てんぷら深町(ふかまち)/京橋

京橋駅でてすぐのところにある「てんぷら深町(ふかまち)」。ミシュラン1ツ星で食べログは4.22のシルバーメダル獲得(2020年8月)と、天ぷら業界の最高峰ともいうべきお店です。
かといって気取ったところは全くない雰囲気の店内。Tシャツにジーンズでも問題なく、みな気軽に天ぷらを楽しみにきているという印象。

深町正男シェフはお茶の水「てんぷらと和食山の上」へ入店し、27歳で和食部門の料理長に就任。そのまま定年まで勤め上げた後、当店を開業。現在は息子さんとのティームワークのもと、テンポ良くお店をまわしています。
中ビンが800円と悪くない価格設定。飲み物の選択肢そのものがそれほど多くなく、ここは天ぷらを食う店だとの宣言とも受け取れ好感が持てました。グラスワインの注ぐ量の豪快さも必見。ちなみに今日は開店の目途が立ったソムリエールのお祝いランチです。独立おめでとうとKP。
アミューズに生ゆば。キンキンに冷えており暑い日の1口目に最適です。ちなみにランチのコースは3種あって、ベースの№1に天丼が付くのが№2、さらに生ウニがつくのが№3で、順に8千円1万円1.3万円という明朗会計です。
まずは海老の脚の部分から。パリっとサクっと大人のかっぱえびせんです。

「いやー、もう、毎日バタバタで、喜んでいる暇なんて全然ないですね。比べるのもおこがましいですが、小林圭シェフの『嬉しかったのは発表から表彰台に上がるまでの数分間だけだった』っていうのは、すごくわかる気がします」ちなみに小林圭シェフとはパリ「レストランケイ」のオーナーシェフであり、ミシュランガイドフランス2020で3ツ星を獲得した方のことです。
車エビ。新鮮な太白胡麻油で軽く揚げられる芸風であり、非常に軽くサラサラとした食感。ソフトタッチ。レアな状態で供され海老の甘味が伝わります。
先ほどは塩で頂きましたが2本目は天つゆで。口直しに大根おろしをパクパクし、足りなくなればすぐに補充してもらえるという仕組みでした。

「覚悟はしていましたけど、あたしみたいな小娘がお店を開くことを面白くなく思う人も多いみたい。既にワイン売ってくれない卸とかありますもん。『個人的には応援したいんだけど、ちょっと色々あって』とか言って、何か圧力があったみたいで」何その最終消費者置いてけぼりの圧力。
ぎんなん。出始めのものであるのか実に青々とした味わい。

まあまあ、開店前から嫌がらせ行為があるだなんて光栄なことじゃないか。大物の風格すら感じるよ。誰にも気づかれずひっそりと開店してそのまま廃業するよりもよっぽどいい。
トウモロコシは揚げのスタイルに似通った個体であり、白くサッパリとした味わいです。
キスは大きく、塩・レモン・天つゆと味変しながらサクサクいきます。

「あたし、キス大好き」というセリフにドキリとするのは、私も歳をとったということなのか。「よこ田」のオヤジ、元気かな。
レンコンは糸をひくほどの粘っこさがあり滋味あふれる味わい。

「業界内で妙な噂も流されるし。知り合いから『新しいパトロン見つけたって本当?』とか無邪気に聞かれるんですよ。新しいも何も、これまでもこれからもそういうことは絶対に無い」
ハモは梅肉入りの大根おろしでサッパリと。

まあまあ、パトロンがいてもおかしくない風に見られるってことは、それだけキミが魅力的ってことなんじゃないの?ブスでデブな女がそういうふうに噂されることなんて絶対にないんだからさ。
根しょうがは大地の力強い味覚を感じ、天ぷらというよりもショウガです。

「内装業者とかにも女だからってナメられるし。かといって、そういう揉め事の解決に知り合いの男性に手伝ってもらうと、すぐに『やっぱり愛人だった』って言われるし。だから全部自分ひとりで何とかしなきゃいけないんです。ぐぬぬ」
アスパラも新鮮で瑞々しくジューシー。やはり天ぷらというよりも素材の味の強さが目立ちます。
アナゴは少し強めに揚げたのか、こんがりとした外観。うーん、これは好みなのかもしれませんが、私はこれぐらい分かりやすくガリっとした調理のほうが好きだ。

「でも、いいんです。あたしは大きなものに頼ることはやめたんです。私は私の人生を生きるの。結局、下手でも我慢強い人が生き残るんだから」その通り、人の足を引っ張って大成した偉人など聞いたことが無い。自分で戦えない者に他人のことをとやかく言う資格などないのだ。成功したければ自分が楽しいと思うことだけをすればいい。
お食事に入るとのことでお漬物が用意されます。残った酒のツマミとしてちょうどよし。
№2コースのゴハンものは天丼・天茶・天ばらの3種からのチョイスであり、私は天丼を注文。海老と小柱がこれでもかというほど含まれており、上品なタレも旨い。本日一番のお料理でした。
赤出汁は一般的なものであり印象には残らず。
デザートのメロンのシャーベットも取り合えず出しましたといった体であり、記憶に留まらない。

軽く飲んで、お会計はひとりあたり1.3万円ほど。この立地と肩書を考えればリーズナブルに感じるかもしれませんがいずれもハロー効果であり、事前情報なしで目隠しで食べれば凡庸な天ぷらに感じました。いずれのタネも綺麗すぎるきらいがあり消えそうな色コーデ。デリカシーに欠ける私の舌にはあまりに上品に感じました。

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天ぷらって本当に難しい調理ですよね。液体に具材を放り込んで水分を抜いていくという矛盾。料理の中で、最も技量が要求される料理だと思います。
てんぷら近藤の主人の技術を惜しみなく大公開。天ぷらは職人芸ではなくサイエンスだと唸ってしまうほど、理論的に記述された名著です。スペシャリテのさつまいもの天ぷらの揚げ方までしっかりと記述されています。季節ごとのタネも整理されており、家庭でも役立つでしょう。