中華厨房 齊華房(ちゅうかちゅうぼう さいかぼう)/首里(那覇市)

ゆいレール首里駅から徒歩約5分、静かな住宅街の細い路地を入った先にある「中華厨房 齊華房(ちゅうかちゅうぼう さいかぼう)」。一般的な町中華とは一線を画す本格的で質の高い料理を提供する美食の拠点として地元民から支持を集めます。
店内は10卓ほどのテーブルで構成され、トータルでは40席ほどでしょうか。席間にゆとりがあり、グループでの利用を想定した店づくりです。四川料理が中心のようですが、野菜・海鮮を活かした優しい味わいのものまで幅広いラインナップ。平日ランチは定食も提供しているようです。
ドリンクは高くなく、オリオンの中瓶が650円、ハイボールやサワー類も500円前後です。「自家製実山椒サワー」という響きに心を惹かれる。また、コース料理であれば飲み放題プランも予約できるようです。
くらげの頭と胡瓜の香りにんにくだれ。肉厚でコリコリとした食感のクラゲを瑞々しい胡瓜と合わせた前菜。決め手となるのは香ばしく風味豊かな特製のにんにくだれで、パンチの効いた香りと辛味、そしてごま油の豊かな香りが、淡白なくらげの味わいを引き立てます。序盤のお酒の肴に最適だ。
海老ぎっしりニラ饅頭。その名の通りマジで海老がギッシリ詰まっており、エビ好きにはたまらない逸品。皮の表面はカリッと香ばしく焼き上げられており、一口頬張るとニラの力強い香りが鼻を抜け、続いて海老の濃厚な旨味と甘みが口いっぱいに広がります。何もつけずにそのままで完成された味わいである。
鉄なべ熱々海鮮おこげ。熱々の鉄鍋で提供されるおこげに、魚介の旨味が溶け込んだ熱々のあんを目の前でかけるパフォーマンスが楽しい。あんに含まれるのは、海老、イカ、アサリなどの海の幸と野菜たち。魚介から出た濃厚な出汁が次第にオコゲに染みていき、始めはサクサク、途中からモチモチへと変化していきます。
キャベツと豚バラ肉の甘味噌炒め。いわゆる回鍋肉であり、ジューシーな豚バラ肉の脂の旨味とシャキシャキとした食感を残して炒められたキャベツの甘みを楽しみます。甜麺醤をベースにしたであろうそのタレは濃厚でありながらくどさがなく、程よい甘辛さで酒を呼びます。
美味しかった。立派なホテルの中国料理店で食べるそれに比肩するクオリティであり、(那覇の)松山の嘘つき高級中華料理店とは段違いの食後感。次回はランチに訪れ麺料理を試してみたい。人数が揃えば夜に飲み放題を付けて大宴会だ。

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寒い季節は沖縄で暮らしているので、旅行やゴルフだけで沖縄に来る人よりかは一歩踏み込んでいるつもりです。沖縄の人ってネットに書き込みしないから、内地の人が知らない名店が結構多いです。
沖縄通を気取るなら必ず読んでおくべき、大迫力の一冊。米軍統治時代は決して歴史のお話ではなく、今の今まで地続きで繋がっていることが良くます。米軍の倉庫からかっぱらいを続ける悪ガキたちが警官になり、教師になり、ヤクザになり、そしてテロリストへ。沖縄戦後史の重要な事件を織り交ぜながら展開する圧巻のストーリー構成。オススメです。

シェフス(CHEF'S)/新宿御苑

新宿御苑前駅から徒歩約5分の「シェフス(CHEF'S)」。上海料理を専門とする老舗の中華料理店であり、食べログでは百名店に選出されています。ちなみに表参道の星付き中華「ミモザ(MIMOSA)」の南俊郎シェフは、当店で料理長を務めていました。
ディナーは客単価2万円の高級店ですが、同じ料理人が作るランチは千円かそこらで楽しむことができるため、当然に大人気のお店。ピークタイムは場面で待ちが生じるので、オープンと同時にお邪魔しました。
入店してすぐに温かいお茶がポットで供されます。この日わたしは朝から新宿御苑をお散歩していたので、芯まで冷えた身体と心に深く沁みわたります。
ランチに付随するサラダ。これはまあ、オマケと言えばオマケらしいサラダですね。価格を考えれば当然かもしれません。ちなみに麺類はスーパーで売っていそうな袋詰めの既製品を使用しているので、その緩急は理解した上で訪れましょう。
サイドメニューのエビの春巻き。エビはすり身にし過ぎずゴロっとした食感を残してあるため、噛み締めるたびに海老特有のプリプリとした弾力と、凝縮された甘みが口いっぱいに弾けます。サラっと組み込んでいる生姜の香りが心地よい。
ランチで一番人気の「肉のせ炒飯」。パラパラという食感とはまた違う、ふわんりと空気を含んだ軽やかなスタイルです。玉子の比率が高く塩味は控えめで上品そのもの。そこに醤油ベースで甘辛く味付けされた豚肉がのり、脂の甘みと醤油の香ばしいタレが淡白な炒飯に徐々に染み渡り、食べ進めるごとに旨味のグラデーションが変化していきます。
こちらもサイドメニューの「大焼売」。箸で持ち上げるとずっしりとした重みを感じるほどのサイズ感であり、薄くしなやかな皮の中には、丁寧に練り上げられた豚肉の餡が隙間なく詰め込まれています。玉ねぎの自然な甘みが豚肉の脂の旨味を中和しており、大きくても決して重たさを感じさせません。
私がイケメンだからか、オマケで「シェフスカレー」もお出し頂けました。ベースに中華風の出汁がきいており、そこへレモングラスやカフィアライムリーフ(こぶみかんの葉)といったハーブが加わることで、アジアの風を感じさせる爽快な香りを纏っています。いわゆるスパイスカレーとはまた違う、思いもよらない味覚でした。
以上を食べてお会計は2千円強。夜の客単価を思えば破格という他ありませんが、特筆すべきはその安さだけではなく、炒飯やカレーが放つ孤高の存在感にあるでしょう。このランチは夜という本番に向けた贅沢な序章に過ぎないのかもしれません。次回はディナーにお邪魔したいと思います。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。

本場志向で日本人の味覚に忖度しない中華料理が食べたい方へ捧ぐ書。東京の、中国人が中国人を相手にしている飲食店ばかりが取り上げられています。ある意味では中国旅行と同じ体験ができる裏技が盛りだくさん。

ここ数年で滞在した高級・有名とされているホテルを一覧化し◎〇△×と記した

年間を通じて外泊が多いので、ここ数年で滞在した高級・有名とされているホテルを一覧化しました。

◎〇△×と記していますが、これは私が滞在した時点における感想であり、価格や為替の変動、混雑度合い、当時のスタッフの対応など偶然に因る部分も多いので、話半分に捉えてください。また、ハイアットやヒルトンは最上級会員であり、ひらまつは株主なので、素で予約する場合とは対応が異なるかもしれません。

費用対効果も重要視しています。お金に糸目をつけないお金持ちの方々とは観点が異なることをご承知おきください。

ところで、私は子連れ客とそれをコントロールできない宿泊施設を憎んでおり、そういった客層が支配的なホテルは自然と△や×が多くなります。しかしながら、これは見方を変えれば家族旅行に向いたホテルを選ぶ指標となり得るかもしれません。


【ハイアット】
<北海道>

<関東>
△:ハイアットリージェンシー東京ベイ

トラットリア イル ピスタッキオ (TRATTORIA IL PISTACCHIO)/茨木(大阪)

大阪市および京都市という二大都市圏のベッドタウンとして機能する郊外都市の茨木市。「なんで茨木にこんな本格的なシチリア料理屋が?」と驚くまでがセットの「トラットリア イル ピスタッキオ (TRATTORIA IL PISTACCHIO)」にお邪魔しました。
JR茨木駅から歩いてすぐ。駅前の角地にある僅か8席の狭小店舗。シェフのワンオペであり、商業的な論理よりもシェフ個人の料理哲学と生活リズムを優先した職人性の高い経営モデルであることが伺えます。とは言え待たされたという記憶は全くないのが素晴らしい。
ワインは高くなく、ボトルはもちろんグラスやカラフェ、料理に合わせたペアリングでの提供もあり自由度が高い。シェフは料理だけでなく飲み物の面倒まで手早くやって、すごいなあ。
お食事は8千円のコースでお願いしました。まずはブルスケッタ 。野生味あふれるブラックマッシュルームの旨みが凝縮されており、カリッと香ばしく焼かれたパンとキノコのエキスを渾然一体に楽しむことができ、いきなり泡が進みます。
ヨコワマグロのカルパッチョ。ヨコワ(クロマグロの幼魚)特有の爽やかな酸味と程よく乗った脂の甘みを楽しむ逸品。シチリア料理らしく端的な調味であり、素材を活かした透明感のある洗練された味わいです。
イワシのベッカフィーコにシラスのフリテッレ。前者は松の実やレーズンをイワシで巻いて焼いたもの。イワシの脂の旨みにレーズンの甘みと松の実の香ばしさが重なり、甘じょっぱい味わいがワインを呼ぶ。後者はシラスを多用したチヂミのような料理であり、の磯の香りと塩気が口いっぱいに弾けます。
焼き野菜の盛り合わせ。契約農家から届く上質な野菜を、やはりシンプルな調味で香ばしく焼き上げています。噛むと野菜の滋味がジュースのように溢れ出し、野菜の個性がダイレクトに伝わります。
甘エビの塩茹でにアオリイカとセロリ。甘海老はご覧の通りのプリッとした弾力に凝縮された甘みと旨味。アオリイカは ねっとりと甘く、セロリの爽やかな苦味と香りが全体を引き締めます。
黒メバルのグリル。脂の乗った黒メバルを皮目はパリッと、身はふっくらと焼き上げ、シチリア伝統の万能ソース「サルモリッリオ」を合わせています。黒メバルの上品かつ淡白な白身の甘みに、オレガノの野生的な香りとレモンの酸味がガツンと加わることで味覚が立体的に。魚の脂っこさをソースがさっぱりと流し、口の中に磯の香りとハーブの余韻が長く残ります。
手打ちパスタのカヴァティエッディ。指で窪みをつけたシチリアのショートパスタであり、モチモチとした弾力とソースの絡みの良さが魅力的。合わせるのは黒毛和牛を使った贅沢なポルペッティーニ(肉団子)であり、和牛の脂の甘みが溶け出した濃厚なトマトソースが、パスタの凹凸にしっかりと入り込みます。仕上げに雪のように振りかけられたリコッタサラータ(塩漬けリコッタチーズ)の熟成されたミルキーな塩気が、トマトの酸味と肉の旨みを引き立てます。
お肉料理はスカロッピーネ。薄く叩いて伸ばした肉をソテーした料理であり、今回は贅沢にも米沢豚を用いています。きめ細やかな肉質と甘い脂を楽しみつつ、複数のキノコから出る旨味たっぷりのソースで絶頂に達します。
付け合わせにホウレン草のソテーがドーンとやって来ます。やはりシンプルにさっと炒めただけのものですが、土っぽい香りとほろ苦さが先の豚肉の脂とソースのコクに対する絶好の箸休めに。こちらのおかげで最後まで重たさを感じさせずに食べ進めることができました。
デザートはカンノーロを選択。 映画「ゴッドファーザー」でドン・アルトベッロを毒殺する際に用いた菓子であり、シチリアで最も有名な食べ物のひとつでしょう。筒状に揚げた生地にチーズのクリームがたっぷりと詰まっており、濃厚で背徳的な美味しさが広がります。
食後にコーヒー・紅茶などが付くのですが、私は文旦のリキュールを頂きました。穏やかで上品な苦味と、突き抜けるような爽やかな柑橘の香りが凝縮されており、シチリアの伝統的なレモンチェッロに想いを馳せつつ、日本の文旦が織りなす新しい余韻を楽しみます。

以上を食べ、しっかり飲んでお会計はひとりあたり1.4万円程度。費用対効果が見事な点は当然として、やはり冒頭に記した通り「なんで茨木にこんな本格的なシチリア料理屋が?」と驚くまでがセットです。

私は2020年にシチリアを旅する予定だったのですがコロナで流れてしまい、その後も延期に延期を重ねているので、近々なんとしても訪れたいと再度決意させてくれたディナーでした。

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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。

考えるな、うどん食え。/三田

秋葉原で好評を博した「考えるな、うどん食え。」が田町に移転オープン(?秋葉原は臨時休業中?)。昼は讃岐うどん専門店で、夜は居酒屋メニューを提供する二毛作スタイルの飲食店です。店名はブルース・リーの「Don't think, feel.」を「Don't think, eat UDON.」にパロディ化したようです。
店内はテーブル席がいくつかにボックスシートがひとつ。讃岐うどん専門店と言えばカウンターや大テーブルでワーっと食べることが多いですが、当店は夜の営業が主戦場なのか、座席構成は居酒屋仕様です。
私は1,200円の「天ぷら三種盛りうどん」に追加200円で「生わかめ」をトッピング。大盛や特盛も可能なのですが、ワカメの量が想像以上に激しかったので並盛でちょうど良いボリュームでした。
麺につき、讃岐うどんとしてはやや細めで引き締まっており、噛みしめると跳ね返るような弾力と小麦の風味をダイレクトに感じさせてくれます。スープはいりこの風味が支配的で雑味がなくクリアな味わい。最後の一滴まで飲み干せるほどの旨味がありながら、後味はさっぱりしています。
トッピングの「生わかめ」が良いですね。一般的な乾燥わかめとは一線を画す、肉厚でシャキシャキとした心地よい歯応えが特長的。磯の香りと食感が、強いうどんとクリアな出汁に対して絶妙なアクセントと奥行きを与えています。
天ぷら軍団も素晴らしい。「鶏天」は薄衣でサクッと揚げ、パサつきは一切なく、意外に調味が強いのが印象的。「ちくわ天」は青のりをまぶした衣が香ばしく、プリプリとした独特の歯応えを楽しみます。圧巻は「さつま芋天」で、極厚に仕上がっており衣のサクサク感と中のニッチャリとした甘味を堪能します。何なら「てんぷら近藤」のスペシャリテに迫る勢いである。

以上を食べてお会計は1,200円(画像は食べログ公式ページより)。うどんの美味しさは当然として、生わかめや天ぷらなどのサイドメニューのレベルの高さが記憶に残りました。だとすると、これは夜に訪れ居酒屋メニューを堪能し、〆にうどんとするのも楽しそう。次回はボックスシートを予約してグループでお邪魔したいと思います。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

エル リンコン デ メヒコーラ(EL RINCON DE MEXICOLA)/牧志(那覇)

2025年夏に旧牧志公設市場の雑貨部・衣料部跡地に開業した「エル リンコン デ メヒコーラ(EL RINCON DE MEXICOLA)」。昔ながらの風情が残る平和通りアーケードの中で、突如として現れるカラフルな外観は、思わず二度見してしまうほどの強烈な存在感を放ちます。運営は「リゴレット」などを手掛ける株式会社HUGEとのこと。
店内は100坪もあるそうで、このエリアでは希少な物件と言えるでしょう 。メキシコの伝統的な帽子「ソンブレロ」をモチーフにしたシャンデリアや「マラカス」をかたどった照明が、細部にわたるテーマ性へのこだわりを物語っています。
HUGE社が自社で醸造するクラフトビール「IWAI LAGER」で乾杯。1パイント1,300円と東京の価値観です。すっきりとした喉ごしとキレが特徴のラガータイプでありながら、ライムを思わせる柑橘系の爽やかな香りが感じられます。
お通しとしてチップスが提供されます。穀物の風味が豊かであり、先のビールと合わせて無限に食べ続けてしまいそうです。
具沢山コブサラダ。レタスやアボカド、トマトといった定番の野菜に加え、チキンやエビ、ゆで卵など彩り鮮やかな野菜と様々な具材が盛り込まれます。このボリュームで1,300円というのは悪くないのですが、アボカドが熟しておらず硬く青臭かったのが残念。
タコス・エンペラドール。トルティーヤ6枚とメイン具材を2種選んで2,800円。好みのフィリングとトッピングを自分で巻いて楽しむスタイルで、手巻き寿司的な楽しさがあります。お肉は牛肉とラムを選びました。
トルティーヤはメキシコの伝統的なトウモロコシの粉「マサ」を使い、毎日店内で粉から手作りされているそうです。なるほど美味しいのですが、6ピース2,800円ということは1ピース500円近くする計算で、ビッグマックと同価格帯と考えると高いよなあ。
チキン ファヒータ。スパイスでマリネした鶏肉を、玉ねぎ等の野菜と共にグリルし、熱々の鉄板に乗せて提供されます。添えられたトルティーヤに、3種のフレーバーから自由にソースをのせて頂きます。
以上を2人でシェアし、軽く飲んでお会計はひとりあたり7千円ほど。うーん、これはちょっと、那覇のメキシコ料理としては高杉ですね。味だけであれば寄宮の「ヴィーダ ロカ(vida loca)」のほうが美味しいし、費用対効果という意味ではのうれんプラザの「ブレーメン(Bremen)」に軍配が上がる。那覇のダイニングシーンに現れた刺激的な新星ではあるものの、どういった客層をターゲットとしたいのかがわかりかねました。おつかれさまでした。

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