RESTAURANT ENJYU(レストラン エンジュ)/白金台

「八芳園(はっぽうえん)」のダイニング「槐樹 (えんじゅ)」が2023年4月に業態を改め「RESTAURANT ENJYU(レストラン エンジュ)」としてリニューアルオープン。今次のコンセプトは「食文化創造レストラン」であり「イノベーティブフュージョン」とのことです。「イノベーティブフュージョン」って何?
店内にはドーンと広い窓があり、自慢の日本庭園を望むことができます。個室もたくさんあるのですが、秘密の会合などでなければカウンター席がオススメ。ちなみに「八芳園(はっぽうえん)」とは「四方八方どこを見ても美しい」に由来し、最近ではバイデンとキッシーの会食で敷地内の料亭「壺中庵」が利用され話題となりました。
ワインが安いですねえ。こちらのシャンパーニュは1本1万円程度であり、スティルワインは6千円台から始まります。フランスを始め世界各国の有名どころを幅広く抑えたラインナップであり、玄人受けはしないかもしれませんが、非常に好感の持てるワインリストでした。
アミューズは七谷鴨のリエットに桃のフリット。七谷鴨を食べる機会はそれなりにありますが、リエットとして臨むのは初めてかもしれません。ザラっとした舌ざわりにパワフルな肉であることからリエット状態でも伝わってきます。
スープという位置づけで、ナスにジュンサイ、ウニ。日本料理のように軽やかな味わいですが、シャインマスカットの味が少しどぎつかったかもしれません。2023年はシャインマスカットが豊作でどの飲食店でもやたら起用するので、飽きていたという面もあります。
フォカッチャは専用の南部鉄器で焼き上げており、見た目から美味しそうであり、実際に美味しいです。
ホタテのポワレ。岩手県は山田町産の立派なものらしいのですが、どこか披露宴的というかひと昔前感のあるプレゼンテーションです。これで「イノベーティブフュージョン」を名乗るのは厳しい。
茶碗蒸し風のひと品。生地はポレンタを用いており、その上にお出汁(?)の餡を注ぎ釜揚げしらすをトッピングします。これは面白い試みで、なるほど「イノベーティブフュージョン」です。上手くやれば卵アレルギー向けの茶碗蒸しが開発できるかもしれません。
蕎麦粉のガレット。タネは七谷鴨の竜田揚げであり、サクサクとした食感が楽しい。ある意味ではカーネルクリスピーのツイスターに方向性が同じであり、万人受けする味覚です。
魚料理は鰹のペルシャード。ペルシャードとは香草パン粉揚げ的な料理を指し、力強い味わいのカツオに調味の強い衣が良く合う。たっぷりと用意してビールでガンガンいきたいところ。 黒ニンニクのピュレも添えられ、先のフォカッチャにも良く合います。
メインは七谷鴨のロティ。手前はモモで奥はムネ。冒頭のリエットで感じたように、やはり深みのある素材で私得。ソースは伝統的なソースサルミでクラシックなフィニッシュです。
オマケにカレー。お肉は豚の挽肉ですが、ベースには七谷鴨のエキスを用いているそうです。間違いなく美味しいのですが、さすがに量が少ないので逆にストレスを感じてしまいました。やっぱりカレーはドーンとお腹いっぱい食べたい。
デザートはプラムにパンナコッタ、赤紫蘇のグラニテ。悪くはないのですが素朴な甘味でもあり、「食文化創造レストラン」の「イノベーティブフュージョン」としては名前負けしているような気がしました。
お茶菓子と紅茶で〆。ごちそうさまでした。以上のコース料理が1.5万円で、酒やら何やらでひとりあたり3万円弱といったところ。風格のある日本庭園に建屋の立派さなどを考えれば良心的な価格設定ですが、料理は大部屋女優的で尖ったところが感じられませんでした全ての料理は安定して美味しいのですが、記憶に強く残ったという印象はありません。
もちろん当館は「海外VIP向けに日本庭園を生かした本格的な料亭で接待」が起源なので、個室の多さやサービスレベルの高さを加味すると、これはこれであるべき姿とも言えます。ワインも高くないし、予算が限られた接待などにも活躍しそう。ランチに桜や紅葉を楽しむ目的でお邪魔するのも良いかもしれません。総合力を楽しむレストランでした。

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