ラ・ボンヌターブル/三越前

3月に改装後のレフェルヴェソンスで食べる予定ができ、初めてお邪魔してからもう3年以上経つのかと感慨深い。そういや日本橋にセカンドラインを出したとは聞いていたので、せっかくの機会なのでチャレンジです。

コレド室町2の1F。ガラス張りの路面店。テーブルクロスは無く、店員は皆ジーンズとカジュアルなお店。なのですが、客単価は1万円をゆうに超えるというひっかけ問題。
アルザスの泡で乾杯。コクのあるクレマンで悪くはないのですが、泡の粒度が大きく構成要素がバラバラであまり好きな1杯ではありませんでした。ケチらずシャンパーニュにすれば良かったな。
「畑の味がするサラダ」という名のお皿。 本日届いたばかりの野菜たちとのこと。なるほど確かに新鮮で甘みが大きい。旨すぎてウサギのように飛びついてしまう。
食事にあわせた4種のワインのペアリングコースにしました。まずは丹波のデラウエア。梨ジュースのような味わい。ブラインドで飲むとワインとさえも断言できないかも。飲みやすくOL向きです。
原木シイタケにタマネギのコンフィ、ふきのとうとクルミ。素晴らしい。シイタケの旨味がこれでもかというほど執念深く引き出されています。軸の部分に包丁を入れ、カリカリに炙る遊びもいいですね。本日一番のお皿です。
パンはシュクレクールから。食べログ4.24でTOP100に入る大阪の名店です。テイクアウトですら2時間待ちとかもあるようで、そのようなパンが実質食べ放題なのは嬉しいですね。小麦の滋味深い味わいが濃密に迫り来る味わい。確かに美味しかった。
菊芋のスープにトリュフ。自家製ベーコンと小松菜インです。トリュフはやや品の無い香りでイマイチ。菊芋のスープは大好物なのですが、思ったほど大地を感じることはできませんでした。一方で、ベーコンの旨味が強烈。これはスープというよりもベーコンを味わう料理なのかもしれません。
シチリアのガルガーネガとナントカ(忘れた)の混醸。シェリーのような独特の風味。ベーコンに負けず劣らず存在感があってマッチしていました。そう、ソムリエールが妙に軽快でワインが好きで好きでたまらないこの仕事嬉しい楽しい大好き!という雰囲気が伝わってくるのがいいですね。
塩麹でマリネしたフォアグラに蝦夷アワビ。日本酒に漬けた洋ナシにウド、ゴボウ、セリ。ソースはアワビの肝。創作和食のような料理ですが、惚れ惚れする味わいです。アワビの食感にフォアグラの濃い味わい、それを支える野菜たち。バランス感覚に優れた逸品です。
しかも合わせる飲み物が日本酒と我が意を得たり。日本酒そのものは頑固な味わいであまり好きなタイプではありませんでしたが、フレンチレストランで日本酒を合わせてくれる心意気に乾杯です。
鰆の表面をバリっと焼きつつ身は半生状態のソテー。ホッキ貝に柚子を用いたブールブランソースが独特の味わいで美味。春キャベツのピュレや焼いたニョッキやミョウガなど、もはや何料理かよくわかりませんが実に美味しい。ううむ、当店はフレンチというよりもイノベーティブに分類すべきなのかもしれません。
オーストラリアのリースリング。これは面白い。ペトロール香バリバリで眉をひそめてしまうのですが、味わいは水蜜桃のように伸びていく。ブールブランソースにぴったりです。この年この畑には貴腐菌がついてこのような味わいになったんですって。
メインは正しきラムのロースト。カリフラワーにニンニクを忍ばせたピュレが心憎い。菜の花の苦味もグッド。ガルニチュール全般のレベルも高く、優秀な一皿です。ただ一点、脂身にパン粉を塗してカリカリに焼いたものは企画倒れ。脂っぽさは変わらず胃がせり上がりかけました。
ヘヴィ級のアリアニコを合わせます。ザラつくタンニンが個人的にはすごく好き。ただ、ペアリングという意味ではどうでしょう。もう少し綺麗なワインでも良い気がしました。
オマケに当店自慢の野菜やフルーツを用いたジュース。色はビーツで香りはリンゴ、味わいは根菜類の土臭さという、ギャップを楽しむ飲み物です。
連れはホワイトアスパラガスのアイスクリームを挟んだダックワーズ。色々なフルーツに面白いところではニンジンのグラニテなど。ひとくち頂きましたがホワイトアスパラガスのアイスには疑問符。ダックワーズのような凡事徹底が光る菓子が素晴らしく、やはり当店は本物だと確信。
私のデセールはイチゴ特集。ウフ・ア・ラ・ネージュは想像以上にシンプルな卵白であり、若干の味気なさを感じました。ここでオリエンタルなスパイスで香り付けがされていたりしたら痛快なのにな。
産地や焙煎に大変こだわったハンドドリップコーヒー。繊細でエレガントなコーヒーです。ワインで言うと、ブルゴーニュ。
ミニャルディーズは、、、これってサダハルアオキのアレですやん。いいの?こんな完コピ。いや、どっちが本家でどっちが元祖なのかまでは存じ上げませんが、世の中の9割方はサダハルアオキの意匠と理解しているだろうから、最後の最後でうーん。。。

というわけで、料理のレベルが総じて高く、そのどれもが純粋に美味しかった。創作性もあるし、調理法や食材にとらわれない自由奔放さが心地よいお店です。

が、高いんですよね。高い。商業ビルの1Fにあるテーブルクロスのかかっていない飛び込みOKのカジュアルなレストランっぽいクセに、ひとり15,000円を平気で超えてくる。ワイヤードカフェのような雰囲気であるのに無茶苦茶美味しくてキッチリと高い。まるで羊の皮を身にまとった狼、七三分けのヤクザである。

確かに料理のレベルに見合った支払い金額であり、レフェルヴェソンスの価値を知っている側としては納得できるのですが、経緯を知らないニイチャンがうっかりここで食べてしまうとお会計でひっくり返ると思います。

ターゲットがわからないなあ。高い割にトキメキに乏しいから勝負デートとしても難しいだろうし、普段使いするには値が張るし。。。もう一段階ダウンサイジングしたサードラインぐらいが私の日常にとってはちょうど良いんだなあと痛感した一夜でした。


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ラ・ボンヌターブル
夜総合点★★★☆☆ 3.5