エル ブランシュ(Aile Blanche)/麻布十番


Aile Blanche。箱根のオーベルジュ・オーミラドーを皮切りに、フランスを含む数々の名店で修行したシェフの「白い羽」。パリ16区をイメージしたという店内は品の良いテーブルが数卓のみと特別感があります(写真は公式ウェブサイトより)。
お誕生日おめでとう、と正面に向かて目線を合わせる。彼女とは、彼女が10代の頃からの付き合い。こうしてお誕生日を祝うのは一体何回目になることでしょう。

「花の色は移りにけりな、ね。口の悪い人なんて、『お前も劣化したよな』とか平気で言って来るんだから」日本の男はいつだってロリコン。壁に空いた穴のような目で遠くを見つめる彼女。
当店のスペシャリテはフォアグラのポワレ。その素材を最初にプレゼンテーションしてくれました。「あたし、こんなに食べれるかしら」と顔を引きつらせる彼女。それものそのはず、ゆうに100グラム以上はありそうなサイズです。一度の食事でこんなにフォアグラを食べるのは初めてかもしれません。
甘エビでキックオフ。やや生臭くはあるものの、素材の味が濃く野性味溢れる、と表現しても良いかもしれません。ねっとりとエロティックな舌触りをシャンパーニュの泡で流し込む。シューには芳醇でリッチなフォアグラバターが挟み込まれており良い風味です。

日本男児のロリコン志向に頬を膨らませる彼女。しかしながら、若さは誰にでも与えられるものではあるが、教養は自分で勝ち取るもの。彼女の教養の高さは若い頃は「生意気だ」とマイナスに働いたかもしれないですが、これからはきっと良い方に作用することでしょう。賭けてもいい。
甘鯛を生で。ハッキリとした歯ごたえにタイそのものの素材の味が胃袋に染み渡る。甘鯛は火を入れて食べることが多いですが、このように食べるのもいいですね。一方で、スプラウトは量が多すぎて甘鯛の良さを邪魔していたかもしれません。

「ねえ、○○さん(私の名)の周りの女の子に、派手なメイクの子っている?最近ああいうの、ちょっと憧れちゃって」うーん、僕の周りには根本的な美人が多いから、みんなナチュラルメイクだなあ。モデルとか女優の子とかは、プライベートではほぼすっぴんのことが多い。
甘鯛に加えてカブのスープが続くとのことだったので、ブルゴーニュのシャルドネを。思ったほど樽が強くなく、万能選手といったところです。

そもそも、日本人のメイクってヘンだよね。知り合いのアメリカ人は「日本の学生は子供みたいな格好をしているのに、どうしてメイクだけ水商売なんだ?バッグがルイ・ヴィトンとか意味不明」と評しているし、ある中国人は「中国で派手なメイクをしている女の子は夜の商売だよね。だから中国人は基礎化粧品に力を入れるの。マツキヨでSKⅡを爆買いするのはそういうこと」って言ってたなあ。
カブのスープ。こちらは滋味に溢れカブ本来の味を楽しめます。ベーシックに美味しい。もう少し量があれば尚良し。

つまり何が言いたいかというと、キミのファンダメンタルズは女性として最高位にあるのだから、キミだってナチュラルメイクでいいんだよLet It Go「ごめん、何言ってるかわかんないわ。全然つまってない」
パンは普通です。

「そうそう、この前、友達が何人かで、上司に高級な焼肉に連れて行かれたみたいでさ。お会計の時、それぞれ3,000円を徴収されたんだって。なんで楽しくも無い仕事の飲み会に連れてっといて微妙な金額徴収するのかな。あの世代の価値観って、ほんとわけわかんないよね」確かに意味不明なお金の使い道である。払いたくないのであればそもそも誘わなければ良いのであって、そのお金で奥さんと2人で素敵なレストランに行くほうが有意義でしょう。
肉料理が素晴らしい。最高品質のハラミを真っ直ぐに調理し、その野趣溢れる肉質の風味を際立たせています。サシだらけの軟弱な肉とは正反対に赤身命という印象。ソースなしでも肉々しく抜群に旨い。
グラスでボルドーのメルロを頂きました。香りが強烈でタバコのようなニュアンス。先のハラミとも良く合います。

わかるよ、僕も何かの飲み会で、オッサンが長々と演説してて超つまんないからずっとスマホでマンガ読んでたんだけど、後から周りにすげえ怒られたもん。「いや、それはアナタが悪いでしょ」
スペシャリテの「フォアグラのポワレ、シェリーヴィネガーソース」。フランスのランド村で最高のフォアグラを飼育しているジャンダニエル・キャスタン氏の鴨のフォアグラとのこと。硬さが残るのは輪郭だけであり、プリンのようにプルプルと弾け、舌にのせるとスっと流れるように溶けていきます。

なるほど確かに見事な味わいですが、あまりにポーションが大きく、草創期の(ちょうど震え出した頃の)西野カナのように重いです。スペシャリテはフォアグラのポワレ!と言い切った手前、自縄自縛しているようなきらいがあります。
バゲットは普通なのですが、先のフォアグラにはこれぐらいプレーンなものと一緒に食べるのがいいですね。

ジェネギャの話、続く。そういえば僕も、SIMフリーケータイの便利さについて旧世代に説明したことがあるんだけど、結局理解してもらえなかったなあ。「わからないから、とりあえずやめておこう」って。わからないと言う人はそもそもわかろうとしていないだけなのに。
一皿目のデザートにはアールグレイのムース。品格のあるアールグレイの香りが凝縮されており、センスの良い味覚。

もちろん旧世代にも言い分はあるんだろうけどね。この前、ピラミッド内部に、建設時の作業員の落書きが書かれているのが見つかったみたいでさ。その内容が「最近の若いモンは…」ってお決まりのグチで。この感覚は人間のOSにプリインストールされている代物なんだよ。恐らく。きっと。
アーモンドのアイスでしょうか。こちらも引き続き美味しいのですが、色がずっと茶色続きでOLをときめかせることは難しい。やはりどちらかをピヨピヨと可愛らしいフルーツ色で彩ってほしいところ。

「ま、できることしか人はできないから、放っておきましょ。旧世代はあと10年もすれば終わりで、これからは私たちの時代だもんね」おお、25歳の女の子に『私たち』と仲間入り認定して頂けました有り難や有り難や。
ミレニアルズの率直な意見を聞くことができ、大変勉強になりました。旧世代を過度に糾弾するのではなく、自分がそうなった時に、若手にそう評されないように気をつけよう。


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麻布十番にはフランス料理屋がたくさんあるのですが、残念ながら割高でハズレなお店も多い。外さない安定したお店は下記の通り。
  • エクアトゥール ←天才によって創られる唯一無二の料理。
  • ALLIE ←ワインという食事の知的部分を担うソムリエの重要性を再認識させてくれるお店。
  • ラリューン ←クラシックな調理で正統派。むちゃ穴場です。
  • 麻布れとろ ←ここで合コンすれば幹事がモテる(と信じている)。
  • RRR ←ワインが割安。飲みまくれ!
  • ルバーラヴァン52 ←全般的に安い。2時間で追い出されるのが玉に瑕。
  • ブラッセリートモ ←和魂仏才、リーズナブル!
  • タストゥー ←トリュフを使ったデザートに身悶え。
  • 麻布十番グルメまとめ ←ほぼ毎日、麻布十番で外食しています。その経験をオススメ店と共に大公開!
東京カレンダーの麻布十番特集に載っているお店は片っ端から行くようにしています。麻布十番ラヴァーの方は是非とも一家に一冊。Kindleだとスマホで読めるので便利です。

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