THE MOON/六本木


2015年6月にオープンした新しいお店です。六本木ヒルズ52Fの展望台フロアにあり、ちょっとミーハーかなあと敬遠してたのですが、ネットでの口コミが予想以上に良かったのでお邪魔することに。
まさに展望台入口から入ります。ただし列に並ぶ必要はなく、係員の方にレストランに予約を入れている旨を伝えると、秘密のチケットを渡され、並ぶことなく脇道から一気に52Fまで案内して頂けます。
大きな窓ガラスが張りめぐらされた開放的な店内。テーブル間隔も広く、非常にゆったりとしたつくりです。テーブルやチェアもセンス良し。
我々が通された窓際のテーブルからの眺望。圧巻である。この景色に萌えない人は人じゃない。
テーブルセッティングは至ってシンプル。テーブルクロスを敷いてもっとラグジュアリーにすることもできるでしょうに。カジュアル路線を貫くのはこの店の良心かもしれません。

ところで連れの指輪のダイヤモンドが東京の景観に負けず劣らずゴージャス。なあそのダイヤすげーでかくねーか?と問うと、「ああ、これ?3.6カラット」とのことでした。彼女は塩の専売で大儲けでもしているのか。ある意味マウンティングとは無縁の人生であろう。
シャンパーニュで乾杯。ロワイエ・エ・フィス。辛口で食前酒にぴったりです。その後のワインは全てペアリングでお願いすることに。

マシュラン、最近のお気に入りはドコ?」出た、マシュラン。シンガポール人おにまるタクシー軍団に引き続き、ここでも短縮形で呼ばれました。全く関連性の無い人々が同時多発的に同じ名前で呼び始めるのは神秘的ですらある。
アミューズはアメリカンドッグ?なんじゃこら?おそるおそる一口かじると
中身はブーダン・ノワール(豚の血と脂の腸詰)でした。思わず笑みがこぼれる一品です。しかしながら単なるギャグではなく、丁寧に臭みは取り除かれ、一方でコクもしっかりあり、今後の展開に期待が持てます。
カボチャのスープにアールグレイのカプチーノ、半熟卵。滋味溢れるカボチャのスープに独特の芳香を放つアールグレイ。楽しい工夫です。

半熟卵はちょっと量が多すぎで皿全体を支配してしまいます。うずらの卵とかでも良いかもしれません。バスクのソーセージはそれ単体では非常に美味しいのですが、塩気が強すぎるきらいがあります。
ロワールのミュスカデ。若干トゲトゲしていますが、喉を通すと流れるような味わい。先のスープには合いますが、やはりトッピングのソーセージには尻尾を巻いて逃げ出す味わい。
パンはザクザクとした食感、かつ、きちんと小麦の味が感じられる逸品でした。すごくおいしい。
バターは標準的でした。
テーブルで液体窒素で仕上げる魚料理。漂うスパイスの香り。カレー系のソースを粉末状に仕立て上げています。
メインのお魚は寒ブリ。脂がたっぷりとのり、コッテリとした味わい。そこに根セロリのソースが妙にマッチし、とどめにカレーの粉末が突き刺さる。周りを固めるイカやツブ貝も申し分なし。プレゼンテーションも含めて非常に満足のいくお皿でした。
ワインはカベルネ主体のロゼ。なるほど色も強く、口に含んでもしっかりとカベルネを感じる酒躯です。興味深いワインではありますが、先の魚料理に合うかというと、パワフル過ぎてちょっと疑問でした。
肉料理は鹿児島県産黒豚のローストに赤ワインのソース。今さらですが、当店はソースがきっちりと美味しいのが良いですね。比較的前衛的な皿が多いものの全く外さないのはシェフの実力の所作でしょう。

豚はデビュー当時の能年玲奈のような透明感。脂が無ければ何肉かわからないほどクリアです。
合わせるワインはフランとグルナッシュとシラーという珍しいセパージュです。凝縮感がありドッシリとした印象であるものの意外に爽やか。

でもなあ、肉料理のソースには合うのですが、豚肉にはちょっと強すぎ。能年玲奈と伊藤英明が共演するような違和感でした。
パンはライ麦。これは普通です。さっきのパンが良かったなあ。
デザートワインもお願いすると、ひとりあたり2種用意してくれました。ピンクの泡はローズの香りが付けられており、厳密にはワインではないとのこと。左はジュランソンのプティ・マンサン。品の良い甘さがデザートのチョコ味にぴったりです。それにしても快晴である。
デザートにも液体窒素を活用。グラスはいっぱいだわ煙はモクモクだわで絵的に楽しいパーティです。
バラをイメージした一皿。チョコレートのアイスおよびムースから枝を擬態したチョコを延ばし、バラの花などを液体窒素で冷やし固めたシャリシャリさん。大した味はではありませんでしたが、意匠が何ともロマンティックなデザートでした。
食後の飲み物は色々と選べたのですが、私はあえての日本茶を。奈良の立派な茶葉らしいです。

変な言い方ですが、普通にちゃんとした店でした。「六本木ヒルズ52Fでフランス料理の技法を用いて日本の食文化を融合させたレストラン」と聞けば、ちょっと回避したくなるのが人情。しかし一度訪れてみると、料理もサービスもしっかりしたものです。

逆説的ですが、立地が悪すぎるような気がします。あまりにも観光客向きな場所であり、どうしてもチープな印象を受けてしまう。これが広尾あたりのシックな路面店だったりするとミシュランスター当選確実。

それほど高くないし、ディナーはきっと素晴らしい夜景も期待できるでしょうから、20代前半男子の勝負ディナーとかにも良いかもしれません。オススメです。

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