BLT STEAK ROPPONGI/六本木

私の妻はワインについて全く詳しくありません。しかし、何もわかっていないくせに「あら、これは美味しいわ」などとのたまいながら高いワインのみを嗅ぎわけガブガブ飲むという厄介な舌を持つため、取り扱いに注意する必要があります。

なので、先日、自宅でクリスマスワイン会を開催する際においては、この日はお友達とお外に遊びに行ってきな、おこづかいあげるから、と申し出、体よく外出してもらっていたのです。

とは言え彼女がその日に費消した金額を夫婦間で領収書精算するのは味気ないので、近所のステーキ屋でお肉をごちそうすることで手打ちとなりました。
BLT STEAK ROPPONGI。このあたりはウルフギャングスルビージャックスワカヌイ、ルースクリスと有名ステーキ屋が綺羅星のごとく連なります。近々ルースクリスの予約を持っており、もうすぐステーキ街道が完成する見込み。
ド正月にお邪魔したため、閑散としています。個室は親族の年始交換会として活用している品の良いお客が多い。価格帯もそこまで高くはないけれども安っぽくもないという意味で、使い勝手が良いのでしょう。
名物のポップオーバー。新川優愛の頭のサイズを超えてくる。しかし巨大なシュー生地のようなものであり、中は空洞であるため、きちんと食べきることができました。
プレゼンテーションの一環としてポップオーバーのレシピもついてきます。しかし4cupsやら8eggsやら、計量単位が曖昧なので、これを見て作った人は世の中にひとりもいないでしょう。
ホイップクリームは乳の脂がクドく、美味しくなかったです。
ホイップクリームに塩を振りかけても焼け石に水でした。
ステーキセットには自動的にサラダがついてきます。家でも作ることができるなんてことのないサラダでしたが、まあ、アメリカ料理屋に多くを期待してはならない。
熟成肉に敬意を表し、肉専用黒ワインをボトルで頂きます。ソノマのカベルネ。チョコレートというかエスプレッソというか、とにかく黒系果実が濃厚。一方でタンニンが下品というわけではなく、高くないのに素晴らしいワインです。
ドライエイジングプライムフィレミニヨン。USDA(アメリカ農務省認定)格付け最高位プライムグレードのアンガス牛です。

「ステーキセットには2つのサイドディッシュがつく」との説明があったのですが、まさか奥のマッシュポテトとローストオニオンのことだとは思いもよりませんでした。
専用の釜を用い925度の高温で焼き上げるため、表面はガリっとしていて食感が面白い。熟成によって引き出された肉の味が極めて濃く、噛み締めるたびにミートの旨味がぽぽぽぽーん。
ソースはステーキソースとチミチェリソース(香菜を刻み込んだオリーブオイルソース)の2種をリクエスト。なのですが、いずれも凡庸であり肉の味を邪魔します。肉は何もつけずにそのまま食べるのが吉。他方、自称サイドディッシュのマッシュポテトとオニオンが無味であるため、これらの味付けとしてソースを活用するのが良いでしょう。

実に美味しかった。塩コショウをキツ目に振った硬い硬い熟成肉を赤ワインと共に頬張り続けるエンターテインメント。サシの入った鉄板焼きや溶けて無くなるような焼肉とは同ジャンルでは語れない美味しさがここにあります。

雰囲気やサービスは至ってカジュアル。ルビージャックスのようにセクシーな雰囲気は皆無であり、気立ての良いおのののか似の店員も見当たらない。もちろんルビージャックスに比べて割安でもあるため、気の置けない仲間と肉だけを食べに来るお店と割り切って捉えれば悪くないお店だと思います。



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