ル・ポトローズ/麻布十番


近所の女の子から「○○さんと3人でゴハン行きましょ!」とのお誘い。おお、キミたち友達同士だったんだ。港区界隈の美食家の世間は狭いようでやはり狭い。

「でも、10月はXX日とYY日しかあいてません」貴様、自分から誘っておいてその態度は何だ、と悪態をつきながら、じゃあ10月YY日の18時~ね、と返信すると、「そんな早くはむりですw」との回答。「w」とは何か。全く何も面白くない。こっちはクソ真面目に受け答えしているのに、まるで私が非常識のような言われようである。

じゃあ19時半でどう?と辛抱強く返すと「いいですけど、私、翌日ゴルフなのでそんなに遅くまでは付き合えませんから」。なんという最恵国待遇。よし決めた、当日は1発ビンタしてやろう。
麻布十番商店街の奥の雑居ビル5F。コンクリート打ちっぱなしでカッコイイ空間です。
泡で乾杯。ぐぬう、ピントがうまく合わない。少し前にカメラを落っことされてから調子がずっと悪いのです。

プリフィクスメニューなので、食前酒を楽しみながら何を注文するべきかじっくりと議論を重ねます。ムール貝の白ワイン蒸しがイチオシとのことでしたが、翌日のワイン会で出すつもりだったので断念。
スモークサーモン。マリネ液の酸が心地よく前菜としてうってつけ。なのですが、どことなく盛りがダサく家庭料理の域を出ません。皿出しも遅い。客席は半分も埋まっていないのに雨の日の宅配ピザぐらい遅い。

「あの時はごめんなさい」と唐突に謝罪する彼女。私との予定調整の無礼を詫びたのかと思いきや、酒癖が極めて悪い彼女がワインバーで飲んだ際に大暴れし、全店員にマークされ、後日、出入り禁止となったエピソードについてのようです。それに比べて私の予定調整の無礼など卑小なものである。
バゲットは一般的なものでした。
ワインはハウスワインを選びました。辛口の白でリンゴ、洋ナシ、花の香りと厚みのある味わいに鮮やかな酸味が効いています。

ちなみに彼女は生まれも育ちもコンサルタント。「いい?言いたいことは3つあって、ひとつめは…」と、漫画で読むような話し方であり歩くMECEである。論理の国というものがあれば、彼女は間違いなく女王様である。
私はオニオングラタンスープに目が無いので、メニューにあると必ず注文します。そして当店のそれも間違いなく美味しかった。こういう手間のかかる料理はお店で楽しむに限りますね。

「この前の件、ゴールを設定しなかったのが私の間違いだったわ」ゴールって何やねん。全ての行動がプロジェクト化されタスクに分解されスケジュールに落とされる人生。疲れる女である。
メインは鴨のロースト。弾力のある肉が口の中で弾けます。はっきりとした濃いソースに凝縮感があり、素直に美味しかった。

じゃあこの飲み会のゴールは何なんだい?と問うと、「○○さんに謝罪すること。もう達成したから、あとはじっくり楽しみましょう!」とご機嫌な彼女。酒が入ると無茶苦茶かよ。理屈っぽく話しているものの、頭の中にはハッピーセットが詰まっているのではなかろうか。
濃いソースには濃いワインで迎え撃ち。濃厚な黒系果実。思ったほどタンニンは強くなく、スパイシーな余韻も後を引く美味しさ。

どうやったらこのような論理的な酒乱が育つのかと彼女の来歴を尋ねると「リビングが100畳ぐらいあって…」と所々に育ちの良さを垣間見る。世の中とは不合理である。
デザートはバニラアイスにチョコムース、リンゴのタルト。唐突にお菓子作り好きの主婦のような皿でした。もうちょっと華のあるものが食べたかったなあ。

その後は彼女がいかにだらしなく酒癖が悪いかを徹底的にイジリまくると「あたし、もう、死にたい」と、ようやくしおらしくなってきました。そうだ氏ね氏ね今すぐさっさと飛び降りろ。
コーヒーで〆てごちそうさまでした。どっちつかずなお店でした。色が無く印象に残り辛い。味はそれなりに美味しく値段も悪く無いのですが、決定打もありません。フランス料理入門編としては良いと思いますが、食べこんでいる方にとっては若干の物足りなさを感じるかもしれません。

結びとして彼女に忠告。キミはロジカルに立て板に水のごとくベラベラと話し、特に反論が無ければ論破したつもりになっているけど、相手の考えは全く変わってないからね。

僕は納豆が好きだ。キミが納豆の欠点をどれだけ構造的に並べ立てたところで僕が納豆を愛する気持ちは変わらない。そこで議論をするつもりは僕には一切なくて、勝手にしゃべってろって思ってる。

大体、論理は価値を生み出さない。論理から創造性は生まれない。キミはゴタクを並べているだけで何も産み出していないんだわかったか!
「オッケー、わかりました。ところでさ、あと1軒だけ行かない?」何もわかっちゃいないこの女。そもそも明日ゴルフで早く帰りたいと言ったのはお前だろうが!
2軒目は近所のワインバー、カラペティバトゥバ。まったく、2016年度で最もワガママな女である。まるで大御所芸能人を相手にしているかのような錯覚。と、言いながら、なんだかんだ彼女といるのはとても楽しい。この調子でもっともっと逞しくなって、蓮舫のような強い女性になりますように。

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東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。


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