アンティカ・オステリア・デル・ポンテ/丸の内


ANTICA OSTERIA DEL PONTE。「橋のたもとに立つ古い旅籠」を意味します。ミラノ本店以外での出店は、ここ東京のみであり、シェフのエツィオ・サンティン自ら「最初で最後の支店」と明言しています。
連れよりも少し早く到着したのでウェイティングバーに通して頂きました。

ちなみにミラノ本店のシェフ、エツィオ・サンティン(Ezio Santin)はミラノ生まれのミラノ育ちであり生粋のミラネーゼ。食料品店を営む傍ら各地の名店を食べ歩き、自宅に友人達を招き振舞っては好評を博する手料理の腕をベースに39歳で料理人としてデビュー。料理人としては異例の遅い出発ながらイタリアで2番目にミシュラン三ツ星を獲得したのです。
丸ビル36階最上階、地上180mでの食事。完成したばかりの東京駅前広場に集まる人々が豆粒ほどに小さくなる高さです。
ダイニングの雰囲気はこんな感じ(写真は公式ウェブサイトより)。いわゆる超高級店のそれであり、ミラノ本店より派遣されたであろうイタリア人サーヴィス陣が気分を盛り上げてくれます。
酒が滅茶苦茶に高い。何でもないスパークリングワインのグラスが1,900円であり、一番安いフランチャコルタは1本11,000円(税サ別)でした。ちょっと私の価値観にはそぐわないので、最も安価な泡のボトルに逃避する。味については多くを語るまい。
アペリティーヴォはビスケットにサワークリーム、マイクロトマト。これはまあ普通の一口であり、今あなたが想像している味と大差ないでしょう。
アミューズはニンジンのムースに生クリーム、アーモンドに生ハム。 期待していたよりも遥かに平板な味わいであり、ブレトンウッズ体制のように固定的な味覚です。もう少し塩気をきかせた凹凸のある料理のほうが私は好きだ。
アーティチョークをペースト状にしたものと、グラナパダーノ(チーズ名)に卵黄を混ぜてクリーム状にしたもの。これは旨い。私はアーティチョークという食材をそれほど好まないのですが、この皿のそれはアーティチョークの可能性を引き出す新たな味覚を提示してくれました。グラナパダーノのクリームは少しニンニクの風味がきいて小粒ながら食べ応えあり。
手前は玄米の黒パンに、奥はオリーブのパン。外見は特長的であるものの、味わいは中くらいといったところです。
パスタ料理は気仙沼産メカジキのスパゲティーニ。この皿は実に興味深い。トマトソースにサフランの香りが強く付与されており、柑橘系のカンディート(フルーツのシロップ煮)とコリアンダーの香りと強く調和しています。全体としてオリエンタルな味覚であり、イタリア料理の新機軸を見た瞬間でした。
パンをお代わり。米粉のパンに、ミルクパン。ミルクパンの甘味が強く、円みのある味わいで美味しかったです。
メインはサンレーモの漁師風。白身魚(忘れた)と海老、ホタテにアンコウから抽出されたスープがたっぷりと添えられています。魚は旨味が抜けており印象に乏しい。他方、エビとホタテは特大サイズであり心を満たしてくれました。白眉はスープ。アメリケーヌソースもかくやと思わせる濃厚な仕上がりであり、心に残った液体です。
デザートはワゴンより2種類を選択。
私はチーズケーキに、、、何かのカスタードクリーム添え。チーズケーキがこってりと濃厚でヘヴィ級で私好み。
小菓子はミカンのドライフルーツ(?)にカヌレ。イタリア料理店でこのような小菓子が出るのは珍しく、美味しく頂きました。
なるほどイタリアで三ツ星を誇るだけあって、いずれの料理も抜け目無く美味しかったです。ただし支払い金額も三ツ星級。今回はランチだったのでギリ納得といったところですが、夜にまともに飲み食いすればひとりあたり3~4万円は要することでしょう。それならもっと手の込んだフランス料理を食べたいなあ。ハコや景観はカッコよく、サービスも外さないので、接待や記念日使い向けのお店なのかもしれません。


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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
十年近く愛読している本です。ホームパーティがあれば常にこの本に立ち返る。前菜からドルチェまで最大公約数的な技術が網羅されており、これをなぞれば体面は保てます。

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