に悪く、また、あろうことか鳴った電話に普通に出てその間の作業は全てストップという有様です。帰りたい。
白子のフリット。トリュフの風味を衣に忍ばせ、色合いを含めてトリュフに見立てた一品。味は悪くはないのですが軽薄な料理であり、こんなギャグみたいなことに精を出すんじゃなくて、美食を追求すれば良いのになあ。
真っ白なパンは真っ白な味わいであり曖昧模糊として実体がありません。そのあとに出てきたフォカッチャは普通に美味しかった。
けったいな容貌の料理は「スノードーム」とのことで、グラスの中にマグロと燻製のケムリを閉じ込めたもの。見た目は派手ですが不思議なほど感動しない。ゼラチン占有率が高く、料理というよりもゼラチンを食べる1皿です。
パスタはビーゴリ。ヴェネトを代表する伝統的な手打ちパスタであり、モチモチとした食感が美味。伊勢海老の旨味やタコの食感も含め、唐突にめちゃうまな皿が登場して困惑する。本日ダントツで美味しいお料理でした。
メインはエゾジカ。低温調理でしっとりとした食感で普通に美味しい。3時間かけて火を入れた玉ねぎも糖度が増してグッド。
アードベッグ(香りの強いウイスキー)の香りを移したチーズ。お口直しとしては悪くありませんが、これを1品とカウントするかねえ。
デザートは「フローティングダック」とのことで、お風呂に浮かぶ例のオモチャをチョコレートで作っているのですが、だから何という表面的で的外れな甘味です。
お茶菓子は見目麗しいプレゼンテーションなのですが、何とこれだけで6品カウントです。いやこれはルール違反ではないけどマナー違反でしょう。企画モノのアミューズが延々に続き、まともな料理はパスタとエゾジカだけ。「ブラッスリー ハルナ」に通じる数字のマジックを感じました。

お会計はひとりあたり1.7万ほど。アルコールのペアリングを付けてこの支払金額は安価ですが、食べた者を感動させる決定的な何かが欠けているため、安いだけで費用対効果は悪い。

加えて、お会計にカードは使えず我々を含めた数組がガタガタと立ち上がりATMに向かわなければならないハメに。いや、客単価数千円なら現金のみでも理解できるけど、ひとりあたり2万円近くを要するきちんとした店ではちょっとなあ。それでもシェフは涼しい顔で「そこのファミマが一番近いです」とスムーズな案内。こりゃダメだ。これまで数々のデートを台無しにしてきたこと間違いなし。最強デートクラッシャーに認定です。

それから数日、私は不機嫌に過ごした。

食べログ グルメブログランキング


人気の記事

「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。