TTOAHISU (トアヒス) /大濠公園(福岡)

大濠公園駅から徒歩5分ほどの住宅街にある「TTOAHISU (トアヒス)」。土台はフランス料理なのでしょうが、和風のニュアンスをきかせたイノベーティブ系レストランとして評判を集めています。
店内は黒主体であり照明も暗め。DJブースさながらにキッチンの窓が明るく浮かび上がります。BGMがヒップホップ生まれラップ育ちなのが面白い。

山下泰史シェフは恵比寿「ガストロノミー ジョエル・ロブション」「アムール(AMOUR)」を経て2016年に当店を開業。ミシュラン1ツ星で、食べログではブロンズメダルならびに百名店に選出されています。
生ビールやハイボールは千円を切り、グラスワインも千円かそこらから始まるので気軽に楽しめます。やっぱり酒はこのぐらいの価格帯で楽しむのが現実的だなあ。
チンチンに熱されたダブル・コンソメで始まり始まり。クリアなアタックながら深みのある味わい。
フラン(茶碗蒸し)に牛のお出汁のコンソメを敷き詰め、自家製のイクラを散りばめます。いずれも想像のし易いベーシックな味覚ですが、それぞれが丁寧な味わいであり、結果、ものすごく美味しかった。
ブリ。メタボリックシンドローム最高峰のワガママボディであり、トロトロとした脂が気の毒なほど美味しい。他方、敷き詰められたカブにネギ、柚子の風味が爽やかで、光の速さで食べきってしまいました。
でっぷりと太った牡蠣にゴボウ。スープにはマツタケの風味を移しており、牡蠣のメタリックな味わいと相俟って魅力的なお椀です。
白子のリゾット。岐阜のブランド米「龍の瞳」を起用しており、アルデンテに仕上げた食感が白子に突き刺さって溶けていく。トマトと大葉を用いた鮮やかな調味も洒落ており、これは一体何料理なのかは全く不明ですが、ベリーナイスなことは確かです。
このお料理は写真NGのため、このタイミングで飲んでいたワインの写真をお届けします。しかしこれは気取って写真NGとしているわけでなく、セモリナ粉をサラっと塗したアマダイを瞬発的に揚げており、皿の上でも秒単位で熱が入っていってしまうため、さっさと食べてしまうための工夫です。お魚のレアから楽しむグラデーションにマッシュルームのソースのコク、クミンのアクセント。まさに完璧という表現が相応しい魚料理でした。
続くお肉料理も同じ理由にて写真はございません。しかしながらというか、やはりというか、K点を余裕で超えてくる88888888な味覚。フィレ肉に優しく火を入れ、塩麹(?)やらブラックオリーブなどでシンプルにシャープに調味。ネギ塩リゾット的なお米も名脇役であり、焼肉屋のネギ塩系のメニューを4倍ぐらい美味しくしたような満足度がありました。
デザートひと品目はゴルゴンゾーラとロックフォールの青カビがコラボしたアイスクリーム。チーズ好きには堪らん味覚であり、何なら酒でも飲めそうです。
続いて安納芋のチーズケーキ。味は間違いなく良いのですが、プレゼンテーションがややそっけない。絵のような派手派手なデザートには取り組まない主義なのかもしれません。
最後にキャラメルチョコレートバター。濃厚なショコラの風味をザキザキした緑茶でズバっとフィニッシュ。ごちそうさまでした。
以上を食べ、そこそこ飲んでお会計は1.8万円。わほー、これは大変お値打ちですねえ。都心のOMAKASE頼みな店であれば1.5~2倍は請求されるほどのクオリティです。

費用対効果はさておき、イノベーティブ系と言われながらきっちりと美味しいのが素晴らしいですね。どれだけ創造性に溢れていたとしてもそこに美味しさが無いと料理とは言えず、こんな当たり前のことができていない料理人が多い中、当店のシェフはど真ん中に美味しい料理を繰り広げます。見てくれだけの自称イノベーティブな店とは一線を画す味わい。オススメです。

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