梢 (こずえ)/パークハイアット東京(都庁前)

大規模リニューアル工事のための長期間の休業を経て復活した「パーク ハイアット 東京(Park Hyatt Tokyo)」。今回はその日本料理レストラン「梢 (こずえ)」におけるランチをご紹介。ロビー階(41階)から1フロア下がった40階に位置します。
高い吹き抜けが開放感を生む店内。大規模リニューアルと言いつつも、当店の空間設計は殆ど変わって無いように見受けられました(以上、画像は公式ウェブサイトより)。大きな窓から新宿の街並みや東京のスカイラインが一望でき、晴れた日には富士山が見えることもあるそうです。ゲストの殆どはビジネスでの利用や家族連れでの食事会であり、とても治安が良い。
我々はランチの天丼のセットを注文。税やらサービスやらを加えて5千円強という価格設定であり、外資系ラグジュアリーホテルのランチとしては実に良心的。まだ食べる前ですが既に満足しています。
お造り。本マグロは、きめ細やかな脂が口の中で体温と共に溶け出し、濃厚な旨味と微かな酸味の余韻が広がります。対照的にイシダイは、白身特有の淡麗ながらも力強い弾力があり、噛みしめるほどに上品な甘みが溢れ出します。イカは繊細な包丁仕事によってねっとりとした甘みが引き出され、舌に絡みつくような官能的な食感が心地よい。
白和え。季節の野菜が持つ瑞々しい食感やほろ苦さを、滑らかに裏ごしされた豆腐の和え衣が優しく包み込みます。豆腐の穏やかなコクと白味噌の淡い甘み、そこにゴマの香ばしさが溶け合い、口当たりはまろやかで上品。
丁寧に引いた出汁をたっぷりと含んだお野菜。小タマネギは芯までトロリと柔らかく、凝縮された甘みが溢れます。芽キャベツは特有の清々しい苦味がアクセントとなり、出汁の風味に奥行きを与えます。里芋はねっとりとしたきめ細かな質感が心地よく、中心まで味が染み渡っています。
主役の天丼。軽やかに揚げられた衣は、サクッとした刹那の食感の後に、素材の蒸気と共に香りが弾けます。タレは開業当初からの継ぎ足しだそうで、甘すぎず、キレのある醤油の風味が、炊き立ての白米の甘みを一層際立たせます。豪快でありながら妥協もなく、ひとつひとつの素材というよりも全体の調和が見事なひと品でした。
香の物も見事。質の良いお野菜が塩梅よく漬け込まれており、単なる箸休めに留まらない存在感を放っています。こういう脇役陣のレベルの高さが店そのものの実力を定義づけていると私は思う。
お味噌汁もこれまでの料理の品質を引き継いでおり、椀の蓋を開けた瞬間に立ち昇る、鰹と昆布の香り高い出汁が最大の魅力です。お味噌も出汁の風味を消さないようバランスよく溶かされており、一口飲むごとに身体の隅々にまで染み渡るような滋味深さがあります。そのへんの定食屋のそれとはレベチ。独立したスープ料理と言えるでしょう。
デザートは黒糖アイスにタピオカにココナッツミルク。構成要素だけみるとJKのストリートフードのようですが、当店の手にかかれば統的な和の要素とモダンなオリエンタル要素が上手く融合しており、多層的な味わいで、食事の記憶を甘やかに締めくくってくれました。
煎茶でフィニッシュ。ごちそうさまでした。先に記した通り、このランチが5千円かそこらで楽しめるとは東京は豊かだ。今日び雑な居酒屋でちょっと飲んだだけでも似たような支払金額に達してしまうことを考えれば大変お値打ち。みんな変な飲み会なんてもうやめて、ホテルのランチを食べに行こう。

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