すし初/湯島

今月2度目のすし初。なぜか最近「あたしもすし初連れて行ってよ」とおねだりされることが多い私。徐々にすし初アンバサダーとなりつつあります。
やはりビールには枝豆。これは日本で5本の指に入る生産者のものでね、と私が説明を買って出る。今月2度目の貫禄である。
カボチャのすりながし。旨味がハッキリとしており、カボチャの割にそれほど甘くない。甘エビとウニという贅沢なトッピングも魅力的。先日のひのきざかにせよ、ここのところすりながしに恵まれている日々である。「すりながしに恵まれた日々」ってなんか詩的ですね。J-POPの歌詞に出てきそう。
「遅くなってスミマセン!」50分遅れで到着する女。スミマセンだと?絶対に許さない。あれほど言ったはずだ私を怒らせるなと。時間を守れないような奴は何をやってもダメだ。無礼講なんて認めないからな。お前はあれだ、機内持ち込み手荷物が妙に多くて搭乗時に通路をふさいで荷物を出し入れするタイプだ。そのうえ飛行中も何度も何度も荷物を出し入れするタイプだ。すぐにLINEグループを作りたがるタイプだ。常に充電器を探しているタイプだ。ドラえもんのキャラクターで言えば多目くんだ。
ズッキーニ田楽。正式名称は知りませんが、まあそういう料理です。絞ればボタボタとエキスが漏れ出てきそうなほどジューシーな固体に味の濃い田楽が酒を呼ぶ。日本酒党には堪らない一皿です。
紅白刺身セットの白。左からスミイカ、ホタテ、ヒラメ。白眉はヒラメ。淡白な魚のはずなのにしっかりとした旨味が存在します。ホタテの分厚さと香ばしさも堪らない。日本酒を!飲むぞ!
要町なんかに住んでるから遅刻するんだよ、と〆の一言を吐き捨てる。
「ぐ、要町のことは言わないでください!この前はじめて会った男の人に『要町って何ですか?最寄り駅はどこですか?』って他意無く聞かれて、ようやく引っ越す決心がついたんだから」
ハマグリは贅沢にウリを盛り込む。こんな料理をつくるから争いが耐えないんだ。一口で頬張り30回は咀嚼。わかりやすいウニのアタックから、噛み締めるたびに滲み出る海の味。
「しかも、この後、もう一度会社に戻らなきゃいけないの。明日から旅行だから、今夜中にカタを付けないと」いいねえ旅行、どこ行くの?と尋ねると「あたし、修行してるんです」
紅白刺身セットの赤。特筆すべきはカツオの鉄分ならびに厚み。上品に食すというよりはムシャムシャと漁師メシのように貪りつく。こんなにも旨い刺身が高くない。秋の美点である。
何の話だ、と先を促す。「JALの上級会員になるために、意図的にたくさん飛行機に乗ってるの。もう少しで達成なんですよ、JGC」
煮魚はコチ。鮨で食べることが多い食材ですが今夜は熱を入れて。調理はしているが調味は控えめであり、素材そのもの円みが胃袋に伝わります。「何だか、すっぽんに味わいが似てるわね」生意気な女である。
JALグローバルクラブか。それには苦い思い出がたくさん詰まっている私。
焼き魚はサンマ。バリっと焼いて、旨味の強いタレをジュワリ。見た目も美味しく、食べても美味しい。いい季節です。
私はANAの上級会員であるため基本的に空の旅は全てANAに寄せています。チェックインや保安検査場が特別レーンだったりラウンジで寛げたりインボラ(インボランタリー・アップグレード。航空会社側の都合によって、座席がエコノミークラスからビジネスクラスなど、より上位のクラスに変更されること)されたりするからです。
トリガイ。覚悟していたほど歯ごたえが鋭くなく、今後のめくるめく鮨の饗宴を期待させるに相応しい咀嚼感です。
サンマの美味しさに悶絶。先の焼き物も良いのですが、生で食べた場合の気品溢れる脂は何事にも表現し難い。高潔ささえ感じる秋の香り。本日一番の料理です。
カンパチ。サンマに勝るとも劣らない脂の量。水槽にそっと浸せば浮くのではないか。そんな妄想が膨らむほどのボリューム感のある味覚でした。
飛行機の話、続く。しかしながら、ANAにちょうど良い時間帯の便が無かったりする場合もあるので、その場合はJALに乗ろうかな、と浮気心が生じることも多い。しかし結局はチェックインや保安検査に時間がかかるのを嫌って、仕方なしに時間をズラしたANA便を使ったりしています。
すじ抜き。マグロのトロの筋を1本1本丁寧に抜き、その美点のみを凝縮させたという背徳的なにぎりです。それにしてもサンマ、カンパチ、すじ抜きの三連単には「これに好きな額を書くといい」と言って小切手を差し出すレベルの美味しさです。
満腹の女性陣を横目に私は追加で数貫挟みます。アジ。大変失礼な物言いですが、安魚が実に旨いのが当店の特長。懐具合を気にすることなく美食に打ち込むことができる。
エビには黄味酢をたっぷりつけて。いつもは特大サイズに目を剥きますが、本日のチビッコ君も凝縮感があってグッドです。
これは私とJALの双方にとって不幸せなことなので、ある日JGC事務局に電凸したんです。「私はANAのSFCを保有する者だが、カクカクシカジカでJALに乗りたいのに乗れない状況が続いている。これはお宅にとっても勿体無いことなので、ここはひとつ、無条件で私をJGCに入れてくれないか」と。
流線型のコハダは見た目が実に美しく、その〆かたも絶妙です。
大団円はアナゴ先輩に任せる。舌先でふんわりと崩れ落ちる身をツメが優しく包み込む。鼻腔をくすぐる香ばしいお焦げの香り。今夜もごちそうさまでした。
電凸の結果は秒でNO。電話口の向こう側から出来損ないの愛想笑いが見えてきそうな受け答えでした。


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鮨は大好きなのですが、そんなに詳しくないです。居合い抜きのような真剣勝負のお店よりも、気楽でダラダラだべりながら酒を飲むようなお店を好みます。
この本は素晴らしいです。築地で働く方が著者であり、読んでるうちに寿司を食べたくなる魔力があります。鮮魚の旬や時々刻々と漁場が変わる産地についても地図入りでわかりやすい。Kindleとしてタブレットに忍ばせて鮨屋に行くのもいいですね。

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