蔓ききょう(つるききょう)/大津(滋賀)

滋賀県大津市は瀬田の唐橋のたもとにある「蔓ききょう(つるききょう)」。築100年オーバーの蔵を改装した雰囲気のあるお店です。食べログは3.86(2020年6月)でブロンズメダル獲得と、地方の飲食店としては大健闘。
1階はカウンター席、2階はお座敷・テーブル席というつくり。趣のある内装に炭の香りが心地よい。

西澤芽久美シェフは京都の料亭や大阪の人気店などで腕を磨いたのち独立。琵琶湖と山々に囲まれた食材の宝庫のものに加え、良いと思った素材は日本中から搔き集めます。
私は運転があるので(駐車場あり)ノンアルコールビールでお茶を濁します。日本酒は不老泉推しであり、仕込み水や酒粕を用いたデザートも提供しているので、何か太い繋がりがあるのかもしれません。また、ワインのラインナップが立派であり値付けも悪くなかった。
当店のフルパワーを堪能するお任せコースを注文。まずは前菜盛り合わせ。鮒鮓に始まりサバのカラスミや子持ち鮎、鹿の心臓など当店ならではのアテに舌鼓。ああ、酒が飲みたい。
丹後のトリガイを軽く炙ります。透き通るように柔らかく、しみじみと甘い。まるでイカかというサイズ感であり、量もたっぷり楽しめるのが良かったです。
ツキノワグマの鍋。おー!これは旨い!上品な脂と力強い肉の旨味がしっとりと溶け込み、滋味あふれる味わい。濃密な味わいを大量の黄ニラや山椒の風味でカバーし、シンプルながらまことに完成度の高い1杯であった。
ビワマスを炙ります。こちらも大サイズなのですが、淡白な味わいの魚なので、先の熊に比べると色あせて感じました。順序を変えるか、もっとややこしい調味で攻めたほうがよかったかもしれません。
天ぷらはホワイトアスパラにヤングコーン、ゴールドラッシュ(トウモロコシ)。軽く揚げただけのシンプルなものですが、素材が良いので充分に美味しい。やはり私には「にい留」のような99点と100点の戦いは判断がつきかねるのだ。
フグ白子もサラっと炙ったのみ。そう、当店の料理のほとんどは素材コンシャスであるため、調理も調味も実にシンプル。「凝った盛りつけをすると素材の味を損ねてしまう」と言い切る姿勢はなるほど一理あると頷いてしまう美味しさです。
焼野菜盛合せ。京都の田鶴農園を始め、日本中の顔が見える生産者から直で送ってもらっているそうな。なるほど塩を振っているだけなのにすこぶる旨い。これが野菜本来の味だと、ホリエモンを煽る民に食わせてやりたいクオリティです。
メインの肉は選択制で、連れは鹿をチョイス。少し味見させて頂きましたが、なるほどフレンチのこねくり回した味わいとはベクトルが190度異なり、豪快にして豪傑。これが鹿肉だと、妙に説得力のある味わいです。
私は鳩を選択。ハツや砂肝、レバーなどに始まり様々な部位を余すことなく楽しめるのが嬉しい。しっとりとした正肉に、手で掴みながら皮と脂を楽しむ部位と、「貪り食う」という表現がピッタリの美味しさです。ああ、赤ワインが欲しい。
お食事は滋賀県産キヌヒカリ。グループごとに釜が割り当てられお代わりもOK。
ごはんのお供が充実。ノドグロのへしこにそのアラ、鹿のミンチ肉。「へしこ」とは青魚に塩を振って塩漬けにし、さらに糠漬けにした北陸の郷土料理でありクセが強いことが多いのですが、コチラは実に澄んだ味わいで絶品。メインのお料理に格上げしたいほどの美味しさでした。
魚の骨を焼いてエキスを抽出したお椀。富山「鮨人(すしじん)」のエスプレッソとベクトルが同じであり、魚介好きには堪らない逸品。ああ、これでラーメンが食べたい。
デザートに不老泉の酒粕で作ったアイス最中。フィナンシェにも当該酒粕が用いられており、最後の最後までハンドルキーパーとなった役割分担を呪いました。

お会計はひとりあたり1.5万円弱。本気を出して飲めばもう数千円は上乗せされるでしょうが、それでも大変にリーズナブルな食体験であり、近所にあれば通い詰めたいほどの魅力があります。今回は一番高価なコースとしましたが、最安値は5千円~であり、アラカルト注文もOK。何ならランチは千円台~と、使い勝手最強なお店。大津に来る機会があれば是非どうぞ。

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