六厘舎(ろくりんしゃ)/大崎

定義した「超濃厚豚骨魚介スープ+極太麺」という方程式が、後続のつけ麺店の事実上の標準となった「六厘舎(ろくりんしゃ)」。かつての本店(2010年閉店)は2時間以上の行列で有名でしたが、現在の大崎店はランチのピークを除けば行列は無く、待ち時間なしで入店が可能となりました。
店内はカウンターに10席ほどにテーブル席がたくさん。かつてのカルト的な雰囲気とは対照的に、女性客や子供連れの家族まで幅広い客層に対応しています。とは言えおひとりさまやおふとりさまが多いのは相変わらずかもしれません。私は約20年ぶりで緊張しています。
看板料理の「つけめん」。相変わらず心沸きたつビジュです。写真は「特製つけめん(並)+スープ増し」ですが、デフォなら千円を切る価格設定であり、そのブランドや麺の量を考えれば良心的な値上げ率でしょう。紙エプロンの用意もあり、かつてのハードボイルドなニュアンスは一掃されています。
六厘舎体験の心臓部であるスープ。相変わらずドロドロと粘り気があり、比重の関係からレンゲが浮く勢いです。豚骨、鶏ガラ、煮干し、鯖節など、様々な素材から旨味という旨味を根こそぎ絞り出しており、スープというよりもソースの領域に達しています。他方、チャーシューや味玉などのトッピング勢に特徴は乏しく、スープに比べると主張は控えめに感じられました。
麺は 名門「浅草開化楼」への特注品であり、全粒粉を思わせる褐色を帯びた麺は、まずその重量感で存在を主張します。口に含み噛み締めれば力強いコシが顎を押し返し、凝縮された小麦の豊かな香りと甘みが爆発。並盛であっても450グラムもあるそうで、まさに当店のスープと対等に渡り合うために開発された麺と言えるでしょう。
以前は海苔の筏に魚粉を山のように盛るスタイルが好評を博したと記憶しているのですが、現在は卓上調味料として個包装されています。過剰な投入によるコスト増や衛生面を考えると、これはこれで時代の流れなのかもしれません。
こちらは「特製中華そば」。つけ汁ほどの粘度はないものの、六厘舎のDNAが強く感じられるスープです。豚骨と魚介の旨味が凝縮されているものの、より洗練された印象。ただし「つけめん」ほどの象徴性は無く、たまにしか来れないゲストが注文するには勇気の要る一杯です。
麺も「つけめん」のものとは異なり中太でウェーブしています。「つけめん」のガシガシとした食感とは対照的に、スープとの一体化を目指す頃合いに仕上がっているように感じました。ちなみに「中華そば」であっても並盛で240グラムもあるそうです。
美味しかった。「昔の思い出は美化される」というのは都市伝説であり、今も昔も変わらずバリ旨い。多店舗展開され、タイミングを見計らえば行列ナシにいつでもアクセスできるのもすごくいい。何ならデリバリーにも対応しており、楽天からは冷凍品を注文することが可能。上手く民主化が図られ、今や東京のラーメンインフラの一翼を担う存在に成長したと言えるでしょう。ごちそうさまでした。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

アコリエンザ(acco glienza)/美栄橋(那覇)

美栄橋駅すぐ、「ホテル ストレータ 那覇」のお隣にある「アコリエンザ(acco glienza)」。全面的にカーテンがかかっており、外からは何のお店か判別しにくい造りになっていますが、地元民に長年支持されるイタリアンレストランです。
店内は思いのほか広く、20席近くあるかもしれません。しかも当店の運営は1人の女性オーナーシェフによって全てが担われており、その効率的なキッチン運営能力には舌を巻く。ワンオペ史上、もっとも広い空間を統べているかもしれません。
流石に申し訳ないので、飲み物は全てボトルで注文し手酌することにしました。とは言え1本3千円台から始まる価格設定であり、予算を気にせずガブガブ飲むことができるのが嬉しい。
料理はアラカルト方式で、そのラインナップの豊富さには脱帽。伝統的なイタリア料理に加え、ソーキや県産牛など地元の食材を用いた料理も見逃せません。ネット上には「サービスが塩対応」「ぶっきらぼう」など接客態度に苦言を呈する口コミが散見されますが、もう少し全体を見て欲しいところです。
まずは「水ダコのカルパッチョ」。新鮮な水ダコを薄切りにし、オリーブオイル、レモン汁、塩、こしょう、ハーブなどでシンプルに味付けしています。水ダコ特有のプリプリとした弾力のある食感と、噛むほどに広がる上品な甘みが特長的。爽やかな酸味がタコの繊細な風味を引き立て、夏らしい清涼感溢れる味わいです。
マグロとアボカドのタルタル。海の幸と森のバターが織りなすハーモニー。マグロの酸味とアボカドの油脂が溶け合いまろやかな口当たり。薄切りのパンに乗せてつまみながらワインをゴクゴクいきましょう。
ウニのクリームパスタ。海の濃厚な香りとクリーミーな舌触りが特長の贅沢なひと皿です。ウニが持つ独特の甘みと磯の香りが生クリームやバターをベースにしたソースと絡み合う。どっしりとした口当たりで量もたっぷり。
パンも付きます。先のパスタの濃厚なソースをたっぷりつけてリッチな味覚。メインの煮込みのソースにおいても大活躍。
軟骨ソーキのスモーク。沖縄の伝統食材をイタリアンにアレンジしたユニークなひと品で、豊かな薫香が食欲を刺激します。軟骨はとろけるほど柔らかくコラーゲンたっぷり。なんだか泡盛が欲しくなってきました。
県産牛スジ煮。こちらもとろけるような柔らかさとコラーゲンの弾力が印象的で、そのとろける軟らかさに加え、牛スジ本来のコクが凝縮された味わいを楽しみます。濃いめの赤ワインに良く合う。
以上を食べ、ひとり1本ペースで飲んでお会計はひとりあたり8千円。これだけの料理をたっぷり食べてこの支払金額は実にお値打ち。ワンオペを感じさせないテンポの良さも魅力的で、近くにあれば毎日でも通いたいくらいです。何かと便利な立地であり、沖縄で生活をする上では外せないお店です。オススメ!

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寒い季節は沖縄で暮らしているので、旅行やゴルフだけで沖縄に来る人よりかは一歩踏み込んでいるつもりです。沖縄の人ってネットに書き込みしないから、内地の人が知らない名店が結構多いです。
沖縄通を気取るなら必ず読んでおくべき、大迫力の一冊。米軍統治時代は決して歴史のお話ではなく、今の今まで地続きで繋がっていることが良くます。米軍の倉庫からかっぱらいを続ける悪ガキたちが警官になり、教師になり、ヤクザになり、そしてテロリストへ。沖縄戦後史の重要な事件を織り交ぜながら展開する圧巻のストーリー構成。オススメです。

Le Jardin de Kamo(ル ジャルダン ド カモ)/水天宮前

モンペリエの星付きレストラン「Le Jardin des Sens(ジャルダン・デ・サンス)」で経験を積み、その東京丸の内店「Sens et Saveurs(サンス・エ・サヴール)」で長く厨房を統べた鴨田猛シェフが独立して「Le Jardin de Kamo(ル ジャルダン ド カモ)」を開業。南仏料理を専門とするカジュアルめのフレンチレストランであり、ミシュランガイド2025のNewセレクションに早速選出されています。場所は日本橋箱崎町、日本IBMのオフィスのすぐ近くです。
店内は白を基調とした清潔感のある内装に、オレンジ色の壁面や朱色のシェードがアクセント(写真は食べログ公式ページより)。南仏の伝統建築を思わせる誂えで心和みます。お店の奥には個室もあるようです。
お料理のコースは1.2万円ほどで、ワインのペアリングもそれに近い金額であり、悩み抜いた結果、自分たちでワインリストから選ぶこととしまいた。フランスものを中心に南仏産ワインの用意もあり、ボトルなら7千円台~といったラインナップです。
まずは生ハム。小豆島産のブツで、下にはカスレをコロッケ状にしたスナックが潜んでいます。生ハムは日本らしく麹を用いて造っているそうで、熱々の白いんげん豆と共に穏やかな旨味と甘味を楽しみます。
続いてガスパチョ。たっぷりのホッキ貝とスイカが上手く組み合わさり、ムール貝の旨味もきいています。リコッタチーズやキャビアのアクセントも小気味良く、ビーツとカシスで仕立てた鮮やかなガスパチョも実に爽やか。磯と大地の香りが複雑に絡み合う、夏らしいひと皿です。
夏が旬のイサキ。滑らかなフムスがクリーミーなコクで全体を優しく支え、新生姜と赤玉葱のピクルスがシャキッとした食感をプラスします。酸味と旨味のバランスが素晴らしい。
オマール海老のスフレ。プリプリのオマールの旨さは言わずもがな、濃厚なビスクがその味わいをさらに深めつつ、トリュフの土っぽい芳香とレモンクリームの爽やかな酸味が心地よい。
パンは素朴ながら穀物の豊かな風味が感じられる逸品。レモンを合わせたホイップバターの口当たりも実に軽やかです。
瀬戸内産マナガツオ。身がふっくらとしており、繊細な旨味と脂の甘みが上品な味わい。ジロール茸やアーティチョークの底からは魚介の旨味を凝縮したセトワーズのラビオリがその存在を主張しており、多彩な味覚を楽しむことができるひと品です。
メインは紀州鴨のロースト。その濃厚な赤身の旨味と適度な脂が赤ワインにピッタリ。ソースはビガラードで、オレンジを基調とした甘酸っぱくほろ苦い風味が鴨の濃厚さに良く合い、これぞ王道の鴨料理といった味覚です。ひと口サイズのコロッケも、トウモロコシの風味がつよつよな逸品。
デザートは青森産の大粒さくらんぼ「サミット」をチョコレートソルベと共に楽しみます。サミットの弾けるような甘酸っぱさに濃厚でビターなチョコレートの風味が寄り添いつつ、泡っぽいクリームで全体をまとめ上げます。アニスのほのかな甘みとスパイシーな余韻も洒落てます。
お茶菓子に焼き立てのマドレーヌ。お花の繊細な香りがふわりと漂い、バターやハチミツの濃厚なコクと調和します。カリッとしたエッジとしっとりした生地の対比も心地よく、1ダース焼いてもらってテイクアウトしたいくらいです。
紅茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上のコース料理が1.2万円ほどで、ワインや水を加えてお会計はひとりあたり2.4万円。料理の質および量を考えれば度肝を抜かれる費用対効果です。全体を通してモダンでありながらもフランス料理としての芯は剛直なものが通っており、私が一番好きなスタイルのフレンチかもしれません。

次の夏は改めて南仏を訪れ、「Le Jardin des Sens(ジャルダン・デ・サンス)」にお邪魔したいと決意させる、魅力のあるディナーでした。

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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。

吟魚のはなれ 吟チロリ(ぎんちろり)/富山駅

富山で急激に勢いを増す海鮮居酒屋「吟魚(ぎんぎょ)」グループ。この日は2号店の「吟魚のはなれ 吟チロリ(ぎんちろり)」にお邪魔しました。食べログでは総本山と共に百名店に選出されています。富山駅からは歩いて10分くらいかな。
店内は祝祭的な賑やかさがあり、カウンターにもテーブルにもギッチギチに客が埋まっています。とりわけカウンター席は狭く感じるのですが、まあ、安くて旨い居酒屋なのだから仕方ないと言えば仕方ありません。賑やかに飲むことを決意して訪れましょう。
日本酒は富山の地酒を豊富に揃えており、日によっては「勝駒」などのレアものも置かれているそうです。日本酒やビールのほか、ギャルが好みそうな創作的なサワー(?)なども用意されていました。
さっそく「吟魚の100円のアレ」が届きました。いわゆる魚のアラ煮なのですが、味の良く沁みた旨い魚がたっぷり入ってたった100円という破格の値付け。食材を無駄にしないという哲学も感じられて素晴らしい 。
刺身盛り合わせは800円。その日水揚げされた8種類から9種類もの新鮮な魚介が盛り込まれており、信じがたい費用対効果です。聞いたことのない近海物のタネも含まれるのも嬉しい。
吟魚サラダ。新鮮な野菜が盛りに盛り込まれています。面白いのは左下の「自家製ツナ」で、ネギトロに火を通したような独特の口当たり。ありそうでない、アイデア賞な具材です。
名物の「地だこのすり身揚げ」。熱々でふわふわとした食感の中にタコの旨味が凝縮されており、魚介を創造的に活用する店の姿勢を象徴するひと品です。
炙りアジと水ナスの山椒オイル和え。香ばしく炙られたアジの旨味と、水ナスの瑞々しい甘さが調和したひと品。まず口に広がるのは皮目を炙ったアジの香ばしい風味と、じわりと溶け出した脂の濃厚な甘み。そこへフルーツのように甘くサクッとした食感の水ナスが、爽やかな後味をもたらします。全体の味をキリリと引き締めるのが山椒オイルの存在で、舌の上でピリリと弾ける爽快な刺激と、鼻に抜ける清涼な香りが、アジの脂をさっぱりとさせ、料理に立体感を与えています。
海鮮春巻き。色んな魚介類が薄くパリッとした春巻きの皮に包まれます。パリパリの皮の中から、魚介の旨味が凝縮された熱々の餡がとろけ出す。
〆の食事に「トロたく のっけ寿司」。脂ののったトロと、シャキシャキのたくあんがカッパ巻きの上に豪快に盛り付けられます。主役は当然にトロで、舌の上でじんわりとろける芳醇な甘みが堪りません。
以上を食べ、そこそこ飲んでお会計は7千円ほど。上質な魚介類を山ほど食べてこの支払金額は実にお値打ち。酒も良く、海鮮居酒屋の最高峰とも言うべきお店でしょう。広告宣伝費をほとんどかけず、SNSと口コミのみで集客しているのも良いですね。恐らくその分が直接材料費に充てられているのでしょう。次回は季節を変えて、その旬の魚介類を楽しみにお邪魔したいと思います。全店舗制覇しようかな。

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富山は食の宝庫。天然の生け簀である富山湾にジビエや山菜が豊富な山々、そして米と水。レストランのレベルは非常に高く、支払金額は東京の3割引~半額の印象です。だいぶ調子に乗ってきた金沢が嫌な方は是非とも富山に。

待機児童ゼロ、結婚した女性の離職率の低さ、貧困の少なさ、公教育の水準の高さなど、日本型の「北欧社会」が富山県にはあると分析する1冊。10年間にわたって富山県でのフィールドワークを続けてきた財政学者の視点が興味深い。