白鷹/胡町

広島ではトップクラスの有名店。60年近く続く老舗です。60年って原爆とかもうすぐそこじゃないですか。

食べログでは20件の口コミしかなく、「全て時価」「高い」「広島一」「量が少ない」などなど気になるワード満載。少々ビビってしまいましたが、繁華街でこれだけ長い間やってこれているのだから、何か意味があるだろうとお邪魔することに。
 お酒は非常にリーズナブル。東京のインチキ創作和食よりも全然安い。
 お通しのじゅんさい。じゅるりプツプツと楽しい食感。美味しい。
さて、ここからは全て時価のアラカルト注文。自分のセンスを 信じます。まずはきぬかつぎ。小さいサトイモですな。ぬめっとした歯ざわり。及第点。
 「このあたりのものを盛り合わせで」とお願いしたお造り。タイは前日のなかしまよりも食べ応えがあって嬉しくなる。キスの昆布〆は柔らかな旨味がきいており、これまで経験したキスの中では最も扇情的で興奮してしまいました。こう書くとなんだかいやらしいですな。イカのウニ巻きはイカのぬめぬめ感とウニのぬるぬる感が合体してぬめるぬめる。素晴らしい。トリガイも噛めば噛むほど味が沁み出る。こんなガムあったら売れるのに。クロレッツトリガイ味。売れねーよ。
 アジの南蛮漬け。ま、まさかアジを丸々一匹南蛮漬けにして出してくれるとは。。。あまりの迫力で周囲の視線がこちらの皿に集まります。漬け汁もタマネギも長ネギも非常に品が良く、ちゃんとした料理屋が本気で大衆料理を作ったらこうなるのか。。。感激しました。
 タイの頭をあら煮にしてもらう。ひとり一匹すごい量。器はビュッフェキャセロール程の大きさの蓋付の皿で大迫力でした。
 調理中のアスパラが珍しい色をしていたので尋ねると「広島で採れた紫アスパラ」とのこと。食べたことがない食材だったので、てんぷらにしてもらう。驚くほど美味。瑞々しい一方でホックリ。品の良い旨味がカリっとした衣を伝って舌先に流れ込んできます。シンプルですが、本日一番のお皿。
最後はタンシチュー。粘性が高く舌なのか何なのかわからないぐらい煮込まれていました。もう少しタンの食感を残して欲しい。あとクラッカーも微妙。日本料理なんだから、おこげとかにすれば嬉しくなっちゃうのにな。

気になるお会計は16,000円。覚悟していたほどは高くなく一安心。アラカルト注文であることを加味するとかなり割安。

ただ、やはり経験値を求められるお店だと思います。自分の好みや主張を的確に料理人に伝えることができるかどうかが分水嶺。いくら勧められても好きじゃない食材であれば毅然と断る勇気。たとえ素晴らしい食材であっても興味がなければ価格ばっかりが跳ね上がる一方で感動はそこにはありませんものね。

好きなものを好きなだけ。アラカルトの醍醐味であり、店側にとっても客側にとってもアキレス腱。ワガママ言ったもの勝ち、嫌われたもの負け。

私は結構好きですよこのお店。頼れるものは己のKKDのみ。ただ、常連になってしまうと流されてしまいそうなので、ある程度距離をとりつつたまにお邪魔できればと思います。


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