JINBO MINAMI AOYAMA(ジンボ ミナミ アオヤマ)/表参道

2022年4月にオープンし、さっそくゴエミヨに掲載された「JINBO MINAMI AOYAMA(ジンボ ミナミ アオヤマ)」。場所は青山の裏路地で「リストランテ濱崎」の跡地です。
店内は木の温かみが感じられる柔らかい雰囲気で、高級感がありつつも嫌味を全く感じさせません。テーブルは5-6卓あって、個室もあるようです(以上、写真は公式ウェブサイトより)。

神保佳永シェフは茨城県出身で、お父様もイタリア料理人。しかしながらそのキャリアはフランス料理からスタートし、フランスやイタリアで経験を積んでからは「ひらまつ」グループで活躍。後に野菜を中核に据えたイタリア料理店「HATAKE AOYAMA」を開業し現在に至ります。
お店の風格からするとワインは良心的な価格設定で、イタリア料理店ながらフランスワインが充実していました。もちろんイタリアワインもたっぷり用意されています。お水は無料で、長野県とイケてるやつを持ってきて料理にも用いているそうです。
アミューズが凝っていて、さすがは元フランス料理人と思わず唸ってしまう完成度です。イカを用いて黒いアメリカンドッグ的なひと品がお気に入り。「Élan.MIYAMOTO(エラン ミヤモト)」のように、シェフが厨房から出てきて全ての料理を説明してくれるのも楽しい。
お出汁をきかせ、アワビや百合根、岩海苔、カラスミなど日本料理を思わせる組み合わせです。旨味が強く、思わず日本酒が欲しくなります。
カポナータなのですが、そのナス使いがやはり日本料理調で繊細な美味しさです。他方、酒粕を用いたチーズのソース(?)はインパクトの強い味わいで、トロリとしたウニの甘味と見事な調和を保っています。
パンは2種で、いずれも素朴な味わいです。全体を通してソースつよつよの芸風なので、パンはこれぐらい穏やかでちょうど良く感じました。
豊洲の有名仲卸「藤田水産」からゲットするマグロを用いたひと皿。ヅケにしてビーツのソースを乗せキャビアをトッピングしてバリ旨い。プレゼンテーションも付け合わせの質も含めパーフェクトな料理です。
スペシャリテのバーニャカウダ。用いられる野菜の種類は30以上あり、それぞれの特性に応じて焼く・蒸す・揚げるなどの調理技術を駆使します。甘味はもちろん酸味や苦味など色んな味がする。ソースは全体を取りまとめるわかり易い味わいであり、野菜料理として究極と評して良いひと皿です。
パスタはトマトテイストでちょっぴりピリ辛。具材には豚舌や豚足を用いており複雑な旨味が感じられます。ところで冒頭のメニューを選ぶ際にトリュフハラスメントがあり、ここで改めてもう一度トリュフハラスメントがあったのは流石にしつこく感じました。本当にトリュフを起用したほうが良いと考えるのであればデフォで組み込んで値上げすべきであり、素人に選択を委ねるべきではない、というのが私のスタンスです。
ラヴィオリにはカニやイモが詰まっているのですが、何よりハーブのエキスを抽出したスープが面白いですね。ラヴィオリはコッテリしたソースで食べることが多いですが、このように繊細に楽しむのも面白く感じます。
メインは熊本あか牛を熟成したひと品。思いのほか脂質が多くまことにジューシー。付け合わせにはミンチ肉がたっぷり含まれており、アクセントに奈良漬けを用いるのも興味深い。濃くて赤いワインが良く合う。
お口直しにブドウの氷菓。発酵させたラムレーズンなども装備されておりお洒落な味わいです。そのへんの手抜きレストランのガリガリ君みたいなグラニテとは一線を画す味わいです。
デザートはティラミス。ティラミス界隈における新たな試みとも言える3D感覚です。液体窒素を用いたフワフワな煙も見て楽しい。味そのものはティラミスなのが面白く、素直に美味しかった。
小菓子もきちんと出ます。先のアシェットデセールにせよ、このあたりの拘りはフランス料理出身者そのもの。私のようなフランス料理愛好家にとっては心温まる締めくくりでした。
以上のコース料理が2万円で、ひとり1本ペースで飲んでお会計はひとりあたり3万円強。値上がりが続く都心の高級店としては実に良心的な価格設定であり費用対効果は抜群です。何よりシェフが前面に立っていて、物理的にも精神的にも顔が見えるのが良いですね。意欲的な料理でありながらも土台はきちんと旨く、複雑ながら分かり易い味わいで万人が楽しめるお店です。デートにもピッタリ。オススメです。

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