ワイン会~日本最高峰の医療用シャンパーニュ~


24時間前に誘われてホイホイと初対面の男の家に行く私。異なる性別に産まれていれば確実に都合の良い女扱いされていたこと間違いなし。
医者だらけのワイン会だと事前に伺っていたので、先日受けたばかりの人間ドック結果を持参。医者たちの緻密かつ念入りな議論の末「問題なし」と全会一致。「ここまで厳密に診られることはまずありません。日本で一番厳重なチェックを受けましたよ」と太鼓判。これで今夜も気兼ねなく暴飲暴食できます。
金目のものが好きな家主。注意深くディスプレイされたルブタンのスニーカーが目を引きます。「あ、そのトゲ、無くさないで下さい。修理するの1粒3,000円ぐらいするんです」
HENRIOT ROSE BRUT MILLESIME 2002。枯れた色のするロゼで、飲む直前までそうとは気づきませんでした。見事なまでにドライ。乾杯に最適です。
私がお持ちしたのはAndre Beaufort Champagne Brut Millesime 2005。少し締めたほうが良かったかもしれませんが、それでも厚みのある味わいにどこまでも続く余韻。コレを買ってきて良かった。
PERSEVAL FARGE Terre de Sables N.V. モモやナシ、アプリコットの香り。優しい甘さのする香りなのですが、ナッツやトーストに若干のスモーキー。大人の階段を登り始めたワインです。美味しい。

「兄ちゃん、これいいね」と家主の弟。スーパー・シャンパーニュ・ブラザーズ。シャンパーニュの英才教育が自動的に施される一族。
塩気が欲しくなったので北海道産の生ハム。面白いほどフレッシュで、親しみやすい味わいでした。
Lanson Champagne Extra Age Brut。リンゴや洋ナシのような甘い果物の香りと鋭さを増す口当たり。複雑味たっぷりで印象的な泡。

エチケットをじっと見つめる医者に対し、どうした?と皆が訊ねると、「ああ、なんかアナルみたいなマークだなと思って」てめえランソン馬鹿にしてんのかと取っ組み合いの喧嘩が始まりました。
Henriet-Bazin Champagne Grand Cru Blanc de Noirs (Verzenay & Verzy)。これは濃い。何とも迫力のある辛口です。私はどちらかというと泡に関してはシャルドネ派なのですが、ここまで突き抜けているとついついお代わりの手が伸びてしまう。

アラサーでこんなにもシャンパーニュが飲めるって贅沢なことだよね、と素直な感想を述べると「いや、もっと若いうちから、えげつないほど良い酒飲んでいるヤツ知ってますよ。実家の金庫にある金の延べ棒を内緒で1本づつ売りながら」
鍋にはあっさりとした醤油味が最適。可愛らしい看護師が甲斐甲斐しくとりわけて下さるのですが、「あ、オレ、自分でやる。食べることができる食材が限定されているんだ」。10秒後、「カッコ良く言ってるけど、単に好き嫌いが多いだけじゃねーか」と総ツッコミ。
実に興味深い泡。J.J. Renaud Blanc de Blancs 1985。シュナン・ブラン100%で30年超の熟成。サラリーマンの住宅ローンのように重みのあるワインです。泡が自然に溶け込んでいて、ブリオッシュのような甘い香りが心に響く。

「次、どんなカンジの飲みたいか、おっしゃって下さい」とリクエスト受付中だったので、思わず唸ってしまうもの、と回答。
Dom Perignon 1988。なるほどこれは最高峰。状態も素晴らしく熟成感が堪らない。酸もミネラルもたっぷりですが、力ずくではなく繊細。さっきまで興味無さそうに寝っ転がっていた偏食家がむくりと起き上がり、「初めてシャンパーニュを旨いと思った」と、実に重みのある感想です。しかし今夜はそもそもシャンパーニュ会であったはず。良く来たな。
Veuve Clicquot Ponsardin Vintage Réserve Rosé Brut 1989。先の重厚さに勝るとも劣らず。ブラインドで飲んでも私は絶対にヴーヴだと気付けない。30年近くの熟成は最早カカオのようなニュアンスまで感じられます。とにかくリッチで繊細な発泡。恐れ入りました。
チーズとテリーヌをツマミ食い。ミモレットのウニっぽさが重厚なシャンパーニュにベストマッチでした。
Roger Goulart Xarel-lo Cava Gran Reserva 2007。こんなロジャグラさんがあるんだ。ドライで軽やか。果実味が五臓六腑に染み渡る。

「今度ウチの実家にも遊びに来てくださいよ。オヤジに船出してもらいましょ」「兄ちゃんあの船は人にあげたって言ってたから、行くときは事前に連絡して借りないとダメだ」ファミコンのカセットのように船をあげたり借りたりする一族。
Zoemi De Sousa Brut Merveille。淡い黄色に薄絹のような泡。香りは甘くドライフルーツのように濃厚。口当たりは当然に豊かであり、酸とミネラルのバランスも完璧。

「気取った感想言ってるけど、あなたがそんなにワイン好きじゃないこと、知ってるんだからね」私に対する態度はあくまで硬いソムリエール。そういえば毎日この子とぶっ倒れるまで飲んでるなあ、合宿みたいだ。
Alain Couvreur Brut Nature Tradition Vieille Cuvée。長期瓶熟成させてからリリースするのが信条のRMであり、味が分厚く飲みごたえが山盛りです。ドライな飲み口に際立つ重みの存在感。

じゃあ、キミのワイン好きが10として、ド素人が1の場合、僕のワイン好き力はどれぐらいなんだい?と訊ねると「ふふん、2か3ね」と愛想も小想も尽き果てた彼女。そんなに低いのかなあ、毎年フランスのワイナリーを巡ってるし、もうちょっと好きだと思うんだけどなあ。でも素人の2~3倍のワイン好きと評価されたと強引に納得することとします。
Tarlant rose zero。由緒正しきピンク色。中々に刺激的で元気いっぱいな赤系の香り。味も赤系で蠱惑的。OLちゃんと飲みたくなるシャンパーニュでした。
こちらもOL系。Moet & Chandon ICE IMPERIAL。氷を入れて飲むことが前提であり、濃厚な甘さが口いっぱいに広がります。南国系の果物の香りが広がり、口当たりはクリーミー。イビサあたりのプールサイドでだらしなく飲みたい逸品。
ニシンをカラスミに風に仕上げたツマミ。ただしこれがシャンパーニュに全然合わなくて笑ってしまいました。ものすご生臭くなっちゃうの。
ソーテルヌは終幕への足音。Chateau Raymond Lafon 2003。宝石を溶かしたような甘さにゆったりと酔いしれる。この領域に辿り着くまで酔って、ディケムと区別がつく人いるのかしら。
Chateau Raymond Lafon こちらは1989。このような贅沢な飲み方が楽しめるのはワイン会の醍醐味。
ウイスキー蒐集家でもある家主。残念ながら私はこの方面には滅法弱く、その価値を充分に理解できないであろうから一舐めづつに留めます。
Domaine Guy Charlemagne Champagne Grand Cru Reserve Blanc de Blancs。ライムのような香りに鋭いミネラル。酸もちょうどいい。これは素晴らしいブランドブランですね酔っていてもわかります。
〆シャンには最高級ショコラ。ううむ、やはり私はカカオが好きだ。バレンタインシーズンも落ち着いて暫く離れていただけに、ショコラの素晴らしさを再認識した瞬間でした。
Domaine de Cray Montlouis Demi-Sec 1985。大団円はロワールの瓶内二次発酵。粘度のある甘さが内臓を優しく愛でていき、眠気へと誘う。ごちそうさまでした。

「ぃゃぁ……ぉまぇゎ……ほんとぉに……ぃい奴……ズッ友だょ……!」と酔いに任せて永遠の友情を誓い合う医者たち。素敵な瞬間に立ち会うことができました。

その後、どういう経緯か昨日の医者宅で午前5時に目が覚める。うわーやべーかみさんに怒られる。


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私の参加するワイン会は、ヲタクが集まるというよりは、ワイワイふざけながら飲む形式です。全くの素人もウェルカム。ワインはみんなで飲むものだ。下記にテーマ別にまとめておきました。
ワイン会で料理を提供する際に参考としています。ワイン会の主役はワインであり料理は場が華やぐ程度の彩りさえ確保できればOKと割り切る。あえるだけ、焼くだけ、のせるだけ、ちぎるだけ、混ぜるだけなど、とにかく簡単に作れるレシピがたくさん載っています。