玉笑/表参道

ミシュラン1ツ星の蕎麦屋。結論から述べると、味は良いが運用が忌々しいお店です。


蕎麦好きの人々は一様に心が広いと思います。店から手ひどい扱いを受けたとしても修行の一環のように捉え、それに耐えてこそ一流、のような我慢強さがある。ここはまさにそんなお店。私は飲食店全般をフラットに眺めているので蕎麦屋だけを特別扱いすることは無い。そのためか、当店のようなスタイルはあまり好きになれませんでした。
食べログの口コミで予習し、開店25分前に到着。ちょうど待合室(?)が開けられたばかりで、2組目として並ぶことができました。待合室で待っていると、5分おきに母屋から店員が「お名前伺っていない方~?」と尋ねに来ます。事前情報として知ってはいましたが、このオペレーションって謎ですよね。しかも若いニーチャンで何故かちょっと横柄。
開店時間となり着席。店員に天せいろを注文すると、いきなり「ちょ、ちょっと待って下さい。あるかどうか、、、」と厨房へ確認に戻る。開店直後だし、そんなにメニュー数ないし、そんなことぐらい開店前のミーティングで済ませておいて欲しいです。

確認から戻ると、売り切れ(?)とのことだったので諦める。無いものは無いから仕方ありませんが、なんだかなあ。
そばがきをハーフサイズで。ぐぬぬ、量が想像以上に少ない。とはいえ蕎麦の香りが極めて高くて好印象。食感はザラつきがある一方で、ヌルヌルとまとまりが無いタイプであまり好きなじゃありません。

と、ここで突然別の店員が背後からヌっとやって来て、「やっぱり、エビ、夜の分をひとつ回せますけど、どうします?」という謎の提案。私としては是非にお願いします、と大変嬉しいのですが、夜の客の分、本当にいいの?

天せいろを注文できることになったから、既にお願いしているモノをキャンセルする。ここからの会話が全然噛み合わない。そう、この人は私に「エビいけるで」とだけ伝えに来たエビのエヴァンジェリストなだけであり、私の注文済みの料理など眼中に無かったのである。したがって、いったん厨房にひっこんで「あそこの注文って何でしたっけー?」とか、またやってる。
6日間炊いたというニシン。確かに奥深い味わいで美味。日本酒を注文しようかと一瞬迷いましたが、未だ午前中なので控えます。
入店から30分ほど経ち、ようやく蕎麦が到着。男らしい粗挽きの蕎麦で筋肉質。私の好みのタイプです。一方でつゆは一切の印象が残らない草食系。
天せいろの「天」の部分。こ、こんなのってアリなんだ。エビを素揚げして天カスをチョイチョイと散らしたような「天」。斬新です。味わいは良好。エビがうっとりするほど甘い。天ぷらとしては微妙ですが、エビとしては大変素晴らしかった。
おかわりの蕎麦は800円。まずまずの価格設定。
大根おろしなどで味を変えながらごちそうさまでした。
そば湯を飲みながら人心地ついてると、隣の客が天せいろを注文。「ちょ、ちょっと待って下さい」と厨房へ確認に戻る。まだこんなことやってんのかと耳を疑いました。しかも戻って来た際の回答が「できます。ただし40~50分かかります」なんでやねん今から自然解凍するんかい。

ということで、蕎麦はそれなりに美味しいのですが、サービスは完全に素人なお店でした。酒抜きで5,000円を超えるランチでこの待遇は納得がいきません。マックやスタバのほうがサービスレベルはずっと上。
お店を出ると十数人の行列が。そう、それでもこれだけの人気を博すというからには、やはり何か理由があって、私にはその何かを感じ取れる能力や欠落しているんだと思います。

それでも私と同じような考えをお持ちの方はいると信じているので、そこを狙えば何かイノベーションを起こせるのではないか、などと色々と考えさせられた蕎麦屋でした。

ちなみに当店は常陸太田の慈久庵と何やら関係があるそうですね。なるほど、だから何となくベクトルが同じなんだ。


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玉笑
昼総合点★★☆☆☆ 2.0