リストランテ カッパス(Ristorante káppas)/表参道

ここのところお友達界隈でたいへん評判が良いお店。表参道駅から徒歩数分。シャレオツショップと住宅街が入り混じる表参道の裏路地へ。
奥に細長い造りのお店。個室もあればカーテンで間仕切りもできたりと、用途によって使い分けが良さそうです。

「イタリア全20州の郷土料理のスピリットをエレガントに表現いたします」と、物凄いコンセプト。イタリア料理一筋のシェフに加え、広尾「インカント」も関与しているそうです。
おまかせコースはもちろんのこと、プリフィクスもあればアラカルトもOK。つまり選択肢が1億通りほどありそうだったので、まずは泡を楽しみながら今夜の饗宴へと思いを馳せる。このあたりの話の進め方がヨーロッパ的でいいですね。
お通しはパルマ産(だっけ?)のハムをのせたフリットに、 ラルド・ディ・コロンナータ(背脂の生ハム)のフリット。字面に比して軽快な味覚であり、最初のオツマミとしてグッドです。
結局、プリフィクスコースに前菜をもう1皿追加してもらうことにしました。まずは鮮魚のマリネ。北海道のスズキをウイキョウと共に頂きます。フェンネルの香りはもとより柑橘系の使い方のセンスが素晴らしい。
パンはフォカッチャ、ならびに密度の高いパン。絶品!というわけではありませんが、食事を邪魔しないちょうどいい塩梅の存在感でした。

しかし、ここまでは良かったのですが、突然に皿出しが悪くなりました。入店して70分も経っているというのに未だ前菜その1です。大して混んでいるわけでもないのにどういうこっちゃ。
スタッフに進捗状況を尋ねると瞬で出てきました。私は心配性ではあるが小心者ではない。世の中言ったもの勝ちである。その後の皿出しのテンポも突如軽快となり、それはそれで他のテーブルが玉突き事故にあっているのではないかと気が気でならない。

気を取り直して前菜その2。ゴルゴンゾーラの風味が漂う白い食べ物です(料理名失念)。脊髄反射で旨いと知れるわかり易い料理で私好み。白眉はアンチョビ風味のソース。磯の香りとビビッドな酸味が記憶に残る。
タコのラグー。オレンジ色の強い卵黄をたっぷり用いたパスタが印象的。太麺原理主義者の私として堪らない一皿。欲を言えばもう少し量を。
サルシッチャとキノコのパスタ。先のパスタを凌駕するほどの麺の太さであり、小麦のギュギュギュっとした風味が堪りません。強めに調味されたキノコもグッド。種々の歯ごたえが食欲を刺激し、また、サルシッチャの迫力のある旨味が酒を呼ぶ。本日一番のお皿です。
メインはアグー豚。丁寧にローストした後に、スモークにて仕上げます。プンプンと香る燻製とのシンフォニーが魅力的。筋肉質ではあるものの嫌な硬さは全くなく、まさにムシャムシャと貪り喰ってしまう簡潔で平明な一皿。付け合わせの野菜も、思い切りの良い酸味の使い方がすごく良い。
泡のボトルが空いたのでグラスで赤を1杯。豚肉に合わせてスモーキーな香り。太陽をたっぷり浴びた凝縮感があり、これぞ赤ワインという味わいです。料理との合わせ方に凄くセンスを感じたので、冒頭からペアリングにしても良かったかもしれません。
デザートはクレマカタラナをチョイス。一般的に野暮ったい盛り付けになりがちな甘味ですが、当店のそれは何とも美しい。こんなにセンスの良いクレマカタラナは見たことがありません。味はクリーム(?)部分に比してカラメルの部分が多く、ビターで大人な味わい。
連れのデザートはパンナコッタ。ひと口交換こしましたが、これがまた絶品。この原材料は卵であると手に取るようにわかるほど卵の味が濃い。滑らかな口当たりも見事であり、パンナコッタ新時代の幕開けである。
食後のカフェにも遊び心が満載です。お腹いっぱい飲み食いして税サ込ひとり1.4万円ほど。これは驚天動地の費用対効果であり、私のイチオシのイタリアン、麻布十番「プリンチピオ」に食後感が近い。複雑なアイデンティティが求められる三つ星レストランの料理とは少し異なりますが、質実剛健でありながらどことなくハイカラという、私が好むど真ん中のレストランでした。途中のテンポの悪さは気になるところでしたが、そこは惚れた欲目であり、終わってみればそれほど不満は残りません。
特にパスタ料理が良かったですね。お店側も自信があるようで、旨そうなサンプルが百花繚乱。今度は昼にパスタだけ食べに来てみようっと。オススメです。


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