サエキ飯店/目黒

2019年に開業して瞬く間に予約困難となった「サエキ飯店」。目黒駅から恵比寿方面へ10分ほど歩いた住宅街にあります。
カウンター6~7席にテーブルが1卓と小さなお店。小綺麗なラーメン屋のようにカジュアルな雰囲気であり、まさにサエキさんち、という印象。

佐伯悠太郎シェフは聘珍樓など中華料理の名店で腕を磨いたのち、日本と香港を行ったり来たり。広東省21市すべてのエリアを回ったり、現地で農業に従事したり鶏の卸業者で働いたりジョージアまでワインを学びに行ったりとフットワークめちゃ軽です。
まずは香港のクラフトビールで乾杯。どこ産だとかは関係なく、純粋にクオリティの高いビールでとても美味しい。このあとワインをボトルでお願いしたのですが、いずれも1本5~8千円ほどのレンジに収まり値付けも良心的です。ジョージアワインだけでなく、「自分が美味しいと思ったものは何でも置く」というスタイルです。
まずは揚げたトリッパ。いきなり度肝を抜く旨さ。フレッシュなトマトも見事な清涼感を湛えており、これまでの人生で食べたハチノス料理としてダントツに一番美味しかった。
牡蠣の茶碗蒸し。小粒な牡蠣が山ほど入っており思わず恵比寿顔。ギュウギュウに旨味が詰まった牡蠣であり、敷かれた茶碗蒸しと併せて食べて、改めて恵比寿顔。
生のイサキもべらぼうに旨い。日本料理とはまた違った豪快なカットであり、ムシャムシャとした食感が素晴らしい。味付けもバチっとわかりやすく直感的な一皿。
カブを用いた大根餅ふうのお料理。ガガっと揚げて表面が香ばしく、中はトロトロとウットリする舌ざわり。揚げものなのに透明感がある。黄ニラやモヤシのシャキシャキとした食感との対比も見事です。
こちらはハタを揚げたもの。骨や頭がそのままであり、その間に潜んだゼラチン質がナイスです。やはり揚げものであるにも関わらずサッパリとした食後感であり、店主は天ぷら職人としても大成することであろう。
羊肉はガッチリとした食感があり、咀嚼のたびに旨さが滲み出てきます。スパイスの用い方も絶妙であり、もうひと口もうひと口と後を引く美味しさ。
豚肉と白菜のお鍋。白菜は発酵させたものなのか、鍋全体を取りまとめるシャキっとした酸味がクセになる。何と思いきりの良い調味なのでしょう。最後の1滴まで余すところなく頂きました。
チャーハンもお見事。パラパラサクサクと小気味の良い食感であり程よい軽やかさ。秒で茶碗をカラにしてしまいました。
麺は「上湯麺」と「担々麺」の2種があり、両方お願いして半分こ。前者が特に印象的。見た目は素朴なかけそばなのですが、何とも言えない奥深さを湛えた味わいであり、なるほどこの麺とスープであれば具材はシンプルで充分と思わせる凄味がありました。
〆のアイスクリームも濃厚なのですがサクサクと食べきれてしまう勢いがあり、やはり瞬で皿が空いてしまいました。

欲望の赴くまま飲み食いしたにも関わらずお会計はひとりあたり2万円もしませんでした最高か。純粋な広東料理・香港料理とは異なり、程よい暴力を感じるサエキ料理。何を食べても「ああ、これは彼の料理だ」と思わせる印象的なお皿の数々。

また、十人前後の客を相手にしているのにも関わらず、恐るべきテンポの良さであり、ジャジャっと鍋を振っているかと思えばガガガと皿を洗ったりと、まるで映画を速回しで観ているかのような、驚くべきスピード感も見どころです。

商売っ気たっぷりの飼いならされた雇われシェフとは対極に位置する芸風であり、感覚的に鋭い。切れ味抜群のスーパーマン。思わずアニキと呼びたくなるクールな料理人であり、かつ、最高の中華料理店でした。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。
1,300円としてはものすごい情報量のムック。中国料理を系統ごとに分類し、たっぷりの写真をベースに詳しく解説。家庭向けのレシピも豊富で、理論と実戦がリーズナブルに得られる良本です。

cafe h(カフェ アッシュ)/県庁前(那覇)

那覇市久米。ゆいレール旭橋駅または県庁前駅から海に向かって進んだ雑居ビル2階。かき氷の名店「千日(せんにち)」あたりです。建物やエレベータがかなりボロいため通り過ぎてしまいがち。
店内はカウンター数席にテーブル2卓ならびにソファ席。窓から覗くグリーンが美しく、海外のレストランにお邪魔したかのようです。

大城由規也シェフは中伊豆のオーベルジュや都内のフレンチレストランで活躍された後、首里で当店を開業した後に久米へ。ご実家(?)は農園を営んでいるそうな。
アミューズはサトイモのムースにヘーゼルナッツ。え!?ナニコレ美味しい!!ナッツの食感や柚子胡椒のアクセントなどにセンスを感じます。
続いて北海道産のホタテ。カボチャのペースト(?)を敷いた上でホタテを配置し大根で挟み込みます。サラミの塩気や切り干し大根の食感、柑橘の風味。あたおかな組み合わせながら完璧な調和。
自家製パンも上々。那覇の住宅街にある何でもないカフェと完全に侮っていました。当店は本物です。
野菜のスープにはニンジン・玉ねぎ・セロリ・レンズ豆などなど。トリュフの香りを湛えた泡泡の配置も良く、スープの土台を支えるブイヨンもしっかりしています。
メインは沖縄県産鶏むね肉のロースト。いわゆる南仏系の簡素な調理であり、たっぷりのオリーブの香りが鶏肉の清涼な旨さを引き立てます。量もしっかりですが、酸味がきいてスイスイ食べることができます。
デザートは自家農園のバナナアイスにコーヒーのムース(?)。それぞれ骨格のある味わいであり、仕上げにマッカランをひと吹きして大人の味わいへと向かわせます。
紅茶で〆てごちそうさまでした。お会計はひとりあたり3,300円。どひゃー、何なんでしょうこの費用対効果の良さは。コスパを抜きにしても本格派のフランス料理であり、本物中の本物です。はっきりいってハレクラニのメインダイニング「シルー (SHIROUX)」の妙ちきりんな料理なんかよりも全然レベルが上です。
今回は一番安価なコースでお願いしましたが、これは次回にディナーで訪れて、最高値のコース、加えてワインもしっかりと選びたいところ。かなり意表を突かれました。これだからレストラン巡りはやめられない。

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1年で10回沖縄を訪れることもあります。1泊15万円の宿から民宿まで幅広く手がけています。
TACが世に出した一風変わった沖縄本。もはやガイドブックではなく参考書の域です。非常に情報量が多く、かつ、うまく整理されており読みやすい。大判ではないので持ち歩きやすいのも素晴らしいです。オールカラーの割に高くない。数多ある沖縄ガイドブックの中では突出した存在です。

ナイルレストラン/東銀座

日本最古のインド料理屋「ナイルレストラン」。創業は1949年であり、銀座の飲食店の中でも老舗中の老舗。食べログでは3.76(2020年12月)で百名店に選出されています。
平日の夜に予約ナシで訪れました。客の入りは半分程度であり、回転は良くゲストの出入りが激しい。初代オーナーはムッシュA.M.ナイルで日印友好の功績を湛らえており、二代目オーナーのムッシュG.M.ナイルはその明るい人柄でメディアでも大人気。現在は三代目のムッシュナイル善己がお店を統べ、かなりのイケメンぶりを発揮しています。
注文はもちろん一番人気の「ムルギーランチ」。ムルギーとは鶏肉、ランチとは昼食の意味ですが、夜であっても注文することが可能。1,500円です。店内を見渡す限り誰もがこの料理に向き合っており、ゲストの99.09%がコチラを注文するそうです。着丼後、店員がそのまま手早く鶏のモモ肉を解体新書してくれます。
解体が終わりました。具材は地鶏のモモ肉に岩手県産のサフラン(?)ライス、キャベツ、マッシュポテトと独特の構成です。これらをグッチャギッチャによく混ぜてから食べるのが当店のルール。ルーはめちゃんこ辛いというわけではありませんが、しっかりとスパイスが立っており、終盤にはじんわりと汗がにじみ出てきます。
味については値段に見合ったものであり、びっくりするほど美味しいというわけではありません。が、僅か1,500円という支払金額で銀座ひいては日印有効の歴史を味わえると捉えれば安いもの。カレーを語る上での古典、必修科目という位置づけで訪れましょう。

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カレーって美味しいですよね。インドカレーも日本カレーも大好き。ただしそれほど詳しいジャンルではなく、スパイスマニアには逆立ちしても勝てないので、意外性のあるオススメカレーをご紹介。

カレーにまつわる単語が辞典形式にまとめられ、知っていそうで全く知らないカレーエピソードがたくさん詰まっています。気合を入れてカレーを食べに行く前に目を通してから臨むと楽しさ倍増!

かつ美食堂/熊本市

熊本空港から車で20~30分、熊本インターからは5分ほどに位置する「かつ美食堂」。1967年創業の老舗であり、馬肉料理に定評があります。観光客はレンタカーじゃないと厳しい立地。その代わり(?)、駐車場はたっぷりあります。
カウンターやら座敷やらで相当広い店内。我々は土曜日の11時過ぎに訪れてスイスイに入れました。それでも結局は売り切れメニュー続出の人気店のようなので、きちんと楽しみたい方は早めに訪れると良いでしょう。飛行機で熊本に到着してそのまま向かうのが良いかも。
まずはレバ刺し。悪くはないのですが普通の居酒屋クオリティでもあり、これで1,430円は高く感じました。他の定食メニューが控えめな価格設定なので、余計に割高に感じたのかもしれません。
私は「肉めし定食(ホルモン中付き)」。1,540円です。人気メニューの「肉めし」と「ホルモン」の両方を食べることができる欲張りなセットです。
こちらは「肉めし」。丼に盛った白米にぶつ切り(?)の煮込みをぶっかけたもの。味付けとしては吉野家や松屋のベクトルに似ており、その馬肉バージョンといったところでしょう。
「ホルモン」は馬のホルモンの煮込みです。馬のホルモンって初めて食べるかも。しかしながら匂いがキツく私には無理め。私はこういう料理に割と強いつもりでいたのにこの結果なので、かなり好き嫌いが分かれる料理と言えるでしょう。それでもゲストの半分以上はホルモンを注文していたので、ある意味ではソウルフードに近いものなのかもしれません。
連れは「馬肉炒め定食」を注文。1,540円です。
「馬肉炒め定食」は正肉をたっぷりのネギと共に醤油風味に炒めたもの。いくらか頂きましたが、これは美味しいですねえ。野性味あふれるパワフルな馬肉にジャジャっと炒めたネギがよく合う。ビールを呼ぶ味わいであり、運転があることが悔やまれます。
お会計はふたりで5千円弱。酒を飲んでいないのに思ったよりも高いな、というのが素直な印象です。それでも都心で馬肉料理を食べることを考えれば割安ですし、何より「馬肉炒め定食」はとても美味しかった。熊本を訪れた際の話のタネにどうぞ。退店時は「あとぜき」をお忘れなく。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

華 千房(HANA CHIBO)/恵比寿

お好み焼きの「千房」が新業態。恵比寿ガーデンプレイスタワー38階のレストランフロアに入居します。通常ラインの「千房」よりもプレミアムな位置づけのようで、コース仕立ての料理にステーキを食べ、〆にお好み焼きという面白い試みです。
我々はランチタイムに予約ナシでお邪魔しました。伝統的な鉄板焼きゾーン、個室、テーブル席、ペアシートと様々なスタイルの座席が用意されています。我々は少し高くなった場所にあるペアシートに着席。あいにくの天気ですが、好天時には富士山が見えるそうです。
1,800円のランチセットを注文。まずは小さなサラダとホタテのカルパッチョ。サラダの質は中くらいといったところですが、ホテタは中々しっかりとしたものであり普通に美味しい。
続いて「海老とマッシュポテトのアメリケーヌソース」。海老の身ならびに頭の部分を押し付けてせんべいにしたものが旨い。他方、仰々しい料理名ながらソースは濃密さに欠けています。
主題の「黒豚玉」。一般的なジュウジュウ系のお好み焼きとは異なり、キャベツがたっぷり入ったパンケーキのような、形がしっかりしたタイプです。ピザ状にカットされソースの量も必要最低限。お好み焼きというより新手のキャベツ料理を食べたような感覚。
デザートも付きます。が、これはコンビニスイーツと大差なく、また、量も1口サイズ。あくまでオマケと捉えましょう。
税金を含めてお会計は2千円弱。立地を考えればそう悪くない費用対効果です。ただし雑で暴力的なお好み焼きを期待して訪れると肩透かしを食うでしょう。あくまで「華 千房」スタイルのお好み焼き。新手のキャベツ料理としてどうぞ。

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恵比寿も十番に負けず劣らず良い街ですよね。1度住んで、片っ端から食べ歩いてみたいなあ。よそ者ながら印象に残ったお店は下記の通り。
恵比寿を中心に話題店が整理されています。Kindleだとポイントがついて実質500円ちょい。それにしては圧倒的な情報量。スマホやタブレットに忍ばせておくと出先で役立ちます。

たこつぼ/八丁堀(広島)

創業100年を超える老舗。広島を代表する割烹でありミシュラン1ツ星。食べログではブロンズメダルを獲得しています。
店内はカウンター席のみで10席強。我々を除いては常連客が殆どであり、地元に愛されているお店です。三代目の田中泰弘シェフの客あしらいが有名なのですがランチタイムは不在にしており、代わりにおばちゃんたちがテキパキと料理をこなします。
ランチは「うな重」や「あなごめし」などのセットメニューが主力なのですが、アラカルトでおでんも注文することができます。皆、セットメニューを注文の上、おでんをつまみながら出来上がりを待つというスタイル。おでんそのものは美味しいのですが価格の記載が無く、最終支払金額から逆算するに1品300~500円ぐらいと結構高い。
セットメニューにはお野菜の炊き合わせが付随します。こちらは作り置きのものを盛り付けるだけなのですが、素材が良くかなりしっかりと調味するスタイルであり、酒が飲みたくなる美味しさです。正直メインディッシュよりもこちらのほうが印象に残りました。
私は「小鰯のさしみとご飯」を注文。なるほど確かに美味しいのですが、コレにゴハンと味噌汁、先の前菜がついて税別3,500円というのは割高に感じました。
ライスには海苔がふりかけられるのですが雑然としたプレゼンテーションであり芸術点が足りない。ごはんの味わいそのものも一般的な定食屋のそれと大差ありません。
お新香は美味しいですね。恐らくは自家製であり、広島の老舗割烹の面目躍如たる味わいです。
赤出汁の具材はアサリ。出汁が弱く赤味噌のパンチばかりが響き、全体としてイマイチ。
連れは「あなごめし」を注文。税別で4,200円です。一口頂きましたが、なるほど旨いが高いという、おでんや「小鰯のさしみ」と同じ感想であり、つまりはそういうお店なのでしょう。
なんやかんやで支払金額はひとりあたり5千円を超えました。ミシュラン1ツ星割烹におけるランチという意味では絶対値としての支払金額は小さいですが、さて食事そのものの費用対効果を考えるとどうでしょうという印象でした。

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和食は料理ジャンルとして突出して高いです。「飲んで食べて1万円ぐらいでオススメの和食ない?」みたいなことを聞かれると、1万円で良い和食なんてありませんよ、と答えるようにしているのですが、「お前は感覚がズレている」となぜか非難されるのが心外。ほんとだから。そんな中でもバランス良く感じたお店は下記の通りです。
黒木純さんの著作。「そんなのつくれねーよ」と突っ込みたくなる奇をてらったレシピ本とは異なり、家庭で食べる、誰でも知っている「おかず」に集中特化した読み応えのある本です。トウモロコシご飯の造り方も惜しみなく公開中。彼がここにまで至るストーリーが描かれたエッセイも魅力的。