Capri/Zermatt

ミシュラン1ツ星のイタリア料理店。「なんでスイスにまで来てイタリアン?」と思われるかもしれませんが、ここはツェルマット。イタリアとの国境まで数キロの地点なのです。
ちなみに当店の系列店に「妙高」という和食屋があるのですが、串に刺した豚の生姜焼きや宝船に盛りつけられた巻き寿司など、メニューを見た限りでは非常に危険なジャパニーズ・レストランなのですね。

したがって、当店においても外人が想像する誤ったイタリア観に基づいた料理だったら困るなあとビビりながらの入店です。ちなみに「妙高」とはツェルマット姉妹都市の妙高市から来たネーミングであり、「妙に高い」のブラックジョークではありません。
席につくとすぐにソムリエールが泡と共に登場します。フランチャコルタがグラスで2,000円を超えてくるのは心苦しいですが仕方ない。
お通しにポテロングみたいな食感のスナックとバッファローのクリームチーズ。特長は無く腹が膨れるだけなので一口で終了。
ゆうべに引き続き、最多のテイスティングコースを注文。奇しくも7皿が供されると説明され苦笑い。
1皿目はトマトのスープ。微妙です。決して不味いわけではないのですが、品が無く乱暴かつ単調。「わてはトマトでできてるで、イタリア出身やねん」とスープの声が聞こえてきそうな無遠慮な料理であり、ああ、やはり冒頭の不安は現実となってしまうのかと暗い気持ちになりました。
ワインリストを眺めてみると、イタリアワインの品揃えは見事なのですが、値付が妙に高い。全く納得の出来ない価格設定だったので、地元ヴァレー産のシャスラを1本お願いし、肉料理にはグラスで注文することに。
パンは4種。トマト味など工夫は見られるものの、いずれも大したものではありません。
魚の前菜三種盛り。ツナとスズキとカンパチ。いずれもまあまあ美味しいですが、東京の無国籍創作料理居酒屋で出るような味わいで、ミシュラン1ツ星を得るような高潔さは感じられませんでした。
ホタテに紫イモとアスアパラ、ビーツ。ハイアマチュアでも実現可能な料理です。
タリオリーニはグズグズのグダグダで美味しくない。スカンピのタルタルやブッラータは結構いけるのですが、それは素材そのものの手柄であり、調理は関係ありません。唐辛子には何か工夫がしてあるのかと小さくかじってみたのですが、正真正銘のシンプルな鷹の爪であり、悶絶するほど辛かった。

ところで、当店の店員からは料理に対する愛着があまり感じられません。皿をテーブルに置く際に、「ツナです」「ホタテです」「タリオリーニです」のように、メニューを見れば載っているような説明しか行わず、厨房~ゲスト間のポーターぐらいの価値しか見いだせませんでした。
皿の取り扱いも乱暴で、盛りが崩れてもお構いなし。この料理なんて、私の目の前で30度ぐらい傾けて、ズリズリっと皿の崖っぷちまで滑り落ちて行きましたからね。
私自ら盛り付け直し、気を取り直してカンデーレ。マカロニのオバケみたいなパスタです。ソースはバッファローのラグーとアリアニコ(ブドウの種類)。肉の臭みが強くペケ。添えられたバジルの意図も不明。そう、ここの料理はやりたいことが全く伝わってこない。料理の本質は素材ではなく料理人の哲学にあるはずなのに、それが一切見当たらない。
カサゴのスープ。これは美味しい。俺のイタリアンと遜色ありません。身はプックリと厚く、川村ゆきえのようなムチムチ感。それを取り巻く甲殻類のダシで取ったスープも見事です。
メインは仔牛。カサゴで盛り上がった気分を見事に打ち破ってくれました。口の中パッサパサ!パッサパサだよ!パッサパサだよどーしてくれんだ!口の中パッサパサ!肉の旨味は抜けきっている一方で臭みだけがしっかりと残り、数年間冷凍した肉を食べさせられているような気分になりました。

トリュフも香りがせずゴムのよう。こんなことならダイエーで200円のマッシュルームをオリーブオイルで炒めて塩コショウしただけのほうがよっぽど美味しいです。私が飲食店で食べ残すのは5%以下の確率なのですが、この皿はそれに該当してしまいました。赤ワインがあったとしても無駄な努力と判断し、白1本で無理やり過ごすことに。
Dried Caprese cake, creamy chocolate 72%、vanilla sented creme brulee、との説明があったのですが、これはチョコレートではなく砂糖の塊であり、プリンセス・クルーズのデザートを想起させます。

カプレーゼの定義がわからなくなるし、72%って何が72%なのか不明だし、残りの28%は一体何なんだ。ヴァニラの風味は一切感じられず、2日前に食べたクレームブリュレと似ても似つかぬドルチェがただただ苦しい。こんなややこしくて不健康なものを出すぐらいなら、ドモーリのチョコをそのまま出すだけでいいのに。
お茶菓子としてマカロンタワー。毒々しい色合い。あんなに鮮やかなティファニーカラーのピスタチオを見るのは生まれて初めてです。

お会計でぶったまげる。総額53,000円也。食事だけで20,000円を超える計算です。イタリアンでここまで高額なのは珍しい上に、内容が全く伴っていない。東京だったら7,000円がせいぜいです。

これならゆうべのAfter Sevenのほうがまだ伸びしろがあり、3年後ならまた来てもいいかなという気にはなる。しかし当店は料理のベクトルから判断するに、何年経っても現状維持が目に見え二度と来たくありません。

皿の上のみの評価で星を与えているとミシュランは主張しています。その主張をそのまま受け入れ当店が1ツ星であるとするならば、カプリチョーザは2ツ星、俺のイタリアンは3ツ星を狙えます。

私も悪い。ミシュラン1ツ星ということで気負い過ぎたのかもしれません。あくまでスイスの限界集落におけるなんちゃってイタリアン、という気持ちで臨んでいれば、割高だけど山奥だししょうがないよね、と、広い心と深い愛で全部受け止めることができたのかもしれません。

ちなみに「広い心と深い愛で全部受け止め」というフレーズは西野カナの「トリセツ」からの引用です。もっと言うと、私は「トリセツ」みたいな女の子の取り扱いは結構上手いです。永久保証のタケマシュラン。


「スイス」シリーズ目次

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Ristorante Capri
夜総合点☆☆☆☆ 1.5
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