かま田/徳島

食べログ3.78(2018年11月)と、徳島市内ではトップの成績をおさめる当店。JRの駅から少し離れた飲み屋街(地方都市あるある)のど真ん中。通り沿いには看板などが一切出ていないので見つけづらいかもしれません。写真の左から2軒目、黒い建物の2階です。
カウンター8席のみの小さなお店。東京で良く見かけるのいかがわしいカップルなどはおらず、健全な関係の人々が自腹で楽しみに来ています。そうだ、レストランとはそういうものだ。
生ビールで乾杯。確か5〜600円という、この手の料理屋としては破格の値付けです。

さて、我々は特別に伊勢海老を加えた最高値コースを事前にお願いしていましたが、手慣れた他のゲストたちは皆アラカルト注文で楽しんでいました。
ビールで喉を潤した後、秒で提供される八寸。おそらく来店時刻に併せて準備していたのでしょう。このようなタイミングの良さは嬉しくなる。内容物は12時から時計回りにハマチの南蛮漬け、柿の白和え、カボチャの炊合せ、マグロのヅケの手毬寿司、生麩の味噌田楽。ハマチに重量感があり個人的にメガヒット。
お椀はワタリガニのしんじょうに松茸。これはべらぼうに旨いお椀ですねえ。スープそのものはごくごく薄味であるのに、松茸の香りとカニの旨味が最強クラスであるため、結果として非常にまとまりのあるお椀でした。
お造りは中トロ、アオリイカ、伊勢海老、シマアジ、サバ。いずれもMARCHレベルを超えてくる味わい。中トロはややスジが残るものの、赤身の逞しさと脂の甘味のバランスが良く、まるで牛肉のようなタフさがあり、強く心に残りました。何でもかんでも脂が多ければ良いという時代は終わった。
地元のお酒はありますか?と大将に尋ねると、ニヤリと不敵な笑みを浮かべ、「お料理に合わせてご用意させて頂きますっ」と胸を張る。この男、相当の酒好きとみた。
阿波牛の塩焼きと、ノドグロの塩焼き。阿波牛は美味しいは美味しいのですが、その語感から受け止める期待ほどの味覚には達していなかった。他方、ノドグロは安定の美味しさである。未曾有の脂を湛えながらも決してクドくはない。矛盾に満ちた個体でした。
車海老にキノコ、甘鯛、トップを飾るのは甘鯛のウロコです。ウロコはバリっと揚げられており、コクの強いせんべいのようでバリバリと美味しい。その身や車海老などは見た目通りの美味しさでした。
12時から時計回りに、むかご、サトイモの天ぷら、シイタケにエビを敷き詰めた天ぷら、真鴨を揚げたもの、サンマ、鰻のキモです。揚げ物三兄弟がいいですね。シイタケとエビの取り合わせの妙は言うに及ばず。真鴨の猛々しい旨味と、それに寄り添うホクホクとしたサトイモ。油切れが悪くややベタベタと感じる場面もありましたが、総じて素材の勝利でした。
地酒、続く。当店は酒が安い。ビールはもとより、総額から逆算するに、日本酒は1合1,000円を切っているのではないか。アラカルト注文できて酒も安い。こんな店を抱える徳島市民は幸せものである。
ハモの炙り。これはちょっと変わった料理ですね。ありそうでない。ハモ特有の泥臭さは若干残るものの、むちむちプリンな歯ごたえと香りの抜けの良さは犯し難い価値を感じました。ワガママを言うと、少し梅風味などで遊んでも良かったかもしれません。
お食事です。鯛めしはベーシックな美味しさで万人ウケする味わい。お椀は豪快に伊勢海老様のお頭がドカンと。甲殻類特有の旨味がスープに溶け出し美味しゅうございました。
デザートはほうじ茶のパンナコッタ。仄かにほうじ茶の風味が感じられる、というレベルではなく、はっきりとほうじ茶味で実に旨い。これはほうじ茶よりもほうじ茶の味がしました。
飲んで食べてお会計はひとりあたり12,000円と少し。安い。東京の半額ではないか。言葉にならないうめき声で喜びを表現する私。もちろん驚天動地の快楽が迫りくるといった料理はありませんが、値段を考えればどの皿もすこぶる調子が良い。店主も低姿勢で愛想が良く、居心地よく食事を楽しむことができます。当然に予約で満席なので、徳島行きが決まればすぐに電話するようにしましょう。


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