メゾン ケイ(Maison KEI)/御殿場(静岡)

アジア人として初めてフランスのミシュランガイドで3ツ星を獲得した小林圭シェフと和菓子の老舗「とらや」がタッグを組み、御殿場は東山の地に開業した「メゾン ケイ(Maison KEI)」。小林圭シェフと虎屋18代当主のムッシュ黒川光晴はパリでのズッ友だそうです。
ワオ!なんて格好の良い内装!壁一面の窓から飛び込むグリーンが心地良く、Ouchesの「Troisgros(トロワグロ)」のようにフランスの地方にある風光明媚なレストランを想起させます。

ところで天気が良い日は富士山を望むことができるのですが、夕方は日光が直接入り込んでくる方角での設計なので、気になる方はバリバリに日焼け止めを塗って、もしくは日が暮れてから訪れましょう。
ワインは都心3区のフランス料理店と変わらない価格設定であり、ゲストの殆どが東京からの遠征組なので、四捨五入すると当店は港区なのかもしれません。

厨房を預かるのは佐藤充宜シェフ。五反田「ヌキテパ」などを経て渡仏し、トゥールーズなどの地方のレストランで腕を磨いたのちパリの「Restaurant KEI」へ移り、2021年に当店の料理長に就任しました。
食前酒を楽しみながらアミューズをつまみつつ、この日のコース料理の説明を受けます。このあたりの運用はフランスにおけるフランス料理店と同じであり、いわゆるひとつのあげぽよです。
トウモロコシのスープ。冷え冷えのあまあまで美味しいのですが、刻んだオリーブが組み込まれているのが良いですね。ところどころのオリーブ・アクセントがオシャレな味わいを演出します。
スペシャリテのサラダ。地元の野菜を中心とした30品目にも及ぶひと皿であり、かき氷のようなレモン泡の下には色んなソースが忍んでいます。野菜だけでなくお魚(マス?)も結構入っており、見た目以上に食べ応えのあるサラダです。
パンはこれまた近くの人気店「ブーランジェリーパティスリーアダチ(Boulangerie Patisserie ADACHI)」謹製。餅は餅屋とスっと専門家に外注に出す姿勢は嫌いじゃありません。
イチボのタルタル。タルタルといえば冷製が定番ですが、こちらは仄かに温かく、ありそうでない料理です。卵黄という天然のソースにたっぷりのチーズ、黒いダイヤの官能的な香り。
パリの「Restaurant KEI」ではスズキのウロコ焼きがスペシャリテですが、当店では静岡産のキンメダイを起用しています。魚はテレビ番組「情熱大陸」でも取り上げられた「サスエ前田魚店」から取っているそうです。キンメダイの美味しさは当然として、付け合わせ(?)のトマトたちがバリ美味しい。
エゾアワビ。ソースが真っ黒で複雑。アワビの肝やイカのスミを用いており、またところどころアンチョビの風味がきいているのも印象的。序盤のトウモロコシのスープにせよ、おっ、と思わせる仕掛けの多いお店です。
メインは愛知産の鴨。こちらも鴨も完璧に調理されており、また、ソースの出来栄えが素晴らしい。鴨に肉汁に加え鶏のレバーなども練りこまれており濃厚にして濃密。ガツンとフランス料理を感じさせてくれるひと皿です。ソースは別の器でお代わり追いソースできるのも嬉しい。
デザートひと皿目はヤギのミルクを活用したひと品。ヤギ乳特有の酸味が感じられ後味が爽やかです。
メインのデザートはフランスの伝統菓子であるヴァシュラン。焼きメレンゲにアイスクリームやホイップクリームを掛け合わせて楽しむものですが、当店は大胆に「とらや」の羊羹やあんこソースを用いています。夏の盛りに訪れたので果物はマンゴーやパッションフルーツなどトロピカルなものでしたが、これは季節によって変えてくるそうです。
オマケでほうじ茶のパンナコッタ。これがキッチリほうじ茶しており、また上品な甘味も湛えており手堅く美味しい。当店の総合力をまざまざと見せつけられるしめくくりです。ちなみにコーヒーやお茶類はコースとは別料金で、このスタイルもフランス風です。
以上のコース料理が1.4万円で、それに酒やら税サやらを加えてひとりあたり2.5万円ほど。料理のクオリティを考えれば信じがたい費用対効果であり、御殿場までの交通費を考えてもお値打ちに感じます。スタッフは豊富で接客も完璧。最安値のコース料理は5,500円と、どう考えても赤字だろという価格設定であり、もはや虎屋の文化貢献事業にすら思えてきました。
ちなみにすぐ近くには史跡の「東山旧岸邸」や虎屋の和菓子工房である「とらや工房」などもあるので、「メゾン ケイ(Maison KEI)」とセットで訪れると良いでしょう。ちょっとした海外旅行に比肩するほどの満足度。お酒の飲めない運転好きを見つけてどうぞ。

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