芝公園お花見トラブル2018

「ねえ、土曜日空いてる?相談したいことがあるんだけど」数ヶ月に一度しか連絡を取り合わないぬるま湯のような関係の彼女から深刻なメッセージが届く。夜は空いてることは空いてるけど午後は花見だから泥酔見込み、と返す。

「じゃあ、ランチは?」と珍しく食い下がる彼女。朝から花見開始までは僕ひとりで場所取りしてるから、その間で良ければ、という形に話がまとまりました。
花見は多摩川台公園でするのが結構好きなのですが、今年は芝公園で開催することにしました。赤いピンが立っている場所が我々のベースキャンプです。桜はもちろんのこと、東京タワーも望むことができ、地面は平坦、コンビニ・トイレ至近という理想的な環境です。
土曜日の8:30でこんな感じ。居心地のよいスペースは8割方埋まっているという印象です。我々は6畳ほどのレジャーシートだったので何とか隙間に入り込むことができましたが、日揮のように広大なスペースを要する場合はもっと早くに来たほうが良さそうです。
設営完了。ここからはひたすら堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ビ難キヲ忍ブ待ち時間。冒頭の彼女が到着するのは4時間後、お花見メンバーが到着するのは実に6時間後である。
厚手のストレッチマットを敷き、ごろりと寝転ぶ。 視界を埋め尽くすのは桜と青空のみであり、春の陽気をひとり占め。周りを見渡すと、私のように気の弱そうなパシリのいじめられっ子たちが、それぞれひとりぼっちに場所取りしています。君たちとは仲良くできそうだ。
桜+東京タワーという抜群の風景であるため、多くの外国人観光客が熱心に写真を撮っています。例えばこのアジア系カップル。彼女が彼氏に構図などを事細かに指示し、落ちた桜の花びらを拾わせ、その花びらの塊をふわりと中空に放たせ、その一瞬を逃さずフレームに収めさせ『東京タワーに見とれていると、ふと桜が舞った』という状況の、平たく言うとやらせ写真を都合10分以上撮り続けていました。
トラブル発生。少し離れた場所で30歳前後の男たちが言い争いをしています。どうやらレジャーシートを敷いて場所取りをしていたつもりだったが、そのシートが風で飛んだか片付けられたかしてしまい、その場所に別の団体が新たなレジャーシートを広げて座り込んでしまったようです。平和な世界に突如舞い降りる世界最終戦争。普段は温厚そうな会社員風のヤサ男が唐突に沸点に達する。やはりヒトのDNAには『領土を獲得せよ、しかもできるだけ広く』という指令がプリインストールされているのでしょう。
ちなみにお隣のサイトは4畳半ほどであり、場所取り係はおらずブルーシートを敷いただけだけの無人作戦。そのため「なあ、あそこのシート、捨ててしまっていいんじゃね?」「片付けちゃってさ、『え?最初からシートなんてなかったですよ?』とかトボければいいんじゃね?」のような会話がそこかしこから聞こえて来るため穏やかじゃない。

我々の隣でそんなトラブル起こされてはたまらんと、風でシートがめくれるたびに私がお隣のシートをピシっと広げ直し、手頃な石を見つけてはフチに置いてあげたりして差し上げました。どうかお隣がノリの良いギャルの団体でありますように。
11時を過ぎたころから断続的に大型バスが横付けされ、大量の観光客を吐き出して行きます。おそらく『日帰り東京名所巡り』的なバスツアーの団体なのでしょう、持参した弁当を広げて芝公園でランチタイムを楽しむようです。

が、ここでも「ここのシート、無人だから勝手に使わせてもらいましょうか」「そうよねあたしたち30分ぐらいで退散するし」のような極めて合理的かつ傍若無人なオバサンが大量発生。みんないい度胸してるよなあ。
そのほか、意図的なのか何も考えていないのか、無人のレジャーシートの上を土足でズカズカと踏み荒らしていく輩が結構多いです。くわえタバコのオッサンがママチャリでお隣のシートの上を走り抜けて行ったりもしました。しかも何故か買い物カゴの中には謎の花束が。

このように、無人での場所取りはトラブルのもとなので控えましょうね。基本的にはツーマンセルでの行動で、トイレは交代で行くことをオススメします。私すごく当たり前のこと言ってるあるね。
正午を少し過ぎて冒頭の女の子が到着しました。ロゼで乾杯し、本題である相談事に耳を傾ける。「彼氏ができたの!もう、好きすぎて、逆に彼にウザく思われないか不安で不安で…」お疲れ様です俺。ここから皆が到着するまでの2時間、ひたすらノロケ話を聞かされました。堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ビ難キヲ忍ブ。
三三五五と仲間が集まって参りました。花より団子とは良く言ったもので、やはり会が始まれば桜の花など眼中に入りません。「ニコタマのライズで買ってきた」というローストビーフが悶絶するほど美味しかったです。

「ほんとはね、今日は彼とお花見デートのはずだったの。でも突然彼から『やっぱり日曜日にしてもらってもいい?』ってドタキャンされちゃって…」それはドタキャンではなくリスケだ。っていうか相談はもう聞いたんだからお前早く帰れよ。
それにしても花見とは実にうるさい飲み会ですね。 飲食店と違って声量を注意する仕組みが無いため、声の大きさを競い合うかのように、どのグループも大音声をがなりたて合います。しまいには3つ隣のグループが品のないコール飲みを始めやがり、まことにやかましい。しかもそのコールの内容を全て自分が知悉しているのが嫌になる。恐らく彼らは低脳未熟大学の後輩であろう。
「ごめんね~、家にハーフボトルしかなかった~」とシャトー・ディケムを差し出す26歳。今日はエイプリールフールじゃないはずだ、と確認すると「ホントは90が好きなんだけど、今日は99で許してね」と片目をつぶる彼女。まさに清澄な蜜といった味覚であり、やはりこれを凌ぐ貴腐ワインは存在しないでしょう。
美味しいワインに旨いツマミ、マウンティングとは縁の無い各々独自の世界観を有するダイバーシティに溢れた参加者たち。楽しい1日でした。それにしてもシャッターを押してくれた隣客の写真のセンスが抜群。額に入れて飾りたい程である。


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