kermistokyo(ケルミストウキョウ)/白金高輪

白金北里通り辺りを歩いていると、バイオハザードっぽいエクステリアの謎めいた建屋を発見。小窓から内部を伺うと、どうやら飲食店らしいということで色々と調べたのち「kermistokyo(ケルミストウキョウ)」というレストランだそうで、試しにお邪魔してみます。こういったセレンディピティは路面店の強みですね。
店内はインダストリアルな内装で、客層含めて今時オブ今時です。店名はオランダ語で「移動遊園地」を意味するそうで、開店前はご夫妻で世界中を旅しながら各地でポップアップレストランを開くというノマドな生活を送っていたそうです。
酒はめちゃんこ高いですねえ。この缶ビールが1本1,320円で、ワインをボトルで所望すると3万円を超えるボトルがズラリと並びます。さすがにコース料理との価格バランスが悪すぎるので、もっと安価なワインは無いのかと、何とかセラーから引っ張り出してきてもらいました。あるなら最初から昇順で紹介して欲しい。気の弱い方であれば3万円を超えるボトルをそのまま飲むことになるかもしれません。
アミューズはアジ。旨味がしっかりとした個体であり、ポレンタのフラジャイルな食感に良く合います。
茶碗蒸しにはサボイキャベツに仔牛のミンチ肉がトッピングされています。和のニュアンスを感じさせるひと品で万人受けする味わいです。
ビーツのステーキ。ビーツそのものを主役に持ってくるとは面白い試みで、そのスモーキーな風味が記憶に強く残ります。モロッコインゲンの瑞々しさも美味。
パンは広島の有名店から取っているそうで、なるほど穀物の豊かな風味と仄かな酸味が印象的。噛めば噛むほど美味しさが滲み出てきます。
大根のリゾットにサンマをオン。バリっと思い切りよく火を入れており、サンマの旨味が凝縮しています。
穴子のフリット。厚めの衣の中にはフンワリとした口当たりの穴子。バジル(?)で緑色に変化したジャガイモの千切りもよく映えます。
サワラの炭火焼き。お魚の美味しさは当然として、付け合わせのカブがジューシーで婀娜っぽく、心に残る美味しさです。
メインは仔羊の炭火焼き。赤身と脂身のバランスが良く、脂の甘味と旨味を楽しみつつも決して食べ疲れることのない、魅力的な肉料理です。
デザートは和栗のモンブラン。エレガントな栗の風味に穏やかな甘味の梨のシャーベットが良く合います。
お茶菓子も出ますが食後のお茶は別料金。冒頭に「酒が高い」と述べましたが、もちろんお水も有料でした。

以上のコース料理が1.5万円ほどで、酒やら水やらでお会計はひとりあたり3万円弱。うーん、これはちょっと高いなあ。料理は総じて美味しいのですが総じて印象に乏しく、一週間も経てば何を食べたか忘れてしまいそうなものばかり。量も少ない。ネット上の口コミも、料理そのものというよりも雰囲気づくりに言及しているものが多いので、つまりそういうことなのでしょう。

一方で、カッコイイ空間演出にダウナー系の接客、ジャンルレスの料理にギラギラした客層と、これぞ東京の最先端の先端といったライフスタイルであり、大都会の食のトレンドを引っ張っていく存在としては意義深いお店と言えるでしょう。「ル・マンジュ・トゥー(Le Mange-Tout)」「北島亭」とは真逆の価値観であり、トータルコーディネートを楽しむレストランに感じました。

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白金高輪は粒揃いの佳店が多いです。ちょっと不便な立地も良いんでしょうね、若い子たちを寄せ付けることが無くて。