貝出汁沖縄そば キセキ./浦添(沖縄)

2022年に那覇市の泊(とまり)で開業した「貝出汁沖縄そば キセキ.」が、同年秋に浦添へ移転リニューアルオープンしました。泊(とまり)は仮店舗だったようで、浦添では駐車場を山ほど抱えており、車社会の沖縄に応じた仕様です。
軒先にLINEアプリ(?)のQRコードがあり、こちらから登録して整理券を電子的に受け取る仕組みです。デジタルに明るい方であれば何の問題もありませんが、設定方法がわからないゲストが多発し(位置情報設定が盲点な気がする)、スタッフのひとりがつきっきりでスマホの設定に走り回っています。また、整理券を受け取っても結局みんな行列しているので、近々DXの失敗事例として日経コンピュータに取り上げられるかもしれません。
店外の大行列とは裏腹に店内は殆どゲストがいませんでした。支払は現金のみの券売機方式であり、5千円札や1万円札は使えないため人力で両替というアナクロな運用。SaaSの業務システムを採り入れたものの結局は画面スクショを印刷して承認印を押して回るというJTCな運用に近いものが感じられます。
着席すると、ものの数分で着丼。私は1,650円の「濃厚海老MIX肉セット」に「スープ増し」「海老味玉」を追加して、合計で1,950円。六本木あたりの高額ラーメン店に比肩する価格設定です。
肝腎のお味につき、これはもう、どっちゃくそ美味しいですねえ。エビの風味がこれでもかというほど凝縮されており、アメリケーヌソースをスープでのばしたような味わいです。スープ増しにして本当に良かった。ソーキや三枚肉は軽く炙って香ばしさを演出し、また、揚げたゴボウのジャンキーな味わいがラーメン全体としての暴力性を加速させます。
麺はツルっとした口当たりで程よく弾力が感じられ、生麺を売りにする美味しい沖縄そば屋のものに近い印象。そういえば当店は「沖縄そば」と冠していますが、「沖縄そば」らしさを感じられるのは麺ぐらいかもしれません。それぐらい独創的な一杯です。
他方、味玉はイマイチですね。「海老味玉」と銘打っているものの、ベースのスープのエビの風味にマスキングされているからか、どのへんが海老なのかよくわかりませんでした。殻の剥き方もヘタクソだし、これで150円は割高に感じます。
連れはシグネチャーである「貝出汁沖縄そばMIX肉セット」を注文。いくらか味見させて頂きましたが、クリーミーな豚骨スープに貝のお出汁が潤沢に溶け込んでおり、ラーメンとしてありそうでない味覚です。具材となるキクラゲやゴボウも良く合う。もちろん「濃厚海老MIX肉セット」と具材は同じなのですが、どちかというと「貝出汁沖縄そば」向けに設計されたトッピングのように感じました。
セットには「あさりご飯」が付き普通に美味しいのですが、これまでのスープの味の主張が強すぎるため、パンチが弱く感じました。次から「海老味玉」と「あさりご飯」は注文する必要は無いかなあ。
セットのデザートに「とろける黒糖プリン」。個人的にラーメン屋で食べるデザートほど無駄なものはないと常々感じているのですが、当店のそれは例外。トロリとした滑らかな口当たりに生クリームの濃厚なコクが感じられ、麺デザート界隈のスコーク7700とも言える完成度の高さです。これは次回も必ず注文する。
2人で合計4千円近くを要しましたが、支払金額に見合った食後感。「これは果たして沖縄そばなのか?」とう疑問は生じますが、めちゃんこ美味しいのでそのあたりの定義は取り立てて言うほどの問題ではありません。那覇の「OKINAWA SOBA EIBUN(えいぶん)」のようなリベラルさがここにはあります。
冒頭にDXに失敗してて草など心無いことを書いてしまいましたが、スマホを普通に使いこなせる方であれば、LINEで順番が近づいたら呼び出してくれるという便利な仕組み。待ち時間が長くてもそれほどストレスを抱えることはないでしょう。オススメです。

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