ア・ニュ ルトゥルヴェ・ヴー/広尾


ゆうべはシンガポール人と朝の4時まで飲んでいたので完全にグロッキー。一番高いヘパリーゼ(540円!)でドーピングしても焼け石に水。這い蹲りながら何とか身なりを整えて家を出る。
a nu retrouvez-vous。ミシュラン1ツ星。シェフは辻調理師学校フランス校で学び、六本木「ヴァンサン」で4年半、西麻布「ル・ブルギニオン」で3年修業後、ロアンヌ「トロワグロ」、パリ「タイユヴァン」で計3年働き、リヨンのワインショップ「アンティックワイン」の研修を経て帰国。07年代官山「ル・ジュー・ドゥ・ラシエット」のシェフを務めた後に当店をオープンさせました。

ピッカピカの経歴、かつ、修行先は私の好きなベクトルのレストランばかりとお邪魔する前から期待大です(写真は公式ウェブサイトより)。
ヘパリーゼが効かないのであれば迎え酒。当店のハウスシャンパーニュでありシェフの料理にぴったり合うとの触れ込み。

外観は濃いイエローであり泡立ちは極めて細かい。カラメルやナッツのような香りも感じられ、ふくよかな味わいです。このレベルの泡がお店で1万円で飲むことができるのは極めてお得。
サンマとジャガイモのテリーヌ。サンマの味わいがはっきりとしており、ジャガイモのホクホク感も素敵キャラです。シャンパーニュはもちろんのこと、日本酒もアリかもしれません。右下の半固形は根セロリのソース。1皿に抑揚があって楽しめます。
パンは良い意味で普通です。料理を邪魔しない上質さ。

さてお待ちかね、恒例の「手を繋ぐのが先か、チュウをするのが先か」論争について水を向けると「絶対に手を繋ぐのが先でしょ。そういう一番楽しい時期をじっくり進まないでどうするの?一度付き合っちゃうと、もうそういう気持ちには戻れないんだから」
ホイップバターにはトリュフの香りが練りこまれております。

連れは極めて高身長のモデル体系であり、西麻布系のギラついた男たちが群がってくるのは想像に難くないのですが、「ああいう男たち、大嫌い。成金が目一杯背伸びしてバカみたい。よく誤解されるんだけど、あたしは謙虚で堅実な人がタイプなの」。草食系男子が装飾系男子を凌駕した瞬間である。生きる勇気を与えて貰えました。
アジにゴボウのムースと素揚げをトッピング。野性味溢れるゴボウのムースにクリスピーな素揚げ。ゴボウって美味しいなあ。

しかしこの皿の真価はスープにあります。キノコの旨味を上手に抽出し、味わいの中心部分のみを取り出しています。とにかく絶品。キノコそのものはプレゼンテーションから省いてしまうという演出も心憎い。
メインはウサギのフリカッセ。全くクセの無い透明な鶏肉のような味わい。魚料理と同様に、こちらもソースが傑作。フランスで武者修行を経たシェフならではの本物のソース使いです。付け合せにも珍しい野菜も多用されており、苦味など味わいが多彩で大満足。
私はボーヌ、連れはラムを食べていたのでサンテミリオン。グラスワインもピタリと合わせてもらえるし、高くない。何から何まで完璧である。

途中、彼女の箸が止まったので、お腹が膨れてしまったのかと心配したのですが、「ねえ、もう1杯飲んでいいかしら」と少し恥らいながら遠慮がちにたずねてくる。1杯でもいっぱいでもいくらでも。酒飲み女子は貴重である。
デザートはムース・オ・ショコラ、フォレノワール、グリオットチェリーのアイス。右上のチョコムースに悶絶。漆黒という見た目とは裏腹にどこまでも柔らかく、本日一番のお皿です。アイスの温度も低すぎずしっかりと素材が伝わってくる。最後の最後までパーフェクト。素晴らしいお店です。
コーヒーは複数の抽出方法から選ぶというこだわり様。ルンゴ、すなわち通常の2倍程度の大量の水で抽出したエスプレッソを選び、食事の余韻に浸ります。冒頭の二日酔いはどこへやら、心が満たされた食事が完成しました。

久々にクリーン・ヒットなお店です。彩り豊かで絵のような皿が続くのですが、そのどれもがしっかりとクラシックに美味。特にソースの秀抜さには目を瞠る。デザートまで抜かり無し。実力のあるお店です。これに当店のアイデンティティを決定付けるスペシャリテがあれば、間違いなく世界に羽ばたくことでしょう。次回は夜にお邪魔したいと思います。

食べログ グルメブログランキング



Instagram


関連記事
「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。


関連ランキング:フレンチ | 広尾駅恵比寿駅