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焼肉幸泉(こうせん)/京成立石

都内で最も予約の取れない焼肉店のひとつ「焼肉幸泉(こうせん)」。町焼肉界隈の最高峰であり、テレビ番組の「情熱大陸」でも特集され、そのレジェンド感は日に日に増しつつあります。食べログでは当然に百名店に選出。立石エリアの再開発のスケジュールが確定しないため新規の予約は止めているそうであり、私は1年半ぶりの訪問です。
店内はお祖母様の代のレトロな雰囲気を残しつつも清潔に維持されています。1階は約10席のカウンター席で、2階は靴を脱いで上がるスタイルのお座敷。カウンター席は店主の手捌き、肉の切り付け、味付けを目の前で見ることができるシェフズ・テーブル。店主は好青年オブ好青年であり、人気の焼肉屋にありがちな高圧的な態度は微塵も感じさせません。
飲み物はいくらだったっけかな。大食漢がさんざん飲み食いして1.5万円という世界線なので、ビールやレモンサワーに係る支払金額は誤差程度に捉えましょう。
真っ白に輝くセンマイ刺し。独特の臭みが完全に除去され、純粋なコリコリとした食感と淡白な旨味のみが残ります。下味がしっかりとついているのでそのままでも旨く、添えられたタレで酸味と甘辛さを加えながら楽しむのも良し。濃厚なタレ焼肉コースの幕開けとして最高のスターターと言えるでしょう。
キムチ盛。浅漬けのサラダ感覚ではなく、しっかりと発酵の旨味が乗った本格派。辛みは穏やかで甘味と旨味が重層的に重なり合い実に深みのある味わいです。
アボカドキムチ。まったりと完熟したアボカドのクリーミーなコクにキムチダレの持つ動物性・魚介性の旨味と辛味が加わる中毒性の高いひと皿。クリーミーかつ濃厚な口当たりで、ユッケやレバ刺しなどが規制される現代において濃厚な生食感を楽しむための知的な代替案とも解釈できます。
それでは焼肉に入りましょう。見てください、この牛脂の存在感を。もうこのビジュだけで旨そうで、実際ラストはカリカリに焼いて食べてしまえるくらいの肉質です。
上タン。適度な厚みのスライスでであり、ニンニクと胡麻油、塩が効いたパンチのある味付けがたっぷりと揉み込まれています。火を入れるとサクッとした心地よい歯応えがあり、噛み締めると溢れ出す肉汁とジャンキーな塩ダレが混ざり合います。
上ハラミ。サシが美しく入り、火を通すと繊維がほろりと解ける柔らかさ。この部位特有の濃い肉の味が感じられ、脂はしつこくなく、むしろジューシーな旨味ジュースとして舌を潤します。
堪らず皆で注文するライス。粒立ちが良く、水分量はやや少なめの硬め仕上げであり、脂とタレをたっぷり纏った肉を受け止めるのに最適なコンディション。噛み締めるとお米本来の甘みが広がり、濃厚な味付けの肉とのコントラストを形成します。いい大人が高校生のように何杯もおかわりしてしまいました。
赤身角切。ホルスタインのモモ肉を厚みのある角切りにしており、特有の瑞々しさと鉄分を含んだ旨味を楽しみます。マグロの赤身やカツオのタタキを彷彿とさせる味覚であり、ほのかな酸味すら感じさせます。
上ロース。霜降りが適度に入った部位を大判に薄切りにし、サッと炙って頂きます。すき焼きの肉を直火で焼いたようなリッチな味わいであり、決して脂っこすぎず、赤身の酸味が後味を引き締めます。これは間違いなくオン・ザ・ライス案件であり、卵黄があれば絡めたくなる味覚です。
先の赤身角切を薄切りで。片面のみをサっと焼き、片面の香ばしさと、もう片面のレアな滑らかさを同時に楽しむ高度な食体験。きめ細やかな肉質でパサつきは一切なく、舌に馴染む滑らかさが真骨頂。
サガリ。特有の野性味があり、筋肉質で味が濃い。脂は控えめですが、そのぶん肉汁の純度が高く、噛みごたえも心地よい。肉の繊維に沿って歯が入る感覚が楽しく、ビールとライスが止まらないひと品です。
趣向を変えて豚足。ボイルしたものを味噌ダレで食べるスタイルであり、余分な脂が削ぎ落とされ、純粋なゼラチン質へと昇華しています。口に含めば体温でとろりと解け、淡白でクセのないそのキャンバスに、濃厚な味噌ダレが強烈なアクセントを加えます。
レバニラ鉄板焼。網で直接焼くとパサつきがちなレバーを、タレとニラの水分の中で煮焼きにすることで、ふっくらとした食感を維持するアヒージョ的アプローチ。レバーは火を通してもプリプリとした食感をキープしており、ニラの鮮烈な香りと、熱々の鉄板で焦げたタレの匂いが食欲を刺激します。
ホルモンMIX。ゲタ、ミノ、ギアラ、大腸と食感も脂の量も異なる部位が盛り込まれており、タレの味わいが全体を統一していますが、噛むたびに異なる景色が見えます。ミノのザクザク感、大腸の爆発する脂、ゲタの肉々しさ、ギアラの濃厚な旨味。内臓肉や骨周りの肉を愛する立石という土地柄にも合致したひと皿です。
ツラミ。牛の頬肉であり、よく動かす部位なので筋肉質で硬めですが、薄くスライスすることで独特のコリコリ感と強い旨味を楽しめるようになりました。噛めば噛むほど濃厚な味が染み出してくるのが印象的で、赤身ともホルモンとも違う、野趣あふれる味わいがあります。
上カルビ。言わずと知れた焼肉の王様であり、表面をカリッと焼き、中はレア気味で頂きましょう。タレがバッチリきいているので脂の重さを感じさせず、。白米との相性は全メニュー中最強クラスです。
玉子スープ。主役の玉子はふわふわに仕上げられており優しい口当たり。塩味は角が取れてまろやかで、焼肉で疲れた舌を癒やすオアシスのような存在です。具材はシンプルですが、それゆえに出汁の質の良さが際立つ滋味深いスープです。
真っ赤な見た目が食欲をそそるテグタンスープ。肉を長時間煮込んだスープを土台にコチュジャンや唐辛子の辛味が加わります。単に辛いだけでなく、野菜の甘みや肉のコクが溶け込んでおり、ゴロゴロと入った肉塊はホロホロに崩れていく。残しておいたライスを少し入れ、セルフのクッパで私は絶頂に達しました。
以上、グルマンディーズたちがさんざん飲み食いして1人あたり1.5万円。このクオリティの焼肉を腹いっぱい食べてこの支払金額はまさに幸せの泉。天下茶屋の「板前焼肉 一斗(いっと)」「くいや」にも似たライブ感であり、貸切由来の一体感も堪らない。次の予約は再び1年半後であり、何なら友人の結婚披露宴よりも先のスケジュールである。

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寺門ジモン監督の焼肉映画。焼肉文化についてここまでシリアスに描けているのは監督の焼肉に対する並々ならぬ拘りに因るのでしょう。焼肉業界の有名店や有名人も沢山登場するので、焼肉通を標榜するのであれば必修科目の1本です。

jiü(慈雨、じう)/門前仲町

東京のフランス料理界における最高峰の一つとして君臨する「銀座レカン」。その第7代総料理長を務め上げた渡邉幸司シェフが開業した「渡辺料理店」。今や「予約困難店」の代名詞となりましたが、この度その姉妹店にあたる「jiü(慈雨、じう)」がオープンしました。場所は門前仲町で、「渡辺料理店」の斜向かいに位置します。
当店のテーマは「薪火」であり、1階のカウンター席はキッチンを目の前に、その炎を用いた演出を楽しむことができます。2階以上は木の素材感を活かした内装であり、サービスと共にカジュアルな雰囲気。窓からは大横川を望むことができ、その川岸は桜並木となっており春には水面に映る桜を眺めながら食事ができます(写真は「東京ノイエ」公式ウェブサイトより)。

当店の厨房を預かるのは大和田龍之介シェフ。お父様もフレンチの料理人だそうで、フランスで見識を広め、帰国後はレカングループの店舗で研鑽を積み現在に至ります。
グラスのシャンパーニュは1,800円で、ボトルだと1.3万円から始まり、周辺相場からはやや高めかもしれません。とは言えゲストの殆どは港区出身風なので、まあ、こんなものでしょうか。
アミューズ3種。イクラをのせたフロマージュブランにフォアグラのテリーヌ、秋刀魚。いずれも秋の深まりを感じさせる食材であり、とりわけフォアグラのの濃厚な脂分と完熟した柿の組み合わせが良かったです。
スープにはサツマイモの「紅はるか」を起用。蜜のような甘さが特長的なのですが、序盤に食べるにはちょっと甘すぎるかもしれません。オマケでパンペルデュ(フレンチトースト)も組み込まれており、このタイミングで味わうには重く感じました。
パンは天然酵母を用いた自家製。外皮はパリッと香ばしく内側はしっとりと水分を保ち、粉の旨味と酵母由来のほのかな酸味が感じられます。生地に練り込まれたカレンズ(小粒のレーズン)の自然な甘みも名脇役。パン単体として非常にレベルの高いひと品です。
秋の恵みを多角的にひと皿。脂が乗り切ったサバは薪火でスモーキーな風味を身に纏い、寄り添うナスも香ばしい。大粒で甘みが強い落花生「おおまさり」を塩茹でにして添えることで、ホクホクとした独特の食感が楽しいアクセントを加えます。
秋の味覚の王様である松茸とシェーブル(山羊のチーズ)のリゾット。松茸の官能的な香りとシェーブルチーズの個性的な風味が意外なほどよく合い、互いを引き立てます。リゾットは雑穀米のプチプチとした食感が心地よい。
フォアグラのポワレ。ソースはペリグーで、トリュフの芳醇な香りとソースの深いコクがフォアグラの脂の甘みと一体となります。カボチャの自然な甘みを生かしたモチモチのニョッキも魅力的な演出。フランス料理の真髄を感じさせる、クラシックかつ重厚な味覚です。
太刀魚は皮目をパリッと香ばしく、身はふっくらと柔らかく火入れしています。ソースはヴァンブラン。フランス料理の王道中の王道であり、バターの豊かなコクが太刀魚の上品な脂と調和します。重厚な味覚でありコッテリとしたブル白にピッタリだ。
メインはエゾジカ。脂肪が少なくきめ細やかな赤身肉であり、かなりの量ですが食べる速度は少しも衰えません。ナイフを入れるとしっとりと柔らかく、噛み締めると滋味深い鉄分と肉本来の旨味を楽しみます。赤ワインをベースにした古典的なソースも見事です。
アヴァンデセールにカブのアイス。熾火でじっくりと火入れすることで蕪本来の甘みを引き出しており、当店の独創性を象徴する味覚。お口直しだけでなく、どこかの料理に起用しても面白いかもしれません。
メインのデザートは種がなく皮ごと食べられる大粒のブドウ「ナガノパープル」を主軸に添えており、スモーキーな風味のバヴァロアと共に楽しみます。バラの華やかな香りも纏っており、五感を刺激し記憶に詰め後を残す甘味です。
お茶菓子とハーブティーでフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上のコース料理が1.6万円で、質および量を考えれば大変お値打ち。ワインを含めても2.5万円程に落ち着きます。他方、雰囲気はとてもカジュアルなので、食道楽で無い方は支払金額とのギャップに戸惑うかもしれません。グルメ仲間と一緒にどうぞ。

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日本フレンチ界の巨匠、井上シェフの哲学書。日本でのフレンチの歴史やフランスでの修行の大変さなど興味深いエピソードがたくさん。登場する料理に係る表現も秀逸。ヨダレが出てきます。フランス料理を愛する方、必読の書。

焼肉幸泉(こうせん)/京成立石

コロナ後に最も話題となった焼肉屋と言えば「幸泉(こうせん)」。ハードボイルドな飲み屋が立ち並ぶ街、京成立石にある老舗であり、2022年にお孫さんが引き継ぎ一気にブレイク。さっそく食べログの百名店に選出されました。場所は京成立石駅からすぐで、店員が常に怒鳴っている名店「宇ち多゛(うちだ)」のお向かいにあります。
店内はL字のカウンターが8席ほどで、2階には個室もあるようです。店主は好青年を具現化したような方であり、予約の取れない焼肉にありがちな高圧的な態度は微塵もありません。
センマイ刺し。それほど好きではない食材なのですが、このセンマイは別格。臭みやエグ味などは一切なく、とてもキレイな味わいです。歯ごたえが良くニンニクのきいたネギ塩ダレが良く合う。ビールがジャンジャン進みます。
なんでもないキムチ盛なのですが、これが驚くほど旨い。辛みは穏やかで甘味と旨味が重層的に重なり合い実に深みのある味わいです。
アボカドキムチ。漬け込むわけではなく、熟れたアボカドをキムチのタレで食べるという試みで、やはり、旨い。このタレ、持ち帰りで売ってくれないかな。
さっそくお肉に入ります。まずはタン塩。ほどよく厚みがありつつも品のある美味しさ。梅ダレで食べるというのもありそうでない取り組みです。
ハラミ。こちらはキッチリと厚みがあって、まさにバベットステーキ。歯ごたえがしっかりあって、肉喰ってる感が押し寄せます。
赤身角切。マグロのブツもかくやという赤身っぷりであり、見た目通りのクリアな味わいです。
タレに入ります。まずはロースで、焼肉の教科書とも言うべきスタイルの味わい。
カルビはかなりの分厚さです。それでいて赤身と脂身のバランスが良く、決してしつこくありません。
タレの旨さに我慢ならなくなり、思わずライスを注文。肉を白米の上にバウンドさせつつワッシャワッシャと掻き込みます。地味にこのゴハンめっちゃ美味しい。
先の赤身を今回は薄切りで。片面のみをサっと焼き、清澄な味覚を楽しみます。
ゲタ。少し硬めの食感が特長的で、肉の味が濃く、噛むほどに旨味が広がります。タレも肉質に合わせて変わって味噌風味。
ホルモンミックス。立石のホルモンが旨いなどと言うと、ゴロツキのように捉えられかねませんが、この内臓は本当に美味しい。食感に旨味、タレの濃さ、いずれをとっても一級品で、バッキバキにビールと白米が進みました。
レバニラは鍋ごとロースターの上に置き、たっぷりのタレで軽く煮込みます。今夜のクライマックスとも言うべき濃密な味わい。白米を口に運ぶ手が止まらない。こんな美味しいレバニラ定食は初めてだ。
〆は冷麺。2024年夏の新作のようで、旨味の強いスープに歯ごたえのある麺がベストマッチ。量もたっぷりあって、糖質マックスの背徳的な一夜となりました。ちなみに↓の本では当店が取り上げられ、表紙の写真もコチラでの出来事だそうです。
以上を食べ、お会計はひとりあたり1万円と少し。このクオリティの焼肉を腹いっぱい食べてこの支払金額は立石の奇跡と言えるでしょう。鮨屋よろしく目の前で手切りしていくライブ感も最高で、都心の何万円もするオシャレ焼肉が如何に薄っぺらい存在かが良くわかります。まさに幸せの泉。次回の予約は1年半後だ。

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