十和田プリンスホテル/十和田湖西湖畔(秋田)

十和田湖西湖畔に佇むリゾートホテル。2018年で開業40周年と歴史があります。
車寄せにレンタカーを止め、荷物をポーターに預けてそのままチェックイン。ところが「あっ」と呼び止められ、どうやらバレーパーキングではなくセルフで駐車場まで行かなくてはならないとのこと。うーん、客が少なくスタッフも暇そうにしてるんだから、それぐらいしてくれても良いと思うのだけれど。
天井が高く、窓も広く、開放感に溢れたロビー。古いホテルではありますが味のあるインテリアであり、まるでヨーロッパの保養地に来たかのような錯覚。
部屋はいささか古めかしい意匠ではあるものの、清潔で機能的。ちょっと暖房の効きが悪いのが玉に瑕。男の私でさえそう思うのだから、女性はさらに厳しく感じるかもしれません。
広さは25平米ほど。部屋にコーヒーミルが設置されており、挽きたて淹れたてのコーヒーをいつでも楽しむことができるのが嬉しいですね。
であり、大きな窓から十和田湖畔の風景が飛び込んでくるのが採光に気持ち良い。4月も半ばだというのにたっぷりと雪が残っており、東京から来た身としては季節が巻き戻ったかのようでワクワクします。
バスルームは死ぬほどダサいです。アメニティはポンプ式のビジネスホテルスタイルであり、注意書きの英語訳も無茶苦茶です。ただし結局のところ、みな温泉大浴場を利用するので、部屋風呂のレベルについてあまり論点となることはないでしょう。
7,000平米のスケールを誇るプライベートガーデンへ。出入り口付近にはバドミントンやフリスビーの無料貸出があり、心なごみます。

外に出ると一切の無音。これぞ静寂と言うべき静けさに圧倒される。僻地にある小規模なホテルであるため、ガヤガヤとうるさい団体客がいないのがすごくいいですね。何か意図を持ってここを訪れているゲストが多く、客層がとても良く感じました。
敷地内を散歩し、十和田湖の湖畔へ出る。無風であり波もなし。絹のようにペタリとした湖面が実に美しい。
寒々とした木々に雪が残る水墨画の世界。ここはアラスカだよと説明されても納得のいく、荒涼とした美しさがここにあります。もちろん緑が生い茂る時期に青空と共に楽しむのも良いでしょうが、今回の冬から春へ移り変わる瞬間も、これはこれで良かったです。
売店で買った話題の酒で乾杯。麦とあきたこまち、横手市大沢産の葡萄『スチューベン』を原料とした発泡酒。微炭酸のぶどうジュースに、コメの風味をきかせたビールのような風味。ちょっと説明のしづらい味覚であり、不思議に美味しい。色んな意味で斬新な酒でした。
夕食はフレンチのコースを。しかしながらホテルのメインダイニングで食べる料理としては最低ランクでした。詳細は別記事にて。
大浴場は『十和田湖西湖畔温泉』と名付けられており、日帰り温泉としても利用できる源泉100%の立派な温泉露天風呂です(写真は公式ウェブサイトより)。浴槽にバリエーションは無くコンパクトな印象があるものの、十和田湖を一望できるコーンと抜けた眺望は圧巻。私としては珍しく、夜も朝も楽しませて頂きました。
朝食は、比内地鶏の卵を使用した卵料理・りんごの冷製スープ・ホテル名物りんごカレーなど東北の食材を使用した和洋ブッフェ。って選択肢が広く、量も好きなだけ食べることができるという意味で、昨夜に比べると幾分満足できました。
この日はあいにくの空模様でしたが、晴れた日にはプライベートガーデンにテーブルを広げることも可能です(写真は公式ウェブサイトより)。
夕食は残念であり、設備やサービススタイルは時代遅れと言わざるを得ませんが、圧倒的な眺望と静かな客層、リーズナブルな価格設定を鑑みると、全体としてとても満足のいくホテルでした。


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十和田プリンスホテル メインダイニング/十和田湖西湖畔(秋田)

十和田プリンスホテルのメインダイニング。「コンセプトは‘湖畔のオーベルジュ’。十和田湖ひめますや地元の旬の食材を使用した‘十和田湖フレンチ’を優雅に流れる十和田湖とともにご堪能ください」と自信たっぷり。
せっかくなので青森県産のシードルを注文。ヨーロッパで飲むそれに負けない品質で悪くない。 ちなみに料理はひとり6,000円の『湖畔ディナー』を注文しました。
『陸奥の味わい』と称した5種オードブルの盛り合わせ。手前は鶏ハム(?)、右はパテに、奥はチーズにいぶりがっこ、タコ、中央はヒメマスでしょうか。いずれもデパ地下の惣菜レベルです。

また、サービスの方は全てをソツなくこなしてくれるのですが、料理の説明は一切せず、かといってtakumiのような説明書きがあるわけでもなく、あまり食事に興味の無いレストランなのかもしれません。
パンは料理に比べると悪くない味わいです。コース料理の量がとにかく少なかったので、自分でも驚くほどの量のパンを食べました。
『青森産ほたてのスープ、サフラン風味』ホタテの質はまあまあなのですが、スープが既製品のような味わいでイマイチです。クラムチャウダーのクリーム抜きのような味覚。野菜のカットにも工夫がありません。
メインは『十和田湖ひめますと輸入牛ロース肉の盛り合わせ、2種のソース』。これは絶望的に不味いですね。ガッチガチに硬い肉質に、旨味やコクはスカスカ。ソースもケチャップを湯で溶いたような味わいで、びっくりドンキーのほうが余程レベルが高いです。

そもそも『輸入牛ロース肉』 というメニュー表記が食べ手のテンションを下げさせる。普通に『牛ロース肉』という表記だけで良いではないか。

ガルニチュールも作り置きをポイポイと並べただけなのが明白。6,000円のコース料理でこれは無い。
サラダはシナシナのレタスにリンゴ。今日び、そこらのファミレスでも、もう少し手の込んだサラダを出します。
デザートは当然にリンゴ系列のものを期待したのですが、まさかのベリー系のアイスクリームに暴力的な甘味を湛えたブラウニーでした。なぜここでリンゴを使わない。
 コーヒーはパンと同じく、料理に比べると相対的にマシに感じます。
ホテルのメインダイニングで食べるフランス料理としては最低ランクのコースでした。味はもとより、量も少なく、ぱしふぃっくびいなすでの物足りなさが思い出されます。料理がイマイチだったので酒を頼む気にもならず、結局飲んだのは最初のシードル1杯だけです。

家賃や人件費の高い都心であっても、6,000円も出せばかなり美味しいフランス料理を楽しむことができることを考えると、当店のクオリティはちょっとアレです。ザ・プリンスギャラリー 東京紀尾井町のオアシス東京プリンスホテルの清水でもピンと来なかったので、私はプリンスグループと相性が悪いのかもしれません。


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「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。

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水炊き鼓次郎(コジロウ)/田町

久我山に器楽亭という、居酒屋ながら食べログ4.09(2018年3月)を叩き出す怪物居酒屋があるのですが、その姉妹店として田町に水炊き屋がオープン。
港区スポーツセンターのすぐそばにあり、町内会のアスリート女子(握力50)と共にみっちりとトレーニングをこなしてから戸を叩く。大汗をかいた後のビールは格別である。
お通しは大根おろしのおじゃこ。なるほどツマミ料理で名を馳せた器楽亭の系列だけあり、このような何でもない一皿でさえ旨いです。量もたっぷり。
唐揚げは500円。子供のゲンコツほどの大きさであり、もちろん揚げたて。しっとりと水分を湛えた身にジューシーな皮目の味覚が堪らない。本日一番のお皿です。
鶏皮酢。いわゆる鶏皮ポン酢です。これはまあ中くらい。唐揚げが500円に対し、コチラが400円なのはちょっと費用対効果が悪いです。
日本酒は日本各地の地酒を10種ほど用意。グラスで700円なのですが、追加で日本酒を注文する際に「グラス交換は不要」と伝えると、なんと200円引きの1杯500円で飲むことができます。
さて本番の水炊き。1人前2,500円で、人数分の注文が必須。各席にはIHヒーターが埋め込まれており、皆が水炊きを食べる前提です。スープの動物臭が強く、人に拠っては好みが分かれるかもしれません。
鶏が煮えるまで日本酒で休憩。
第一陣完成。写真の大きさのモモ肉(?)がひとりあたり3ピースであり、最初はそのままで、次に塩で、最後は自家製の醤油ポン酢でと味変で。スープがとにかく濃厚で、ややもするとトンコツラーメン的な香りが漂います。
続いてつくね。竹筒に詰め込まれたミンチ肉を店員さんが適宜ダンゴにしてスープに投入してくれます。先ほどの肉は若干、脂と旨味が抜けているように感じましたが、つくねは肉そのものの味が濃く私好み。
つくねの味が濃いので日本酒も若干ストロングに寄せていきます。「醤油味のほうが好き?しょうゆうこと言わないのお~」と奇矯な言動を繰り返す連れ。彼女が暴れると骨の1本や2本は覚悟しなければならないので、これ以上飲まないように酒量をコントロールするのは私の役目である。
〆は野菜。水炊きって面白い料理ですよね。まずは肉から食べて、最後に野菜。食べ順ダイエットに真っ向から歯向かう芸風。濃厚なスープをたっぷりと吸った野菜がしみじみ旨い。
「きょうはせっかく筋トレしたしもうすぐ健康診断も近いんだから炭水化物は食べちゃだめぇ~だから雑炊もだめぇ~でも日本酒は誤差の範囲だからOK牧場うぇーい」句読点の使い方を忘れた彼女の話は極めてわかりづらい。

おなかいっぱい食べて、それなりに飲んでお会計はひとりあたり6,000円弱。悪く無い費用対効果です。水炊き1人前2,500円はちょっと高いなあとは思うのですが、サイドメニューや酒が安いので、飲めば飲むほど割安に感じるかもしれません。他方、「水でいいです」的な飲めない方にとっては高く感じることでしょう。

いずれにせよ、東京で本場の水炊きをリーズナブルな価格で食べることができるという意味で価値のあるお店。またトレーニングの帰りに立ち寄ろうと思います。


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みなと食堂/陸奥湊(青森)


東京からドアドアで5時間は超える僻地、八戸。その漁港近くにある食堂が食べログ3.82を叩き出すという奇跡(2018年4月)。漁港近いためか、営業時間は6:00~15:00と限定的。11時に訪れて1組待ちで、すぐに数組の待ち行列が生じていました。
スペシャリテは平目漬丼とせんべい汁なのですが、入荷次第でメニューに変動がある模様。我々は『平目漬丼せんべい汁セット』『今日の四合せ丼』『いちご煮』を注文。なのですが、絶望的にオペレーションが悪い。都心であればワンオペは軽い業務内容なのですが、当店では従業員を4人も配置しているにもかかわらず、着席してから提供まで20分近くを要しました。
小鉢として供される長芋。結構な細さにカットさえており、醤油をチロリと垂らして中々旨い。
せんべい汁。八戸の郷土料理です。南部煎餅を用い、醤油味で煮立てた鍋料理。汁物というよりも、山の幸を煮込んだオカズという印象。煮込まれた煎餅の独特の触感がクセになります。
いちご煮。せんべい汁と共に八戸を代表する郷土料理です。平たく言うとウニとアワビの吸い物であり、塩とわずかな醤油だけで味付けをしただけの、素材の味を活かした料理です。アワビはほんの2ミリほどしか入っていなかったため記憶に残りませんでしたが、ウニはゴロゴロと気前よく入っており、これで950円はお買い得。青じその千切りの香りもアクセントにちょうど良い。
スペシャリテの平目漬け丼。この日は平目の入荷が少なかったため、半分はマグロとイカで代用しています。

淡白な平目が濃厚なタレに漬け込まれちょうど良い味わい。卵黄を潰して混ぜるとより濃厚な風味であり、これで単品1,000円はお買い得。ゴハンの量が驚くほど多く、1合近くはあるのではなかろうか。
コチラは今日の四合せ丼。しあわせどん、と読みます。具材は平目、マグロ、ホタテ、甘エビの4種。先の平目と同素材なのでしょうが、やはり淡白な味わいであり、漬けにしたほうが良いなと再認識。マグロや甘エビは都内の回転寿司で食べる質と大差なし。ホタテは極めて大ぶりかつ新鮮。たっぷりと口に頬張ることができ、なるほど幸せな気分になります。
お会計は合計で3,800円。まあ、リーズナブルと言えばリーズナブルですが、スシローやくら寿司で食べたほうが満足度は高いです。食べログ3.82はちょっと得点バブりすぎ。絶望的にオペレーションが悪く、ライスの風味がイマイチなことを考えると、近くに用事があれば来ても良いですが、わざわざ遠くから訪れるほどでは無いと感じました。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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