松籟庵(しょうらいあん)/嵐山(京都)

京都が最も熱狂する11月下旬の紅葉ど真ん中に嵐山の人気店の予約を入れるあたりセンスの良い私ですこんにちわ。
松籟庵(しょうらいあん)。渡月橋の上流、官有地の公園に位置し、車でのアクセスは不可。トップシーズンは近隣道路の交通規制もあるため、健脚しか訪れることができない秘境。ランチ3回転という強気の嵐山ゲートウェイです。
近衛文麿公の別邸をリノベーション。女将は書家でもあり、店内に掲げられた書はいずれも女将の筆とのこと。窓から望む桂川と紅葉が一番のごちそうであり、中学生未満は入店NGとアダルトな空間です。
先付は自家製の豆腐に宮古島の雪塩。豆腐料理専門店だけあって、王道中の王道といった味わい。食前酒として梅酒も添えられ、私の内臓にスイッチが入る。
八寸。豆腐を主軸においたセンスのある盛り付けであり、これぞジャパンといった1皿です。とりわけ中央の胡麻豆腐の弾力と風味の強さが心に残りました。
生湯葉。いわゆる質のよい湯葉。まあ、湯葉は湯葉である。
「創作の1品」ということで、紅葉をイメージした1皿。万願寺唐辛子の豆腐、とうもろこしの豆腐、枝豆の豆腐と豆腐づくし。とうもろこし豆腐の甘さに大地が感じられ楽しかった。
生麩のグラタン。これはわかりやすい味わいで良いですねえ。白味噌主体のベシャメルソースに生麩がゴロゴロと転がりヌチャっとした食感も面白い。チーズもたっぷりでややもすると暴力的な味わいであり、良い意味で京都らしくないお料理でした。
揚げ物は湯葉や万願寺唐辛子、マイタケなど。いずれも揚げてから少々時間が経っており油も浮いてきているため、純粋な美食とは言い難い面があります。が、湯葉を揚げるなどコンセプトはブレることがないため、これはこれでありよりのあり。
湯豆腐は昆布出汁の茹で汁で時間を置き、その後かつお出汁のおつゆで頂きます。添えられた九条ねぎと山椒の風味が格別。豆腐と言えば豆腐なのですが、おつゆをお出しで割ってまるで吸い物ののように頂くのがいいですね。加えて我々が注文したコースであればお代わりもOK。
和牛ヘレのミニステーキ、九条ねぎ添え。普通に美味しいのですが、京都の山奥に来てまでわざわざ食べる必要はなかったかもしれません。九条ねぎは気前の良い量で嬉しかった。
食事はコシヒカリの白ご飯に揚げ出し豆腐、ちりめん山椒、自家製のお漬物。白米の出来は中の上といったところですが、ちりめん山椒を広げれば立派なごちそう。揚げ出し豆腐をこのタイミングで食べるのも面白い試み。お漬物は文句なしの美味しさであり、豆腐主体のコース料理であるにもかかわらず、ここまで食べると胃袋がパンパンに。
デザートはほうじ茶のプリン。ほうじ茶の風味がガツンと効いており量もたっぷり。日本料理のお店で頂く甘味としては実に迫力のある1皿でした。
お会計は食事だけでひとりあたり6千円強。目の覚めるような絶品に出会えるというわけではなく、いずれの皿もまあまあの美味しさではありますが、何よりもこの景観と雰囲気が一番のごちそうです。渡月橋周辺の喧騒から逃げ出し、紅葉と水面を愛でながらの豆腐料理は思わずインスタで自慢したくなるライフスタイル。配膳スタッフの対応も感じが良く、お店全体に居心地の良い空気が流れています。

予約は取りづらく、また、足腰が丈夫でないと訪れることができないお店。若い人にこそオススメしたいお店です。嵐山行きが決まったらすぐ電話。


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