忘年会に行ったら袋叩きにあった件


イケメン起業家より「鍋パ忘年会やろうぜ」とのことでお誘い頂けました。小規模で内輪な会にお招き頂けるのって嬉しい。

ということで、イケメン起業家、美人シェフ、美人広報、美人M&A専門家、美人外資、そして私、と、何とも東京カレンダー感溢れる忘年会。
ぜ、前菜、だと…っ?鍋と聞いたので、呑気に日本酒を1本だけをお持ちした自身の短絡的な思考回路を悔いました。ちくしょう、お洒落じゃねえか!

「ってかさー、東京カレンダーとタケマシュランって芸風被ってるよね」何をおっしゃる、当ブログのほうが歴史は長いのだ。
カブ料理も美人シェフの手に掛かれば一気にクリスマスカラーに。旬真っ盛りで甘い。トマトで旨味も補強され、(私が持ってきたわけではない)ワインが進みます。

今夜の女性は皆未婚。「この歳になるとさ、結婚って話になると、色々考えちゃうよね。親のこととか」「わかる。イイ人がいたとしても、『親が気に入ってくれるかな』とか考えちゃう」「わかる。相手がバツイチなのは全く気にしないけど、子どもがいるとNG」「わかる。養育費とか絶対ムリ」
お肉には心地よいジュレが並べられ、これまた(私が持ってきたわけではない)ワインが進みます。

ハァ?養育費ぃ?と思わず食って掛かってしまいました。私としては、相手のことが好きだから結婚するのであって、月十数万円の養育費など取るに足らない問題である。

自分の好きな人とふたりでひとつの人生を歩めるのであれば、それで充分ではないか。その他の些細な不都合に一喜一憂する必要は全く無い。自分が結婚したいと思う人はかなりのレアキャラだけど、養育費を稼ぐ手段などいくらでもあるのです。
アルバ産のサラミ。こういう食べ物は実に脂が旨い。そしてコチラは私のお持ちした日本酒にもピッタリでした。

「養育費って言ったけど、単純にお金だけを問題にしてるわけじゃないの。もしあたしとの間に子供ができたとして、前妻との間の子のほうを可愛がってなんかりしたら絶対に許せない。あたしの子供を一番に可愛がって欲しいの。まして、自分との間に子供ができなかったりしたら、地獄だわ」
キノコのマリネ。キノコの大地の味わいとオリーブオイルの香りが鼻腔をくすぐりいくらでも食べてしまう。

ちょっちょっちょっちょっと待って!あなたたちは、親とか子供とかお金とか、何のために結婚するの?その人が好きだから結婚するんじゃないの?自分の好きな人と毎日を過ごせて、それ以上、何を望むの?
10日寝かせた鯛のカルパッチョ。吸い付くような舌触りに増した旨味。とんぶりやクコの実の食感が華やかに弾け、本日一番のお皿です。

「タケマシュラン、さっきから歌謡曲のサビみたいに同じこと言ってっけど、あんた結婚のこと何もわかってない。いい?結婚って、好きとか愛してるとか、それだけじゃないの。不妊が原因で離婚する夫婦、多いんだから」

これは別に私が強がっているわけじゃなくて、心から理解に苦しむ価値観です。あなたは私のことが好きだから結婚するんじゃないの?「子供が欲しいから結婚して」だなんて、私にとっては不気味で屈辱的な結婚理由なのですが。
春菊のサラダ。グランボッカの春菊サラダも美味しいですが、今夜のそれはさらに手が込んでいて絶品。オリエンタルなスパイスがじっとりと染み入り、 気持ちが和らぐ旨さです。ピータンやヒマワリの種による演出も心憎い。お茶のような香りも感じたのですが、気のせいかしら。

で、でもさ、養育費が発生してるってことは、少なくとも相手が種ナシじゃない、つまり生殖能力があるってことでしょ?不妊治療で悩む夫婦もいるんだから、その片方の能力は認められたってことでいいんじゃないかな?と、必死で世界の子持ちバツイチ男子の肩を持つのですが、シベリア寒気団のように冷ややかな視線を浴びるだけでした。
大根いいねえ冬ですなあ。産地と旬に一家言。たっぷりの香草と爽やかなレモン。こんな豪勢な鍋パがあるか?

「じゃあさ、結婚できる人とできない人の違いって、何だと思う?」これには即答で『ノリの良さ』と回答。あまり深く考えず、とりあえず結婚する。ダメならすぐに別れてハイ次。5回も結婚すれば、そのうち1回ぐらいは当たるでしょ?僕はたまたま2回目で上手くいったけど。それこそツタヤの会員になるぐらいのつもりで気軽に結婚すればいい。

自分勝手な意見を滔々と述べると、「駄目だこいつ…早くなんとかしないと…」と、私を除いた皆の間で謎の一体感が醸成されました。
薬膳キノコ鶏モモ鍋。スープが抜群に旨い。シンガポールのバクテーを優しくしたような味わいで、八角の香りに心があたたまり、キノコとネギの滋味に癒される。

「でもさ、タケマシュランのシンプルな意見って最強だよね。こうして5人がかりでようやくバランスの取れた議論になる」その通り。全てはオッカムの剃刀。最も有効な解決策とは最も単純な解決策なのである。
〆の雑炊は鍋奉行の最高の署名。片足けんけんで胃袋にスペースを空け、冬眠前の熊のように貪りつきました。

「じゃあさ、この中で、タケマシュランは誰と一番結婚したい?」と聞かれたので間髪居れず、○○さん(美人シェフの名)!健康で明るくて可愛くて自立してて食べ物に対する価値観が似てるから!と即答すると、「ふざけんじゃねえ!」と他の女性たちから袋叩きに合い、三途の川が見えました。

同性として唯一の理解者であるイケメン起業家が「おまえな、こういうときは少し考えるフリをしてだな、『そんなの決められないですよぉ』とか適当に濁すもんなんだよ」と丁寧に解説して下さいました。なるほど、質問に回答するだけではダメなのか。大人って難しい。ぜんぶ雪のせいだ。

「だからタケミシュランはさあ」誰やねん。
心地よいカキでリフレッシュ。ごちそうさまでした。

それにしても、恋愛や結婚、出産、育児となると、全員がその道の専門家となり、終わり無き弁論となるのは実に興味深い。

私はきっとこういうこと、すなわち女子会的な議論が生まれつき好きなのでしょう。根性は無いが野次馬根性だけはある。どうか私に呆れることなく、2017年もどうぞよろしくお願い申し上げます。


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