年末年始に11日間のクルーズで海外へ vol.8~基隆~

日本人には馴染みが薄いかもしれませんが、基隆(キールン)は台湾を代表する港町です。巨大客船が接岸できる良港であり、鉄道を利用しての台北との接続もグッド。高層ビルこそ少ないものの、繁華街がどこまでも続くミドルクラスの都市。
ただ、名所名刹が少ないんですよね。そこにあるのは繁華街のみ。何でもあるけど何にも無い。仕方がないので我々はひたすら食べることを決意。

まずは観光案内所に赴き、この辺りで旨い店はあるか?とスタッフに尋ねる。「食べ物の好みは人それぞれです」という真理が返ってきました。ぐう正論であり、私は完全に押し黙ってしまい、彼も「大賢は愚なるが如し」とでも言いたいのか沈黙を貫く。

必死の思いで、じゃあこの辺で貴方が一番好きなお店を教えてくれ、と何とか食い下がります。すると、「イタリアラーメンの店はどうでしょう?」とのご信託。イタリアラーメン、と私は静かに繰り返す。もちろん彼は聞かれた質問に誠実に回答し、恐らく彼がこよなく愛しているお店を告げたつもりでしょう。しかしそんなアドバイスでは、人としては誠実であったとしても観光案内所のスタッフとしては0点である。

これ以上議論を重ねてギスるのも何なので、謝謝ありがとう、イタリアラーメン、きっと行くよ楽しみだ、と、本物であるにはいささか感じの良すぎる笑顔を残し、無料マップだけを手に取り観光案内所を出ました。
しかし捨てる神あれば拾う神ありとは良く言ったもので、その無料マップが大変良くできた代物であり、近くに「廟口」という屋台村がある情報を得ることができました。屋台村。なんて甘美な響き。
観光案内所から10分程歩き「廟口」に到着。ここからは各店舗ごとに個別に記していきます。なお、「廟口」の屋台はすべて固体識別番号が振られており、その番号を店名の後に付記しておきました。


吳記螃蟹羹<5>/基隆廟口(台湾)
https://tabelog.com/taiwan/A5406/A540601/54000720/
蟹スープとおこわのお店。蟹スープとおこわのセットは廟口において定番の屋台。中でも当店は大混雑。
蟹スープ220円(55元)。蟹肉、タケノコ、キノコ類がタップリ入ったとろみの強いスープです。気前よく蟹肉が入っており、この価格でこのクオリティはすばらー。
おこわは当たり前に中華風であり、異国を舌で感じます。船内のべちゃついたごはんとは一線を画し見事な炊き加減。それでいて120円(30元)という奇跡。この価格でこれだけの料理を外食できるのであれば、台湾の主婦は家で料理することを放棄するに違いない。


■一口吃香腸<43>/基隆廟口(台湾)
https://tabelog.com/taiwan/A5406/A540601/54000692/
何とも食欲をそそるスパイスと肉の香り。その主を見遣ると長蛇の列。何事かと凝視すると、一口ソーセージのお店でした。
1粒30円弱(7元)。よりスパイシーなタレと生のニンニクもドッサリ添えられます。
バリっと焼かれた焦げ目を一息で噛み切ると、口の中に肉汁が溢れ出る。アジアを象徴するような味付けは、食べ進めるほどに食欲を刺激します。これは旨い。

思わずビールを飲みたくなりましたが、廟口では誰も酒を飲んでいないんですね。コンビニで買って持ち込んでいいものか、または酒を飲み歩いていいものか不明なので、臆病者の私は大人しく唾液を飲み下す。


■天一香<31>/基隆廟口(台湾)
https://tabelog.com/taiwan/A5406/A540601/54000700/
魯肉飯の専門店。鹿港の魯肉飯では地獄を見たのですが、都会の専門店、しかも地元民が列をなしているのですから間違いないと踏み、入店。
甘辛く煮たトロトロのそぼろ肉が、たっぷりのタレと共にごはんに流し込まれます。うむ、これが本当の魯肉飯である。日本の魯肉飯はうっかりするとパクチーが入ったり、そぼろ肉ではなく角煮丼になったりしてしまうのですが、これこれ、これが本物です。


滷排骨飯<21>/基隆廟口(台湾)
軒先に放り出されたテーブルで若者ふたりが一心不乱に掻き込む丼があまりに旨そうだったので思わず入店。「彼らが食べているものをひとつ、店内で食べます」と流暢なボディランゲージで注文。
魯鶏腿便當320円(80元)。鶏の骨付きモモ肉を丸ごと煮込み、たっぷりの野菜と共に頂きます。

ホロホロと崩れゆく鶏肉を口に含むと甘辛さが爆ぜる。程よい甘さのキャベツも優しく、ごはんもたっぷりで大層食べ応えがありました。
ちなみに、「便當」というのは日本語の弁当から転じた言葉。我々のように店内で食べても良いのですが、どちらかというとテイクアウト客が多かった気がします。それこそ飛ぶように売れ続け、我々の10分やそこらの滞在のうち30パックは売れていました。


豬腳・蝦仁焿<22>/基隆廟口(台湾)
https://tabelog.com/taiwan/A5406/A540601/54001767/
豚足と海老みぞれスープの人気店。今回、最も行列が長かったお店です。
海老スープは日本では食べることのできない味。海老のすり身(?)を油で揚げ、酸味と甘味を伴ったたっぷりのスープで煮込んだ料理です。日本で食べる海老のチリソースを出汁でのばした味に近い。とにかくゴロゴロと海老が入っており、海老好きには至福のひと時。
オマケでチャーシューも注文。そう、当店は豚足ならびに豚料理でも有名。ちなみに台湾で「猪」という字は豚を意味するのでご注意を。


■陳記泡泡冰<37>/基隆廟口(台湾)
https://tabelog.com/taiwan/A5406/A540601/54000631/
泡泡冰とはカキ氷機で削った氷にシロップを加え、ひたすらボールで混ぜ合わせてシャーベット状に仕上げる台湾定番のデザートです。舌触りはパピコやスタバのフラペチーノに近い。
皆が注文していたオレンジ色の味を注文。セパージュは恐らくマンゴーとパッションフルーツ、若干のパイナップル。ただしフレッシュというよりは人工的な味わい。それでも200円もしない(45元)なので、食べ歩きに最適。


良く食べた1日でした。航海中の色を失った食生活をようやく挽回することができ、妻の機嫌も途端に良くなりました。

台湾の人々は食に対するこだわりというか、値段に見合ったものを求める傾向が強いように感じています。同じような料理の店が軒を連ねていていても、一方では大行列、もう一方では閑古鳥。日本人のように「混んでるから空いている隣の店でいっか」という妥協は一切見せません。

ところで、私が勝手にイメージしていた台湾B級グルメは小籠包とマンゴーカキ氷だったのですが、それらを見かけることはありませんでした。もちろん小籠包は上海のものだとは存じ上げてはいるのですが、それにしても見当たらない。場所的または時期的な制約なのでしょうか、誰か真相を教えて下さい。

Ruth C. Coffee/慶安宮近く(台湾)
https://tabelog.com/taiwan/A5406/A540601/54001768/
最近台湾はコーヒーが流行っているらしく、チェーン店はもちろん、ルノアール的高級オッサン向け喫茶店から、シングルオリジンをハンドドリップで出すような気合の入ったお店まで百花繚乱。観光案内所ではこんなに格好良いマップが無料で配布されています。
我々は洋上でのデジタル・デトックスのリハビリを兼ねてwifiを有したスタイリッシュな「Ruth C. Coffee」というカフェへ。天明の打ちこわしを想起させるボロボロの通りにポツンと佇む、場違いにセンスの良いお店です。
店主はアラサーで当然に英語を操る。客層もオシャンティー。表参道あたりの気取ったカフェをそのままコピペしたようなお店です。
店主の心意気を見込んで最高値のシングルオリジンコーヒーを注文。驚きの640円(160元)です。肉まん1個あるいは麺1杯100円の国でこの価格設定は勇気が要るだろうなあ。

エチオピアの大層立派な農園のものらしいです。ドリップ中はまるで居合い抜きでもしているかのように真剣な表情の店主。注文してから到着まで20分近くかかりましたが、その長い待ち時間が逆に心地よく感じました。

一言で述べると透明感。雑味が一切なく、しかしながら余韻は長い。酸味がとても強く苦味は稀薄。私の全然好きじゃない方向性のコーヒーではありますが、このコーヒーは本物であることはきちんと理解できました。
妻はカプチーノ。これは中の上と言ったところ。目立った特長はありません。

あくまで当店の真骨頂はサードウェーブ的な妙技でしょう。まさか台湾の馴染みのない港町でここまでレベルの高いコーヒーに出会えるとは恐ろしい子。


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クルーズ旅行が好きです。ホテルごと移動して、朝起きたら違う土地に着いているという手軽さがいいですよね。煩雑な荷造り&荷解きとは無縁。交通費と食費も込みなのでリーズナブルです。
子育て中のイラストレーターが漫画でクルーズの素晴らしさを伝えてくれるエッセイです。クルーズ旅行って、高級なイメージがありますが、子連れなどの場合は総額では割安になることが多い。そのような事実や基礎知識を非常に解かり易く著している良本です。クルーズをまだ一度も経験したことが無い人が読むに打ってつけ。


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