三重ノ海/門前仲町


4年ぶりに会う友人。彼女の生活圏内ならびに「日本酒が飲みたい」とのリクエストより、前々から気になっていたこのお店を選択しました。
タクシー業界大日本帝国の一角、帝都自動車交通のビルの2Fにあります。周りの路地に溢れる居酒屋も魅力的。門前仲町ってみかわ是山居ぐらいしか行ったことがないので心が躍る。
まずはアサヒスーパードライ。細い細いグラスであり、あっという間に飲みきってしまいました。

「煮え切らなくてさ」まだ鍋も出ていないのに何の話だ、と顔を上げると、「あ、カレシの話ね。こっちは早く子供産みたいのに、結婚ですら何も話が進まない」それにしても最近この手の相談事が多い。まるで女子高の進路相談の先生である。
自家製の豆腐。なのですが、ごくごく普通の豆腐であり、腹蔵のない意見を述べると、手間隙かけてこのレベルであれば、外注してしまうほうが良いんじゃないかと思います。
鰹のたたき。ネット上のクチコミで絶賛されていたので注文したのですが、私にはその有難みがサッパリわかりませんでした。もちろんそれなりには美味しいのですが、スーパーで売られている鰹を家庭で工夫したそれと大差ありません。これで1,300円はちょっと高いなあ。
明太子とチーズのレンコンはさみ揚げ。これは良いですね。わかりやすい調理で誰もが安心して楽しめる味わいです。レンコンは調理が面倒だから、外で食べるに限る。
連れはヒレ酒を注文。妖しく光る炎が酒欲を刺激する。

「専業主婦とか絶対にムリ。あたしの人生、そんな簡単にひとりの男に預けられない」これについては完全に同意。今後専業主婦になろうかと思案している方は、自分のこれまでのキャリアを捨て今後の人生を賭けるに値する男かどうかを真剣に見極めるべきでしょう。

運良く「今後の人生を賭けるに値する男」だったとしても、そのような方は基本的に魅力的であるため、浮気や不倫の憂き目に遭うというリスクが極めて大きいということも併せて指摘しておきます。これは決して精神論や道徳について議論したいわけではなく、初歩的なリスク管理をしておきましょうというお話です。

また世界一人件費が高い国において、一家の重要な働き手を家政婦という役不足に据え置くのは、経済合理性を欠いた判断であるということをお忘れなく。
「日本酒チビチビやりたいから、ホヤ頼んでいい?」出ました今夜はしっかりと飲むという決意表明。当該ホヤは臭みは小さく風味は強い。優秀な酒の友である。
思わず私も一ノ蔵へ。気温が下がっていくにつれ、日本酒に対する熱が上がってゆく今日このごろ。
カニクリームコロッケ。カニの身がしっかりと詰まり、コクのあるクリームとも相俟って美味しいのですが、俵型のおむすび程度の大きさしか無いため、食べていてストレスがたまりました。割高です。
立山。飲み飽きせずガブガブと飲めてしまう1杯。

「女ひとりを無償で養える男、に見合う女としてのスペックを保ち続けるってムリゲーだよね」女の魅力なんて経年劣化していくものだから、と眼を伏せて自嘲気味に笑う彼女。アラサー女子の結婚に対する悩みはマリアナ海溝よりも深い。
スペシャリテのちゃんこ鍋。平らな鍋に薄く食材が入るので迫力がありません。肉はつくねとイワシのツミレ程度であり、ガシガシ鍋を食べている気分に浸れない。

スープはこってりと炊かれており上々。それでも個人的には吉葉の魚介や肉の旨味がじっくり溶け込んだクリアなスープのほうが好きだなあ。
小食の彼女は早々に鍋を食べる手を緩め、ヒレ酒を追加です。ひと口頂きましたが、つぎ酒であってもヒレの香ばしさとアミノ酸の旨味が豊かであり、ツマミなど要らずこれだけでチビチビと永遠に飲めてしまうのではあるまいか。
私は極上宮の雪へ。フルーティな香りでまろやか。軽快な飲み口でスイスイ飲めてしまいます。

通常であれば〆の炭水化物として雑炊や麺類を鍋に入れるものですが、それほど気分が乗らず今夜は食べなくていいやと打ち止めです。

全体として味はそう悪くないのにこの低評価は何かと思い返してみると、犯人は客層のような気がしてきました。

客の多くは大して面白くもない話に手を叩きあって大声で叫びまわる会社員ばかり。お店側も奇声を発するオッサン共に対して特に注意はせず黙認。食事を楽しむレストランではなく、どんちゃん騒ぎするためのパーティスペース程度に捉えたほうが良さそうです。

そういう意味で、大人数で入店し騒ぐ側に回ってしまうのが勝ちです。大人数でどうぞ。

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