旅籠 桜(はたご さくら、夕食)/宮浜温泉(広島)

広島市街から西へ、宮島を越えて更に西へ。瀬戸内海に面した小さな温泉街「宮浜温泉」。その中でも温泉宿「旅籠 桜(はたご さくら)」での夕食。関東の人にとってはかなり無名な宿ですが、レストランとしてミシュラン2ツ星を獲得しています。
指定した時間にダイニングに訪れると、既に先付と前菜がセッティングされています。

團塚裕二シェフは京都の和食店や東京・福岡・大分などの旅館やホテルで経験を積み、2020年より当館の料理長を務めています。そういう意味では星は前の料理長の功績なんかな。
先付は紫芋の豆腐。かなり甘く沖縄の料理のように感じます。手前のシンプルな海老芋のほうが好きかも。
前菜の盛り合わせ。全体的に味付けが濃く、かなり酒が進む仕様です。個人的にはアンキモの生ハム巻がツボでした。
お造りが美味しい。右からタイラガイ、マグロ、タイ、カンパチといったスタンダードナンバーですが、いずれのクオリティも一級品。量もたっぷりであり、これにライスが付けばそれだけで豪勢な刺身定食の完成です。
お椀はアナゴのしんじょう。お出汁の風味は繊細でありアナゴの味わいが印象付けられます。しんじょうのサイズがピンポン玉大もあり食べ応えがある。
豚肉の角煮。美味しいのですが、なぜここで、という気持ちもあり、素直に喜べない自分もいました。
黒毛和牛の塩焼き。こちらも間違いなく美味しいのですが、やはりなぜここで、という気持ちが強くなる。脂も強く先の角煮の脂と共に内蔵がへばってきました。
フォアグラの茶碗蒸し。ぐぬぬ、ヘヴィである。角煮→和牛→フォアグラの三連コンボを心地よく楽しむことができる人は珍しいはず。
お食事は白米に香の物、お椀は黒豚の粕汁。粕汁も美味しいのですが、先の三連コンボにすっかり胃袋が弱り切ってしまい、ついつい眉間に皺が寄ってしまう。
ピスタチオのアイスにあまおう、巨峰のわらび餅で〆てごちそうさまでした。

アナゴのしんじょうあたりまでは旨い旨いと軽快に楽しめたのですが、途中の肉類連発の逆ヴィーガン構成にはいささかかゲンナリ。何かを焼魚に置き換えるだけでかなり印象が違うと思うのだけれど。いずれにせよ、自らの内蔵のスペランカー化を感じた夕食でした。

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