カンテサンス/御殿山


Quintessence。当ブログの読者であれば知らない人はいないでしょう。ミシュラン9年連続三ツ星。東京、いや日本を代表するフレンチレストラン。
訪れた日の食べログでは4.88で堂々の1位。私は白金時代に一度お邪魔したことがあり、それはそれは感激し、当時の記憶を1,000ピースのパズルにでもしておきたいぐらいなのですが、その後、御殿山へと移転してからは全く予約が取れない。次第に電話をすることが億劫になって、「そのうち誰かが誘ってくれるだろう」モードに据え置いてしまっていたのです。

そんな折、友人の「必死の思いで予約を取ったはいいが、一緒に行く人がいないことに気づいた」という美食家あるある的な誘い文句。渡りに船とふたつ返事で約束し、今日この日が来るのを指折り数えて楽しみにしていたのです。
当店は個室を除いて写真NG。したがって、今回は文章のみでお届けします。

■シャンパーニュ
乾杯はシャンパーニュ。よく飲む仲間なのでボトルで頂きます。もちろん上を見ればキリがありませんが、最も安いシャンパーニュは12,000円と、このクラスのお店にしては悪く無い価格設定でした。ブラン・ド・ブランながらもじっとりとしたコクと甘さがあり、シャルドネらしからぬ太さがある。

■アヴァン・アミューズ
まずはオックステールのスープ。その熱さはスタバのエキストラホット級でアミューズとしては斬新な温度です。

チコリやシャントレル(キノコの一種)がたっぷりと切り刻まれており、ブラインドで食べれば日本の田舎のごった煮のような味がします。奇しくも先のシャンパーニュとの組み合わせはバッチリ。幸先の良いスタートです。

■パン
パンは当店おなじみのパンドカンパーニュ。フランスの正統的なそれであり、ほのかな酸味がクセになります。

■アミューズ・ブーシュ
アミューズはスペシャリテのババロア。京都の山羊のチーズから造られるものであり、百合根やマカデミアナッツが食感に変化を与えます。品の良いプロヴァンスのオリーブオイルやブルターニュの塩で味付け。ただし想像通りの味であり、地殻変動を起こす傑作というわけではなく、テレビを観ながら食べればその有難みがわからないほど繊細な一皿です。

■前菜
前菜はケークサレ。塩味のケーキ。具材と生地が別々に調理されており、プレーンな生地の上にマッシュルームとウニが鎮座します。生地の美味しさはさすがの一言。こういう普通のものを極上の逸品に仕上げてくるのは実力がある証拠。一方でマッシュルームは土臭さを感じ、味付けも何か悩みでもあるのかと心配したくなるような思い切りの無さ。ウニは当然に美味しいですが、料理が全体として調和しているかというと疑問です。

合わせるワインはオーストリアのグリューナー・ヴェルトリーナー。華やかな香りと格調高いミネラルがウニとピッタシカンカンです。

■魚
魚料理はサワラ。ここのところフランス料理屋に行くと100%サワラが出てきます。ミキュイ(半生)の具合は私好みではあるのですが、やはり先日の東麻布天本の幽庵焼きと比較してしまう。トップクラスの料理人はジャンルレスで評価されるから大変だ。

ホウレンソウと貝の出汁のソースも先の味付けと同じく歯切れが悪い。付け合わせのカリフラワーとホタテの和え物についても、カリフラワーの土臭さが前面に出ておりあまり好きじゃありません。ワインはロワールのものだっけ?特に印象に残らず。

■肉
メインは豚。がーん、鴨とか鳩とか鹿とかを食べたかった。。。豚肉は好きな食材ではあるのですが、先日のレフェルヴェソンスと同じく世界トップクラスのフランス料理屋で食べるものでも無いと思っているのです。

色鮮やかなピンクの断面はさすがの調理技術。このままチーフにして胸に挿したい程の美しさ。しかし味は極めて淡白、かつ、脂身がクドい。他方、ソースはフォン・ド・ボーとノイリー・プラットを上手に配合しており素直に美味しかった。

ワインはジュヴレ・シャンベルタン。純真無垢な豚肉にはややバランスが悪かったかもしれません。

白眉は付け合わせ。つくねのような球体は豚足とジャガイモとソース・ベシャメルのお団子です。その他周囲を取り囲むジロール茸も秀逸。どうして主役よりも外野のほうが完全に美味しくなってしまったのか。リットン調査団でも派遣したいところです。

勇気を出して、なあ、カンテってこんな普通の料理出す店だったっけ?と連れに聞いてみると、「同じこと考えてた。よかった~、自分の舌がバカになったのかと思ってた」と、互いのこれまでの記憶に想いを馳せる。

■アヴァン・デセール
デザートはピーカンナッツとナツメヤシのケーキ。焼きたてのアツアツで、優しく丸みのある味わいです。しかしデザートとしての華やかさは皆無であり、この構図では港区女子を萌えさせることはできないでしょう。

■デセール
〆はメレンゲのアイスクリーム。焼きたてのメレンゲを崩してアイスクリームにしたばかりの、これぞという傑作。私の知る限り世界で最も美味しいアイスクリームです。終わり良ければ全て良し。ごちそうさまでした。

ちなみにサービス陣は軍隊並みの行動力および手際の良さであり、ストレスを感じることが一切ありません。しかもイケメン率が高く体系もシュっとしており、男の私から見ても惚れ惚れする身のこなしでした。
お会計は、ひとりあたりたったの2万円強!ぶっとびー!今まであれやこれやと文句ばっか言ってすみませんと土下座したい気分です。これだけの料理と酒を飲み食いしてこの値段はスーパーリーズナブル。この世に並ぶものはない程に懐に優しい三ツ星フレンチです。

ただし、あまりにも見事な費用対効果なので、私が三ツ星レストランに期待している方向性とは異なります。したがって今回は意見差し控え。次回はディナーにお邪魔して、新天地でのシェフのフルパワーを体感してみたいと思います。

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