豚組 しゃぶ庵/六本木

「タケマシュランの読者で、是非お目にかかりたいという女の子がいるから、一度お食事付き合ってあげてください」と、外資金融からお誘い。ご丁寧に顔写真まで添付されています。いいねえ、美人は大歓迎だ。
なんやかんやで3対3の合コンみたいになってしまいました。かなり広い個室で居心地がすごくいい。「30分遅れます」とダメ幹事。こういう時、どっち側にサバを読むかで盛り上がりました。ちなみに私は大きめに申告し、実際にはその伝えた時間よりも早く着く戦法を取ります。
Far Yeast Brewing Companyの「馨和 KAGUA Blanc」。白濁しておりヴァイツェン風、肌理が細かくクリーミー。はっきりとした柚子の香りに少々の山椒の香り。小麦の味がはっきりしていて苦味は控えめ。少々のスパイシーさが食欲を掻き立てます。
お通しの山菜。普通です。定食屋のそれと同等。

「えー、こんなのまで写真撮って~、何かにアップするんですか~?」???今夜の趣旨がわけわかめ。タケマシュランの読者じゃなかったっけ?どういうこと?
アサリのスープは貝の味わいが強烈。非常にわかり易い味わいです。ただし、砂や貝のカケラがジャリジャリと底に滞留しているのは残念賞。
「お仕事何されてるんですか?」しかしこれは決して「タケマシュランって正体不明だけど何やってる人なんだろう?」の「お仕事何されてるんですか?」ではなく、合コンにて通常用いられる「お仕事何されてるんですか?」であり、単なる会話の潤滑油です。ダメ幹事、どういうことだ。
ビール全般が割高なので日本酒へ。瓶のキリが良かったので、通常の1合よりも多目に注いで頂けました。

ダメ幹事到着。45分の遅刻です。過小にサバを読むタイプであった。「すんません、どうにもこうにも仕事が忙しくて…今週3日も徹夜なんです」。なるほど噂通りの凄まじい勤務形態である。
ホタルイカの酢味噌和え。当店はしゃぶしゃぶ屋なのですが、そこに到達するまでに結構な小鉢が並びます。

ねえダメ幹事、今夜の趣旨って何なの?と直裁に問う。「え、すごい有名なグルメブロガーが知り合いにいるって話をしてたら、この子が会ってみたいって言うから…」ああ、とひとり合点が行く女子側の幹事。「そうだそうだ、何かそんなこと言ってましたねえ、すっかり忘れてました」これはちょっとした人気者でちょづいている私が悪いわけではなく、彼女の記憶装置に障害があるわけでもなく、全てダメ幹事の責任である。
前菜の盛り合わせ。シメサバの酸味が強烈で食欲に火がつきます。桜餅?のように仕立ててあるゴハンものが面白い。

ふとダメ幹事を見遣るとスマホを鬼いじり。「ホントすみません、仕事の連絡がバンバン来てて…」若手ならまだしも、30を超えてもここまで過酷なのか、外資金融は。
ちなみに私の行動原理は全てこの本に詰まっています。原書でしか読んでいないので、確認のために和書でも読んでみようかしら。私の英語力に誤りがあり、全然理解が違ってたらどうしよう。
女子側幹事はワインエキスパートでありワイン選びはお手の物。どえらいボリューム感と力強さ。樽がガンガンであり、バニラやプリンのような香り。
タケノコは特大サイズ。ザクザクとした食感を楽しむ。味は中くらい。

ダメ幹事は心ここにあらずの放心状態。少しでも目を閉じればそのまま眠りの世界へと引き込まれてしまいそう。よし、そんな仕事もう辞めようぜ、今から俺が言ってやるよ、電話貸してみ、数分後には自由の身だ、と外資金融からの卒業を提案。
メインイベントのしゃぶしゃぶ。クリを食べて育った豚の肩ロースとバラ肉です。塩だれ、ポン酢、ごまだれ、そばつゆ(?)の4種で食べ分けるのですが、私のお気に入りはごまだれです。脇に置かれたラー油をタップリ加えると坦々麺のような味わいへと変化。
和食にはやはり日本酒。たっぷり1合がグラスに注がれる様に迫力あり。
〆の炭水化物はトンコツしゃぶ麺。いわゆるバリカタ仕立てで、普通に美味しいトンコツラーメンです。
デザートに全くやる気を感じないのはご愛嬌。やはり当店はしゃぶしゃぶ屋なので、他の料理などに見向きもせず、一心不乱にしゃぶしゃぶのみに淫するのが良いでしょう。食べ放題プランもあったので、次回はそれにチャレンジしたいと思います。

「さすがに今辞めるってわけには…。それに僕、もう少しこの業界で頑張って上を目指してみたいんです」瞬間、瞳に光が宿る。なるほど見上げる景色と見下ろす景色は全く異なる。それを知っているのは上に立ったものだけなのか。

であれば彼の芯のある決意を応援しましょう。それでも健康だけは気をつけて。逃げることは決して恥ずかしいことじゃない。いつでもこっち側にいらっしゃい。「世界が終わっても気にすんな、俺の店はあいている」


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