メログラーノ/広尾


Melograno。開店して1年。飲食業界の中で話題のお店。
「専門料理」においてもシェフのコメントが多く掲載されており、かなり玄人ウケしているようです。
少し早めに着いたのでハートランドで喉を潤しながら仲間を待つ。オツマミにパイスティックのようなものを出してくださり、これがオーボンヴュータン級のきちんとしたパイ。時代を超える美味しさです。

待ち人が到着すると私につられて皆ビール。今回の参加者は全員がワインエキスパートなのですが、まあ、結局のところはビールが一番なのである。
江戸前鮨のように距離の近いオープンキッチン。昨今開かれた厨房が流行りですが、ここまで客に接近したレストランは珍しい。目で食べるエンターテインメント。初デートの会話が続かないカップルに打ってつけかもしれません。

ところで今夜の飲み仲間は20代半ばの美女ふたり。色恋について私のように枯れてはおらず、恋愛中毒真っ盛りで話を聞いているだけで面白い。

ただひとつだけ解せなかったのが、初めて異性とチュウをするタイミング。なんと、彼女たちは手を繋ぐ関係になる前にチュウをするらしいです。「え?普通そうでしょ。てゆーか、手とか繋がなくないすか?」とミレニアルズたちの外連味のない価値観は私にとって新鮮。

私はホットドッグ・プレスやポパイで育ったクチであり、まずはカウンター席での横並びスキンシップに始まり、夜道を歩きながら手を繋ぎ、それで拒否されなければチュウしてみようと必修科目で習ったものなのに。

それじゃあどこで初チュウするんだい?と恐る恐る聞いてみると、「え、飲みに行って、店を出てちょっと曲がった所とかですよ」完全に路チュウである。おまわりさんこっちです。

うーん、世の中全てがファストファッション化が進み、手を繋ぐという中抜き商売は敬遠されつつあるのかもしれません。
1皿目にスペシャリテ。ジャガイモのピュレの上にキャラメリゼされたタルトタタン。中にはたっぷり、かつ、インスリンも追いつかぬほどの甘いタマネギが膨らんでいます。トリュフのジェラートの上にはトリュフを削る大音量。素晴らしい一皿でした。

ただ、ただですよ。1皿目に食べるものとしては甘過ぎてちょっと違うかも。もちろん前菜に指定したのは我々であり全ては客の自己責任なのですが、うーん、素晴らしい料理なだけに取り扱いが難しい。PPM分析におけるスターに化ける寸前の問題児のようなポジションです。タストゥーのように思い切ってデザート扱いしてしまうのも悪く無いかもしれません。
シチリアの白。柑橘系の爽やかな香りにふくよかなハーブ。香りをそのまま液体にしたような味でミネラル分たっぷり。気軽に楽しめる1本目。
パンは4種を盛り合わせ。全く罪のない至って健康的なパンであり、個人的には左下の丸っこいやつがお気に入りでした。
パスタはゴロゴロとした甘エビに、マグロのカラスミとウイキョウ。誰がどう考えても私の大好物であり、ある意味駄菓子のようなわかりやすい旨味。本日一番のお皿です。
秋も深まりつつあるのでイノシシのラグー時々クリ。イノシシ肉はもはやステーキの域に達するほどの大きさ。ケチな居酒屋のサイコロステーキよりも余程ダイスが大きく、圧倒的に肉の味。慌てて赤ワインを注文です。
「○○さん(私の名)は皆に優しい。博愛主義者でありキリストの再来かもしれない」という話題でちょうど盛り上がっていたところ、偶然にもこのエチケット。これぞ神の思し召し。
メインはボリート。イタリア風のおでんです。サルシッチャ(ソーセージ)と牛タン、スネ肉が丁寧に炊かれており、至って王道。ポケベルで言うとアーキスである。

一方で、先のイノシシに比して素朴で迫力に欠ける。チョイスした私に責任はあるのですが、もっとバコーンとした重いメインを選んでも良かったかもしれません。
ボリートに付随するスープ。素材の旨味がたっぷりと溶け込んでおり、この料理の核心がここにあります。
デザートは複数種から選ぶことができるのですが、迷い無くカンノーロを選択。

カンノーロとはシチリアでとっても有名なお菓子であり、小麦粉ベースの生地を筒状に揚げ、その中にリコッタチーズ主体のクリームをたっぷりと詰め込んだもの。聞いただけで美味しいでしょう?その通り、美味しいのです。ボリュームもたっぷりであり、今夜の胃袋にしっかりとトドメを刺してくれました。
高潔なエスプレッソで〆。ごちそうさまでした。

郷土色の強いイタリアンをおなかいっぱい食べて飲んでひとりあたり12,000円。ちょうど良いお店です。直感的にシェフの世界観は物凄く広く感じたので、もっと料金体系に幅を持たせて色んな料理を食べたいと思いました。

クリスマス限定で3万円のコースをやってみるとか、店も客も失敗のできない真剣勝負になるので盛り上がりそう。

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