月光浴/麻布十番


「今から会えますか?」と近場に引っ越してきた女の子。すぐに当店を予約し先に入店し飲みながら彼女を待つ。20代前半にして既婚者と麻布十番のバーで待ち合わせとは生意気な女である。
「遅くなってスミマセン!道に迷っちゃって!」聞くと自宅から港区自転車シェアリングで麻布十番まで来たとのこと。私もすっかり自転車シェアリングにハマっているのですが、「渋谷区と相互乗り入れしてないのがほんと不便!文京区とか超いらないし!」など、全く同じ悩みを持っているのが何だか可笑しかったです。
フレッシュフルーツカクテルが自慢の店なので、私はキウイを選択。果肉がたっぷりで歯ごたえ抜群。氷が多すぎて冷えすぎており可飲部が少ないのが玉に瑕。連れは運動後なのでビールを所望したのですが、ビンビールしかないとのことでリモンチェッロのソーダ割で代替。
お通し。数ヶ月ぶりにポテトチップを食べましたがやはり美味しいですね。炭水化物と油分と塩分のバランスが悪魔的であり、肥満体の気持ちが少しだけわかりました。

ちなみに客は我々しかおらず、カウンターで会話が筒抜けになるのは嫌なのでテーブル席をチョイス。ゆったりと4人席を2人占めしております。
2杯目はブルーベリー。ドラキュラのような色合いに怯みます。先のキウイに比べると氷がスムージー状態になっておりこちらのほうが断然好き。彼女はウイスキーのソーダ割。なんだか私、OLみたいなものばっか飲んでます。

その時、ガヤガヤとうるさい酔客がソファー席に闖入。バーにそぐわない外見のオッサンどもであり、パカパカとタバコを吸い始め、不愉快きわまりない存在に秒で帰りたくなる。どうしてあんなに汚らしい服装で十番のバーに来ることができるのか。服装に関する無関心は自殺に等しい。万景峰号に乗せて送り返したいところです。
「晩御飯まだなので、少しつまんで良いですか?」と彼女はバーニャカウダを注文。当店は牛タンの炙り焼きやタイカレーなどフードも充実しているのですが、遅い時間には野菜しか食べないその決意。やはり美人とはこうだ。

先のリーマン共にうんざりしていたところ、追い討ちをかけるように隣席に品の無い男女客が登場。大声で「すみませぇええん!」とカウンターの店員に声をかけ心からうるさい。お前は水素水でも飲んでおけ。

パワポがどうのこうのと農奴みたいな仕事の熱弁に始まり、「浮気には良い浮気と悪い浮気があって…」などとウォーズマン理論を展開。我慢の限界に達したのでさっさと支払いを済ませ、逃げるように店から出てきました。
近くのワインバーで飲みなおし。「何ですかね、あの新橋にいそうオジサンたち」と温厚な彼女も少々ご立腹。「隣の男も小太りなくせに浮気とか語っちゃって気持ち悪い」

「あ、もうすぐ終電だ!引っ越しでお金がかかっちゃったから、節約しなきゃ!」タクシーを乗り回す勘違い港区女子と違って、このように地に足がついた感覚は素晴らしい。男の読者のみんなたち、結婚するならこういう女の子ですよ!

「そうだ、今度のデート、楽しみにしてますね!あたし、次の日のお昼ぐらいまで空けてますから」突然血圧が20程上がる。それまでに小太りにならないように気をつけないと。


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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

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