オテル・ドゥ・ミクニ(HOTEL DE MIKUNI)/四ツ谷


日本を代表するフレンチシェフ、三國清三。2013年の日仏首脳会談のランチを担当し、その際に日本のフランス料理のレベルの高さを全世界に示し、日本の料理人として初めてレジオン・ドヌール勲章シュヴァリエ(フランスの最高勲章)を受勲し話題となりました。
ちなみに日本のミシュラン7不思議のひとつなのですが、三國シェフはミシュランには一切評価されておらず、あの赤い本にはミクニのミの字も記載されておりません。他方、もう一方の勢力であるゴー・エ・ミヨにおいては毎年かなりの高評価。そしてこの2冊の乖離を埋めるのがタケマシュランである。
四ツ谷駅から歩いて10分ほど。迎賓館近くの品の良い住宅街に佇むクールな建物。フランスにあるレストランをそのまま移築したようなエクステリアであり、食事を盛り上げるための見事なアプローチです。
席数は80とかなりの大箱。個室もあればバンケットも可能と、様々な用途に耐えうる設計となっています。我々はメインダイニングに通されたのですが、意外にも席の間隔が狭く隣のテーブルの会話が丸聞こえだったのが残念(以上、写真は公式ウェブサイトより)。
ワインの値付けは全般的に高いです。ワインリストが非常に分厚く選びきれなかったので、ソムリエールに予算と方向性と料理を伝える。すると此奴が絵に書いたようなポンコツで、頭を抱えながら奥へと下がって5分近く戻ってこない。自分たちで作ったワインリストの構成が記憶に刻み込まれていないとはどういうことだ。もう料理は来てるんだ、もういいキミには任せていられないということで、シンプルに泡1本で勝負することに。
アミューズはベーコンとチーズの風味を湛えたキッシュ。食欲をそそる香りが見事であり、パステルのプリンを思わせるふわとろな食感が堪らない。ほんのりとあたたかい温度管理も見事であり、素晴らしいアミューズです。
前菜はスープ。赤大根の温製ポタージュと、メークインの冷製ヴィシソワーズの2層構造。それぞれのスープを異なる温度帯で提供するという面白い試みです。個人的にはメークインの冷製ヴィシソワーズに大地の甘みを感じて心が和みました。旨味の強い甘エビやアサリの風味も素敵なアクセント。
バゲットは特長は無いものの上質であることは違いありません。後述のソースと合わせて食べるにはこれぐらいでちょうど良い。
魚料理は的鯛。中々に思い切りの良い火入れであり表面が香ばしく、身そのものはジューシーであり好きな方向性です。赤ワインヴィネガーソースも濃厚かつ濃密でこの料理につき的確。

白眉はガルニチュール(付け合せ)のリゾット。カレー風味のリゾットを白菜で包んでいるのです。想像以上にスパイシーな味付けにワオと驚く。レーズンとアーモンドも名脇役。
肉料理は鶏モモ肉。中にはひき肉が詰め込まれており、全体としてポトフのような仕上がりとなっています。総論では柚子の香りが漂うのですが、ゴボウの野趣溢れる土臭さもいい。肉そのものの味覚にインパクトが無かったので、ここはひとつフォアグラでも詰め込んでパンチ力を持たせたほうが良いでしょう。
グラスで赤ワインを注文したのですが大失敗。あのポンコツがどす黒い赤、恐らくカベルネを持ってきやがったのです。俺たちは真っ白な鳥肉を食ってるんだよ。もちろんグラスで提供できる赤には限りがあるのかもしれませんが、それならそうと事前に言うべきであろう。いわゆる高級フランス料理店としてはあまりに幼稚な大失態です。素材ならびに調理を担当した料理人が可哀想だ。
デザートはリンゴのスープとヴァニラ風味のブランマンジェ、グレープフルーツのシャーベット、ショコラのケーク添え。リンゴのスープとヴァニラ風味のブランマンジェが秀逸。正統的な味わいのブランマンジェに品の良いリンゴのスープが染み渡る。
小菓子はカルピスとグロゼイユ(赤スグリ)のマカロン。カルピスと商品名を言ってしまうところが面白い。しかしながらカルピス風味はキレイに昇華されており、ひとつのマカロンとして実に美味しい代物でした。
なるほどさすがは世界のミクニ、いずれの料理も外すこと無く王道を行く味覚でした。しかしながら写真を見返してみると、いずれもどこかで食べたことのある料理ばかりであり、天才の第六感を垣間見る瞬間が無かったのも事実。次回は最高値コースを選択し、金に糸目をつけないマックスの実力を楽しみたいと思います。

サービスの酷さについては既に述べましたが、レセプショニストは素敵な笑顔で迎えてくれたし、メートルは威厳を持って、しかし愛嬌のある態度で歓迎してくれたので、私の担当がたまたま残念だっただけかもしれません。


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