こきち/富士見町(広島)

ヒルトン広島の裏手の路地にある「こきち」。観光客向けの行列店ではなく、地元民が行きつけとする昔ながらのお好み焼き屋です。予約などは特に不要で、パっと立ち寄ってサっと食べるというラーメン屋的な使い方も可能です。
店内は入って右手が鉄板とカウンター席で、左手が小上がりとなっています。鉄板にも2パターンあって、手前がガンガン調理する鉄板で、奥が食べるための保温用(?)の鉄板という誂えです。
アルコールはいずれも1杯500円前後と良心的。お好み焼きだけでなくツマミのメニューも豊富なので、ダラダラとした飲みにも使えるかもしれません。
我々もツマミとして広島名物「コウネ」の塩焼きを注文。「コウネ」とは両前脚の間にあたる部位であり、一般的には「ブリスケ」と呼ばれています。ご覧の通り脂身の多い肉を薄くスライスして鉄板で焼いた料理であり、不味くはありませんが、美味しくもありません。量も少なく、これで750円は高いなあ。
「海鮮コンビ焼き」の「そば」。薄いクレープ状の生地に玉子焼き、キャベツ、気持ちばかりの魚介類が含まれていますが、四捨五入すれば「そば」です。加えてその「そば」は仕入れ品であるため、料理としてのクリエティビティは感じられませんでした。
「こきち焼き」の「うどん」。薄いクレープ状の記事に玉子焼き、キャベツ、気持ちばかりのイカ天が含まれていますが、四捨五入すれば「うどん」です。加えてその「うどん」は仕入れ品であるため、料理としてのクリエティビティは感じられませんでした。
また、当店に限った話ではありませんが、広島のお好み焼きはそれぞれの具材に一体感が無く、調味の殆どを仕入れ品のソースに頼っているため、わざわざお店で食べるほどのものかなあというお気持ちがあります。もちろん私は広島のお好み焼きを食べた経験に乏しく完全な素人なので、「ココに行けば考え方が変わる!」みたいなお店があれば教えて下さい。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

鮨 かわしま/橿原神宮前(奈良)

奈良は橿原神宮前駅から歩いて7-8分の場所にある「鮨 かわしま」。ミシュラン1ツ星。なのですが、カジュアルな焼鳥屋のお隣に凛としたファサードを抱えており、世にも不思議なコンビネーションです。土地柄か駐車場も用意されています。
店内は現代美術館のようにスッキリとしており、間接照明が目に優しい。カウンターは柔らかい材木を用いているとのことで当然にスマホ置きは厳禁。腕時計の向けの座布団まで用意されます。
アルコールは安く、瓶ビールが650円に日本酒は1合千円前後だった気がします(サービス料は別途8%)。キューブ状の木材にメニューが彫り付けられているのが面白い。安易に価格変更はしないとの決意めいたものを感じました。
まずはスープから。キンメダイを焼き浸しにしたエキスとシイタケの旨味を合体させ、海苔の風味を聞かせました。シイタケの風味が思いのほか強く中華料理のようなニュアンスを感じます。
蒸し物はエゾアワビ。アワビの美味しさは当然として、ゴボウのふくよかな香りがアワビの味覚を補強します。
毛ガニとチーズ。チーズは「飛鳥の蘇」という古代のチーズの復刻版であり、当店の近所で作っているとのこと。毛ガニの旨味とチーズの旨味でチビチビ日本酒をやりましょう。
スペシャリテの白子のパテ。マフグの白子の水分を抜いてパテ状態にし、ふりかけ状のカラスミを散らします。先のカニチーズと共に酒のツマミにピッタリです。
ノドグロの小丼。当店のにぎりの原則は赤酢なのですが、こちらは白ごはんで食べた方が合うとのこと。のどぐろの潤沢な脂を白米がキッチリと受け止めます。
にぎりはコハダから。お酢の骨格のある酸味がピっと締まって思わず背筋が伸びる開幕戦です。
シロアマダイ。ムッチリと弾力のある個体であり、白身魚ながら赤身肉を思わせる迫力です。
ちなみに当店のにぎりにはワサビがが仕込まれておらず、必要に応じてセルフでつまむというスタイル。もちろん意図があってのことでしょうが、どうにもスーパーのパック寿司を惹起させる流れであり、私は好きじゃありません。ガリもおかわりはNG。クセつよつよの鮨屋です。
サヨリ。綺麗な流れの味わいです。
剣先イカには塩ウニが仕込まれており、調味は無くともウニの塩気でイカの甘味を溶きほぐすスタイルです。
アカガイはややクセがありますが味の強さと見るむきもあり、タフな味わいです。
アカガイのヒモの部分はお酒のアテとして頂きます。基本的に酒を飲むことを前提の流れであり、シェフは酒飲みと見た。
ホッキ貝も幾分かの臭みが感じられ、つまるところ私は貝の独特の風味があまり好きではないのかもしれません。
トリガイはツマミで。ウニが山ほどトッピングされており、要するにウニです。美味しくないわけがありません。
続いて手巻き、というかハーフパイプ状の陶器に置かれて出されます。口の小さい方は大盛りのまま手渡しされても困ることが多いと思うので、このように少しづつ崩しながら食べることができるのは良いアイデアでしょう。
マグロは血合いギシの部分から。旨味が凝縮しておりストレートな美味しさです。
間髪入れずハラミ。一転して脂の強い部位であり、トロリとした甘味に思わず笑みがこぼれます。
海苔でサラリと巻いてヅケ用のタレを軽く塗って頂きます。マグロの酸味と海苔の磯の香りが上手く調和しました。
甘エビ。エビそのものの美味しさはさることながら、頭の部分を焼いて潰してどないかしたものを調味に用いており、鮨ながらビスクのようなパンチを感じるひと品です。
カツオはバリっと焼いて風味付け。美味しいのですが、ここのところスーパースター続きだったので陰に隠れてしまった感もあります。もっと序盤で食べたほうが良かったのかもしれません。
茶碗蒸しには冒頭の毛ガニのカニミソとホタルイカ。茶碗蒸しの部分どこ行ったというほどのツマミ感であり、ここまで酒の進む茶碗蒸しは中々ないでしょう。
シマアジ。しっとりとした旨味がのっており、歯ごたえも充分。
ニシンは風味がギッタギタに強烈であり、ひと口食べて旨いと感じられる味覚です。
ハマグリ。特大サイズで口いっぱいに頬張れるのが嬉しい。ただ、意図してなのかどうなのか供出温度がかなり低く、個人的にはホッコリとした温度で供出されたほうが楽しめた気がします。
アナゴは丁寧に炊かれており、ホッコリとした口当たり。サイズ感は小さめですが、ひと口でイージーに味わえるあたり、このぐらいの大きさが適正なのかもしれません。
マグロを色々と巻いたん。シャリよりもマグロのほうが多いという贅沢な仕様であり、四捨五入するとマグロです。文句なしに美味しい。
玉子は芝エビや大和芋がたっぷりと組み込まれ私の好きなタイプ。ジュブジュブとジューシーな舌ざわり。
水物は奈良が誇るブランド苺の「古都華(ことか)」。糖度は非常に高いのですが気品のある甘味であり、ひと粒で100メートルは走れそうな味わいです。
蕎麦茶で〆てごちそうさまでした。

以上を食べ、お酒をそこそこ飲んでお会計はひとりあたり3万円弱といったところ。橿原市での食事としては非常に高価な夕食ですが、東京の鮨屋と比べれば全く割安であり、その質は東京の有名店と遜色ありません。

他方、魚介類は全国から取っており(海なし県だから当たり前だけど)、ある意味では今風にフォーマット化された鮨にも感じました。それでも奈良県にはきちんとした鮨屋が少ないので当店は稀有であり貴重な存在と言えるでしょう。

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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

nerisa(ネリザ)/西小山

学芸大学「リ・カーリカ」などを展開するタバッキ社で腕を振るった田中隆照シェフが西小山で2021年末に独立開業。西小山ってどこやねんな立地ですが地元客を中心に評判は上々で、さっそく食べログでは百名店に選出されています。
お店の構造はラーメン屋に似ていて、厨房に面したカウンター席が7-8席に奥にテーブル席が1卓。料理人ひとりサービスひとりといった陣容にちょうど良いサイズ感です。

田中隆照シェフは自由が丘「バッボアンジェロ」で経験を積んだのち渡伊。トリノで腕を磨き帰国の際にタバッキ社の立ち上げにジョインしたようです。店名は「田中」をイタリア語でもじったものだそうです。
グラスワインは千円台~ですがボトルワインが充実しており、ゲストがセラーから自ら選び取ることができます。ボトルワインは7-8千円が最多価格帯のように見えました。
お口取りはポレンタ(トウモロコシ粉のアレ)に干しダラのペースト。ほんわりと温かく、程よい塩気が食欲を掻き立てます。なお、料理はおまかせで7,500円~なのですが、我々はアラカルトでお願いしました。
初ガツオのタルタル。カツオとは存在感つよつよな味覚であることが多いですが、こちらは調味で上手くその主張をマスキングしており、たっぷりの薬味(?)も混ぜ込んで一体的な味わいへと昇華させています。なんともセンスの良い味わい。
マダコのローストとチュッピン。チュッピンとはリグーリア州の魚介スープであり、濃密な磯の風味に浸ることができます。タコの脚も肉厚でグニグニとした食感が楽しい。スープというよりも頑強なタコと濃厚な魚介ソースを愉しむ逸品です。
和牛モツのアラビアータ。和牛の脂が円やかで少しもクドくありません。また、アラビアータ部分もトマトの酸味は穏やかで程よくスパイシー。料理名からは割にどぎついものを想像していたのですが、思いのほか優しい味覚です。
入間地豚ロースのロースト。シェフは埼玉出身だそうで、その埼玉愛は留まることを知らず、埼玉の食材を多用しているそうです。厚切りでザックリとしたストレートな料理であり、ヒトのDNAに訴えかける率直な味わいでした。
〆に炭水化物でも取ろうとスパゲッティ・ミートソース。トマト味を主軸に置いたものを想像していたのですが、思いのほか肉々しいソースであり、四捨五入すると肉料理かもしれません。赤ワインと合わせて食べるよろし。
もう少し食べれそうだということでパプリカのリゾットも注文。パプリカのエキスで炊いているのか真っ赤っ赤でありその風味も潤沢です。パセリの濃密な緑の味わいとアンチョビの塩気も交互に押し寄せ、ある意味では雑炊風でもあり、日本人なら必ず好きな味覚でしょう。

また、このようにアラカルトでの注文で追加注文も全然アリなので、順番を自由自在に組み立てることができるのが良いですね。イタリアンの序盤にいきなりパスタ食べるスタイルはいつまでたっても慣れないのだ。
以上の料理を2人でシェアし、ひとり1本ペースで飲んでお会計はひとりあたり1.5万円といったところ。料理の質が素晴らしく、また自由度も高いのが良いですね。都心の予約困難で一斉スタート2回転のような働き方に一石を投じる商売であり、ご近所さんの日常に溶け込むスタイルです。遅い時間にはバーとしての利用としてもOKだそうで、「caillou(カイユ)」と同じく10年後も20年後も地域住民に愛され続けること間違いなし。オススメです。

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