ルスーリールダンジュ/銀座


夕方、二児の母から「突然だけど飲みに行かない?」と誘われる。「キミの投稿見てると会いたくなっちゃってさ」。これは月9のドラマではなく実話である。

銀座辺りを指定されたので、急ぎ食べログで検索。1年前にオープンしたばかりのお店だったのですが3.72と高評価。口コミ数は少ないながらも好意的な記述ばかりだったのでそのまま予約。便利な世の中になりました。
見事なまでの雑居ビル4F。
一見で入るにはかなり勇気が要りますが、ひとたび扉を開くと柔和な微笑みを湛えたシェフがお出迎え。ネット上の情報によると、シェ・イノ出身らしいです。伝統的で正攻法な調理が期待でき、胸が高まります。
コチラはボトルで3,500円。リーズナブルなワインが山ほど取り揃えられており浮き足立つ。ねえ、今夜はどれぐらい飲む?と問うと「いくらでも」と頼もしい。 それじゃあ2人で3本だ。

アラカルトが充実していたので、食べたいものを好きなだけ注文することに。連れとアレが旨そうだコレが魅力的だと議論を重ねる。「一度でお決めにならなくても、チョコチョコ追加して下さって結構ですよ~」と懐の深いシェフ。料理もサービスも全て1人でこなしているのにこの余裕。
まずはイワシのマリネ。抜けるような苦味と脂の旨味。最高の前菜。
ホウレンソウとベーコンとキノコのグラタン。ベシャメルソースの味わいが頑強でモロ好み。ホウレンソウは縮みホウレンソウで、葉に厚みがあり糖度も高く旨みも濃い。本日一番のお皿です。
全般的に香り高く味の強い料理なので、白はヴィオニエにしてみました。ボトルで3,000円。安さに思わず唸ってしまう。
春野菜の温かいサラダ。濃密な春の大地を良質なドレッシングでまとめあげる。野菜の苦味とドレッシングの酸が溶け合った出色の一皿。旨味や甘味を多用すればある程度の料理は作れますが、苦味や酸まで使いこなす当店のシェフは相当の手練である。

それにしても、春は苦味の季節ですね。つくし、シラス、ホタルイカ 、菜の花、、、食べたい素材がいっぱいだ。

グラタンでのソース使いに感動したので、同系統と推測されるシーフードドリアを注文。が、今日はランチで売り切れてしまったとのこと。思わず昼の客を妬んでしまう。
代打サーモン。こちらは魚の強さとマリネの酸が結託し爽快な仕上がり。いやあ、今夜は良い夜だ。
ビーフステーキ300gが2,200円。ミラクルである。近所のスーパーで肉買って家で食べるより安いかもしれん。 もちろん肉そのものの質は値段相応ではありますが、絶妙な塩加減や熟考された付け合せなどのレベルが極めて高く、全体として完成された料理です。
合わせるワインは屈強なボルドー。1本4,000円。信じられない費用対効果。俺のフレンチとは比べ物にならないぐらい美味しいのに安くまとまる。銀座の奇跡。何度でもお邪魔したいです。

ついついご機嫌になってしまい、もう1軒でもう1本飲んで、都合2人で4本。さすがに酔っ払いました。

酔いに任せ、子供は大丈夫かい?「保育園落ちた!」とか穏やかじゃないみたいだけど、と尋ねる。彼女は興味が無さそうに「お金さえ払えば預かってくるトコなんていくらでもあるわ」と、どこ吹く風。

「保育園に入れないなら引っ越せばいいのに。便利で手頃な住宅街での倍率が高いだなんて当たり前でしょ?低い可能性に賭けたらダメだった、それだけじゃない。仕事を続けたい、便利に住んでいたい、でも親とは住みたくないし、保育にお金はかけたくない、だなんて図々しい。厚かましいにも程があるわ」と投げつける。

「倍率の高い地域に住むことを決めたのも、時間と場所の自由が無い仕事を選んだのも、非協力的な夫を選んだのも、全部自分なのに。どうして日本のせいにするのかな」。

誤解の無いよう補足すると、彼女は生まれた瞬間から自動的にお金持ちで全ての問題をカネで解決してきた御坊家というわけではなく、努力によって現在の地位を得た才媛です。国内外を飛び回り仕事も育児も完璧にこなすバリキャリ美女。保育に関して公的な補助は殆ど受けていないのに死ぬほど税金納めています。

私には子供がいないのでコレ系の話題に疎いのですが、世界基準で見れば、日本は保育環境が充実してるほうなのになあ、というのが率直な感想です。

ところで私は2年ほど仕事をせず妻の扶養に入り専業主夫をしていたことがあるのですが、今後子供を授かった場合、また仕事を休んで子供とのんびり過ごすのもアリかなあと、のんきに考えています。家計が火の車になり、すんなり仕事に復帰できるかどうかもわかりませんが、それは自分の努力次第。人や組織を動かすよりも自分が変わったほうが手っ取り早いから、世の中に過度に期待しないほうが精神衛生上良いでしょう。


関連記事
「好きな料理のジャンルは?」と問われると、すぐさまフレンチと答えます。フレンチにも色々ありますが、私の好きな方向性は下記の通り。あなたがこれらの店が好きであれば、当ブログはあなたの店探しの一助となるでしょう。
日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。



ルスーリールダンジュ
夜総合点★★★☆☆ 3.5
関連ランキング:フレンチ | 新橋駅内幸町駅汐留駅