琉球チャイニーズ TAMA/渋谷


「今夜は何時からあいてる?」と専業主婦よりメッセージ。もともとディナーを共にしようと約束はしていたのですが、彼女の用事が早めに終わったとのこと。「表参道あたりのテラス席で0次会しようよ」お、なかなか高度なリクエスト。
白羽の矢が立ったのはcrisscross(写真は公式ウェブサイトより)。突発的な要求に完璧に応じる私は相変わらず素敵である。「あたしこの店ひとりで良く来る~♪」そうか、俺は初めてだ。したがって、きちんとテラス席を確保した私のドヤ顔も控えめである。
TY系列は今年で20周年。東京のレストランシーンを華麗に彩る寺田一族のセンスの良さに拍手を送りたい。

「ついさっき、おかあさんと喧嘩して来たんだ」なんと牧歌的な始まり方。「おかあさんの怒り方、あたしにそっくりで嫌になっちゃう」
ハワイ行くんだよね、いいなあ」そんなことをいいつつ彼女はついこないだ行ってきたばかりのハワイ通。せっかくの機会なので、おすすめレストランなどの情報を得る。「この店は本当にオススメで…」あ、そこはもう予約してあるよ、まさに来週の今頃、そこのテーブルに座っているよ写メ送るね「超いらない。死ねばいいのに」
燃えるような夕焼けが空を支配し、予約の時間も近づいてきたので席を立つ。綺麗な夕焼けだね、ハワイはもっと綺麗なんだろうなあ「ずっと雨だから。死ねばいいのに」
さて本題、琉球チャイニーズ TAMA。東京の遊び人であれば必ず知ってる使えるお店。オーナーシェフのおばあちゃんが上海出身、お母さんが沖縄出身であることがその名の由来だそうな。
アルコールはワイン類が充実。ボトルで3,000円代からと、この地にしては懐に優しい。ただし絶対的な価格は安いものの、その値付けは3~5倍という印象。
泡を良く飲む専業主婦。当然の如くボトルを注文。しかしながらボトルの泡はコレ1種しかなく、しかも酒屋で1,000円ぐらいのものが5,500円での提供。
島らっきょう。辛味が控えめでありアミューズに最適でした。
ボタンエビの紹興酒漬け。トロトロに甘い身にじっとりと酒が沁み込みます。こってりとした味噌に吸い付き官能的な味わいに淫する。アルコールに弱い方であればこれだけで酔っ払ってしまいそうで、アルコールに強い方は更なるアルコールを呼ぶ逸品。
ピータンは半熟。ぷるるんと弾けるゼラチン質に、ムツムツとの黄味がとろける。舌触り付け合わせのネギもシャキシャキと美味しい。
よだれ鶏はイマイチ。辛さばかりが目立ち、旨味や塩気に乏しいです。

「ねえ、このよだれ鶏、どう思う?」ワインを推す店にしては辛味が強すぎる、一方で、旨味や塩気に乏しいので美味しいとは思えない、もっとわかり易い味付けにしたほうが僕の好みだね、と正直に話すと「あたしも全く同じこと考えてた。味、薄いよね。あたしが作ったほうが美味しい」。

味蕾というものは指紋と同じく人それぞれであり、またその人の文化的背景によって味覚は変わってくるので、好みはまさに千差万別。その中で今回のような感想の一致は実に嬉しい。
ポテトサラダは凡庸。何の特色もなくダイエーのお惣菜と大差ありません。
牛スジ煮込み。よだれ鶏ほどではありませんが、辛い。ビールが欲しくなります。豆腐がたっぷりと入っており腹に溜まる。

何かの弾みでおにまるずの話になり、「おにまる行ってみたい!」と身を乗り出す専業主婦。ううむ、あの下品で野蛮な低学歴集団にキミを交わらせたくないんだけどなあ、本当に品の無いやつらで下ネタばかりで反吐が出る、とやんわり断ると、「大丈夫!あたし、隠してたけど下ネタ超好きだから!
「決めた、あたしは行くからね」と帰り支度を整え始める彼女。やれやれ。ため息をつき、飲みかけのボトルに栓をしてもらい持ち帰りに包んでもらう。
タクシーを降り、跳ねるように麻布十番商店街を歩く専業主婦。私はその人ごとに遊ぶエリアを分けるので、彼女と十番で会うのは不思議な気分。店に着くと、不運にも常連ふたりが贅沢に4人席を陣取り、ニヤニヤと無遠慮な目線を投げかけてくる。

仕方なく彼らのテーブルにつくと「また可愛い女の子連れて来て」と品定め。「さて、タケマシュランの恥ずかしい話、何からバラしていきましょうかね」と酷薄な笑みを浮かべ、ドブに落ちたイヌを叩くように私を嬉々としてさらし者にするふたり。今夜も長くなりそうだ。


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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
1,300円としてはものすごい情報量のムック。中国料理を系統ごとに分類し、たっぷりの写真をベースに詳しく解説。家庭向けのレシピも豊富で、理論と実戦がリーズナブルに得られる良本です。

琉球チャイニーズ TAMA
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