TRAIN SUITE 四季島。JR東日本が 全身全霊を傾けて運行を開始したクルーズトレイン。3泊4日の行程にひとりあたり100万円近くを要するにも関わらず、最高倍率は76倍にも達したことのある、日本屈指の観光列車です（写真は四季島公式ウェブサイトより）。
そのダイニング監修に白羽の矢が立ったのが、音羽和紀率いるオトワグループ。「厨房のダ・ヴィンチ」と呼ばれたアラン・シャペルに日本人として初めて師事した筋金入りのフランス料理人。
その音羽和紀の次男、音羽創が白金台の地で気炎を上げて手がけるフレンチレストラン、CIEL ET SOL。ミシュラン1ツ星。もちろんこちらのシェフも四季島で腕を奮います。
天井の高い開放的な店内。我々はディナーにお邪魔しましたが、ランチでは気持ちの良い採光が期待でき、おだやかでやわらいだ風に満ちているような空間です（写真は公式ウェブサイトより）。
今日も暑い1日でした。連れはグラスのスパークリング、私は生のハートランド。肌理が細かくクリアな味わい。恐らくサーバを日々狂ったように掃除していることであろう。
アミューズはモロヘイヤにアサリ。出汁の旨味がハッキリとしており、モロヘイヤのヌルヌル感が舌先で踊る。
サバのリエット。美味しいですねえ。別皿に盛って、パンにたっぷりと塗りたくって食べたいところです。
三輪そうめんをトマトのジュレとホヤで食す。腰のしっかりした独特の歯ごたえと舌ざわりが旨い。クセの無いホヤにトマトの酸味が響きます。そうそう、当店は奈良県のアンテナであり、奈良の食材が多用されています。
パンは宇都宮のオトワレストランから直送。ザクザクとした食感に野性味溢れる小麦の香り。パン食ってるなあ、と感じさせる力強さがありました。
ガスパチョにアジと茄子。これが絶品。アジの美点がギュギュギュと凝縮され、小ぶりながらも食べ応え抜群です。粉末状になった
大葉のシャーベットも印象的。本日一番のお皿でした。
フレッシュでみずみずしい果実味が食事に合わせやすい。値付けも酒屋の倍程度と良心的。
ところでサービスの女の子が清潔で美しく健やかな毎日をめざす笑顔を湛えており、都内のミシュラン星付き店のスタッフとしてはトップクラスに可愛いです。
メニューには「とうもろこし」とだけ記されたもの。テーブル上で最後の仕上げ。
とうもろこしが驚くほど甘い。ここまで糖度の高い野菜は珍しいでしょう。ところどころ見つかる粒状態の焼きもろこしも食感に変化を与えグッドです。
フォアグラにアナゴ。言葉だけ聞くと胸が焼けそうな料理ですが、フォアグラのコクはそのままで脂が軽く、夏だというのにスイスイと食べきってしまいました。アナゴは肉厚で食べ応え抜群。先の白ワインに思いのほか合う。
魚はハタ。理想的な火の通りであり瑞々しく水分を保っています。緻密な肉質に柔和な味わい。皮目のガリっとした食感もアクセントにぴったり。先ほどアジを本日一番と評しましたが、こちらもそれに匹敵する美味しさです。
それにしてもガルニ（付け合わせ）の手の込み方。ズッキーニをくり抜いて細やかなラタトゥイユを詰め込んでいます。
メインは大好物のハト。手前のササミが肉とは思えないほど柔らかく陶然としてしまう。本体のモモは野性味に溢れつつもクリアな味わいでハトの長所のみを紡いだ味わい。花ニラのシャキっとした食感と個性溢れる味わいも名脇役。
慌てて注文したグラス。ミシュラン1ツ星店でグラスワインが1,000円から楽しめるのは嬉しい。フランのフレッシュな酸味と弱いタンニンがハトにちょうど良かったです。
デザート1皿目はグリーンピースとミント。これは面白い。確かにグリーンピースの味がする。しかもきっちりスイーツとして完成してて印象深い一皿でした。世のグリーンピース嫌いに食べさせたい。
酒粕のアイスにヨーグルトの泡泡。一口食すと中からトロリとした青梅が流れ出る。骨格のある梅の味わいが新鮮さを主張し、果物とヨーグルトソースが全体を取りまとめる。見た目は真っ白ですが複雑性豊かな一皿でした。
小菓子にもひと手間。新鮮なサクランボが口腔内をサッパリと整えてくれます。マカロンにあるコーヒーチップにある芳醇な香りも楽しい。
食後は焙煎かりがね茶。玉露や煎茶の製造工程で茎や葉脈などを選別したものです。焙煎と相俟って茎だけがもつ独特の風味と甘味が記憶に残る。品の良い温度もちょうど良かった。
素晴らしいお店でした。フランス料理の有職故実を徹底し、その上で現代的なニュアンスを加わっています。イマドキのレストランは見た目ばかりのハッタリ店が多いですが、当店は料理がきちんと美味しいです。オープンしたばかりで今はそれほど有名というわけではありませんが、近々その実力を主張し始めること間違いなし。
となると俄然興味が沸くのは本丸のオトワレストラン。宇都宮への小旅行を兼ねて近々お邪魔してみようと思います。
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