クチーナ サルヴェ(cucina salve)/西武秩父

秩父神社の表参道にあたる番場通りに位置する「クチーナ サルヴェ(cucina salve)」。最寄りは秩父鉄道の御花畑駅(すごい駅名だ)ですが、東京の人であれば西武秩父駅から歩くのがスムーズでしょう。ゴエミヨやジャパンブランド2022埼玉版に掲載されています。
店内はカウンター席とテーブル席がいくつかで、トータルでは30席ほどでしょうか。木目調が温かい親しみやすい内装です(写真は公式ウェブサイトより)。ちなみにこの建物自体は「秩父表参道Lab.」という複合施設であり、お隣のビアバーや上階のホステルもシェフの兄弟が経営しているそうです。

坪内浩シェフは「種をまく料理人」と自称し、自身の畑で150種以上の野菜を育てます。昼間は農作業に従事しているため、ランチ営業は週末のみ。幼少期に極端なアレルギー体質だった経験を活かし(?)、アレルギー・ベジタリアン・ヴィーガン対応も望むところ。
飲み物はお隣のビアバーが手配する「秩父麦酒」直送の樽生ビールにイチローズモルトといった地酒が用意されており観光客は嬉しい。ワインペアリングはイタリアワインを中心に1杯千円と単純明快です。
お通しに自家農園で育てる落花生。未熟なものから完熟したものまで食べ比べでグラデーションを楽しみます。
続いてサラダ。柿を中心とした自家農園の野菜と果物の味が濃い。ロースハムも自家製で、リコッタチーズも地元のチーズ工房のものを起用と、偏執的なまでに地産地消です。
お魚料理はコショウダイとチャンバラガイ。コショウダイのむっちりとした食感にチャンバラガイのお出汁をたっぷりと注ぎます。
詰め物をしたケンサキキイカ。イカの旨味の強さは当然として、付け合わせやソース、散らしたハーブなどの脇役陣の主張も強く、大地の力強さを感じます。
自家栽培の小麦を用いたパニーノ。手前はアナグマに奥はカボチャ。アナグマのつるりとした口当たりの脂が堪らなく美味。生地そのものの味も濃い。
パスタの小麦も自家栽培で、用いる卵やサルシッチャも自身の養鶏場のもの。栗は自分の山から拾って来るし、農園の肥料は養鶏場の鶏糞で自給。世界の全てが秩父で完結しています。
隣町の横瀬からやって来た天然ニホンシカ。低温調理でしっとりた口当たり、かつ、シカの力強い鉄分をダイレクトに楽しむことができます。秩父舞茸には香りが凝縮されています。
お口直しにも気合が入っていて、パッションフルーツの元気いっぱいな酸味と果実味に思わず笑みがこぼれます。
こちらは埼玉の在来品種の青茄子を土台に放牧牛のラグーソースをたっぷりと。牛肉の美味しさはもちろんのことチーズの力強い旨味も見逃せない美味しさです。
こちらのラムはニュージーランド産なのですが、主役は実は周りを取り巻く秋野菜なのかもしれません。いずれもまことに滋味あふれる味わいです。
デザート1品目は自分ちの卵を用いたプリン。これぞプリンといったクラシックなスタイルであり、濃厚な卵の風味を愉しむ逸品です。
続いてパンナコッタ。やはり素朴な設計なのですが、素材そのものの力が強い。付け合わせの和栗の渋皮煮も1粒で300メートルの存在感です。
地元の紅茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上のコース料理が11,000円と感動的な費用対効果。ランチコースは1,980円とより奇跡なのですが、やはりシェフの全精力すべてを楽しむべきお店であり、夜に最高値コースで予約するのが良いでしょう。

「私たちの園(その)」「宇宙の力に助けられながら」といった発言に若干のスピリチュアル方面を感じますが、食後はその主張に納得せざるを得ないほど説得力のある食体験。弘前の「オステリア・エノテカ・ダ・サスィーノ (OSTERIA ENOTECA DA SASINO)」も自給自足がウリですか、どこか商売っ気が強くビジネス地産地消を感じるので、当店の商売っ気の無さには驚きを禁じ得ない。秩父観光の〆に是非どうぞ。

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