cado(カド)/五反田

2024年にオープンした五反田のイタリアン「cado(カド)」。五反田と言ってもいかがわしい歓楽街方面ではなく目黒川よりあっち方面なので落ち着いた雰囲気。店名は英語の「calm down(落ち着く)」の略と、角部屋の立地に由来しているそうです。
お店の壁面の殆どを窓が占めており開放的な空間。店内レイアウトはカウンター主体であり、周りにテーブル席がいくつか配置されています。大勢で来るというよりは、1-2人でお邪魔するのが過ごし易いでしょう。
ナチュラルワインが自慢のお店で、グラスは千円から。我々はボトルで注文し、こちらが8千円ぐらいだったかな。ナチュラルワイン特有の土っぽさを感じつつ、リンゴのコンポートや熟した柑橘を思わせるドライな果実味とフレッシュな酸味が優しく広がります。
黒板に書かれたアラカルトメニューからジャンジャン注文していきます。こちらはウフマヨで、ソースはケッパーやアンチョビなどを混ぜ込んだトウパネーゼ。パンチの効いたソースが卵黄の甘味を引き立てます。
秋ナスと鶏せせりのカポナータ。とろけるような食感の秋ナスに鶏せせりの持つ独特の歯ごたえが良く合う。トマトをベースにしたソースは、香味野菜の甘みとハーブの爽やかな香りが溶け込み、全体の味を引き締める役割を果たしています。
秋刀魚の炙りカルパッチョ。新鮮で脂の乗った秋刀魚は皮目を軽く炙ることで、香ばしい風味とパリッとした食感をプラスしています。ソースには焦がしたネギを用いており、特有の香ばしさとほのかな苦味が秋刀魚の濃厚な脂の旨味とにマッチします。日本酒と合わせても良さそうだ。
水茄子にはパルミジャーノを振りかけます。果実を感じさせるフレッシュな水茄子にチーズの塩気と旨味が溶け込んでいき、スイカに塩をかけて楽しむような既視感を覚えました。シンプルで誤魔化しのないひと品です。
釜揚げシラスとレンコンの生海苔アヒージョ。程よい塩気の釜揚げシラスにシャキシャキとした歯ごたえが心地よいレンコン。オイルに溶け出した生海苔の豊かな磯の風味が全体を上手く取りまとめます。バゲットをオイルに浸して最後の1滴まで楽しむのだ。
ラザニア風のグラタン。(作るのが超タイヘンな)ラザニアの代わりにペンネを用いており、より手軽に、そして満足感のあるひと品に仕上げたアイデア料理。平たいラザニアに比べるとペンネのほうがソースがよく絡むので、むしろこっちの方が良いかもしれません。チーズやソースの美味しさは当然として、思いのほか肉がゴロゴロ入っているのが最高でした。
パスタは焼きトウモロコシのアラビアータ。名残のトウモロコシをトマトソースで仕上げており、程よい辛味が穀物の甘さを際立たせます。〆の食事としてはもちろん、お酒のつまみとしても楽しむことができます。
以上の料理とワインを2人でシェアし、お会計はひとりあたり8千円程。これだけ色んな味覚を楽しんでこの支払金額はリーズナブル。イタリアンを土台としつつも創作的な料理も多く、上質な洋風居酒屋として使い勝手良し(誉め言葉です)。

平日は17時、土日祝は15時オープンという営業スタイルも酒飲みには堪らない。五反田エリアではかなり使える1軒です。

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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。

八重勝(やえかつ)/新世界(大阪)

大阪という都市の食文化を語る上で、新世界とその中心を貫くジャンジャン横丁を避けて通ることはでません。その横丁で最も長い行列を誇る老舗の串カツ専門店「八重勝(やえかつ)」。周囲には観光客向けの串カツ屋が乱立していますが、地元住民は当店しか認めない者が殆どです。私は1年ぶり100回目の訪問です。
週末のピークタイムは1時間待ちはザラであり、警備員が行列の整理にあたるほどなのですが、今回は平日の16時というヘンテコな時間にお邪魔したため1秒も待たずに入店することができました。当店にはもう20年近く通っていますが、待ち時間ゼロというのは初めてであり、LINEグループで親族一同に自慢したほどです。
アルコールにつき、ビールは大瓶が650円、バケツみたいなジョッキでも800円と良心的。中瓶が1,100円のちょづいた焼鳥屋とは価値観が大きく異なります。

ビールで喉を潤した後は寿司屋さながらに並ぶ目の前のショウケースから好みの食材を注文していきましょう。当店では冷凍食品を一切使用せず、素材には自信があるとのことです。
大阪の串かつ店における基本的な約束事として、単に「串かつ」と注文した場合、それは牛肉を指します。八重勝もこの伝統に倣っており、当店での式の開始を告げるメニューでもあります。1人前3本セットで420円。衣は「サクサク」という表現よりも「ふわっと」「しっとり」と形容するほうがしっくりくる。この軽やかで柔らかい食感の秘密は、衣にすりおろした山芋を加えていることにあります。
続いて「どて焼き」。いわゆる牛すじの煮込みであり焼いてはいないのですが、大阪ではそのように呼称することが条例で定められています。多くの店が醤油ベースの濃い味付けであるのに対し、当店では甘口の白味噌をふんだんに使用。ドロリとした甘さと深いコクが生まれ、揚げたての串かつを待つ間の最初の一品として最適。こちらも1人前3本セットで420円です。
私の個人的なオススメは「えび」。1本550円と他の串に比べて突出して高価ですが、その価値は食した者すべてが認めるところでしょう。注文が入ってから殻を剥き始めるという徹底した鮮度管理により、この上なくプリプリ。新世界のプリンセス・プリンセスです。
エビ以外にも、タコ、イカ、シシャモ、夏場のキス、冬場の牡蠣など、旬で質の良い魚介類が取り揃えられています。もちろんこれらもまた、冷凍品を一切使用していません。 
玉ねぎ、れんこん、グリーンアスパラ、しいたけといった野菜類も決して脇役ではなく、直火で熱した鉄鍋でラードで一気に揚げ切っており、野菜本来の甘みが最大限に引き出されています。
手元には口直しのためにザク切りの生のキャベツが用意され、サラダ代わりに楽しむことができます。「ソースの二度づけ禁止」は絶対の掟であり、大阪ではこれに違反すると極刑に処せられます。法律で決まっています。その他、90分の時間制限やスマホやタブレットでのゲーム禁止、動画撮影禁止など、イマドキのルールも定められているので遵守しましょう。
その他、もっちりとした食感が楽しい「生麩(なまふ)」 、衣の中でとろける熱々の「カマンベールチーズ」 、そして大葉の爽やかな香りがアクセントとなる「豚だんご(しそ入り)」  など、他ではあまり見られないユニークな串も用意されています。
今回も素晴らしかった。ネット上の口コミには「横柄」「上から目線」「無愛想」といった厳しい批判が数多く寄せられており、その急かされるような注文の取り方や質問に対するぶっきらぼうな返答、全体的に温かみに欠ける対応が一部の客に不快感を与えているようですが、このあたりは元々スラム街で「居酒屋で覚醒剤を売るな!」がスローガンなのに、君たち何を期待しているんだと問いたい。
このハードボイルドな世界観は文化的なフィルターとして機能しており、それは暗に「八重勝は長居をせず、真剣に串かつを味わう場所である」というメッセージを店側が発信していることに他なりません。「お客様は神様」的なサービスを期待するananのセックス特集買ってそうなタイプにはまず受け入れられない価値観でしょう。この無愛想さこそが、逆説的に硬派なブランドイメージを支える不可欠な要素なのだ。

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「東京最高のレストラン」を毎年買い、ピーンと来たお店は片っ端から行くようにしています。このシリーズはプロの食べ手が実名で執筆しているのが良いですね。写真などチャラついたものは一切ナシ。彼らの経験を根拠として、本音で激論を交わしています。真面目にレストラン選びをしたい方にオススメ。

ここ数年で滞在した高級・有名とされているホテルを一覧化し◎〇△×と記した

年間を通じて外泊が多いので、ここ数年で滞在した高級・有名とされているホテルを一覧化しました。

◎〇△×と記していますが、これは私が滞在した時点における感想であり、価格や為替の変動、混雑度合い、当時のスタッフの対応など偶然に因る部分も多いので、話半分に捉えてください。また、ハイアットやヒルトンは最上級会員であり、ひらまつは株主なので、素で予約する場合とは対応が異なるかもしれません。

費用対効果も重要視しています。お金に糸目をつけないお金持ちの方々とは観点が異なることをご承知おきください。

ところで、私は子連れ客とそれをコントロールできない宿泊施設を憎んでおり、そういった客層が支配的なホテルは自然と△や×が多くなります。しかしながら、これは見方を変えれば家族旅行に向いたホテルを選ぶ指標となり得るかもしれません。


【ハイアット】
<北海道>

<関東>
△:ハイアットリージェンシー東京ベイ

岡飯(OKAFUN、オカファン)/恵比寿

恵比寿と広尾の中間あたりに開業した「岡飯(OKAFUN、オカファン)」。ナチュラルワインと中華料理を楽しむことができるワインバーです。以前は「タベルナクアーレ クラシケ (Taverna Quale CLASSICHE)」というイタリアンレストランがあったテナントで、JR恵比寿駅東口から恵比寿通りを直進し、社会教育館交差点を左に曲がり少し歩いた右手に位置します。
これ以上は無い狭小店舗であり、それでも何とかカウンターに8席ほどを確保しています。2階は貸切スペースのようで、予約制で火鍋を提供をしているそう。お手洗いは一旦店舗を出たところにあり、とにかく狭い。そのため訪れるゲストは偶然通りがかった人々ではなく、事前に店のコンセプトを理解し、その体験を求めてやって来る目的意識の高い方々ばかりです。
当店はナチュラルワインが主力であり店主に全てお任せ。ドリンクメニューや価格表は一切無く不安を覚えるのですが、後からレシートを確認したところ、ビールは小瓶で800円、(私が楽しんだ)グラスワインは1杯1,300円でした。なお、ボトルワインの場合は小さなセラーからセルフで選ぶことができます。
青菜とアサリ炒め。シャキシャキとした青菜の食感と、アサリから溢れ出す濃厚な海の旨味が口いっぱいに広がります。ニンニクの香ばしい風味が食欲をそそり、アサリの滋味深い出汁が、炒められた青菜の甘みとほのかな苦みを優しく包み込みます。
中華風クレープ。程よく弾力を感じる生地に甘辛い味噌がたっぷり。キュウリやネギ、パクチーなど香り高い具材も組み込まれており、万人受けする味覚です。
よだれ鶏。一般的なそれとは異なり、ほんのりと温かく優しい味わい。程よくスパイシーであるものの決して乱暴な辛味を感じることはなく、円やかな調味と食感が記憶に残りました。
エビプリ。いわゆるエビマヨに近い料理であり、大粒でプリプリとした口当たりの海老にたっぷりのソースを楽しみます。ソースはマヨネーズ調ではあるものの決して単調でなく、程よい甘味が感じられ濃厚でクリーミー。
ラムワンタン。薄くなめらかなワンタンの皮を噛みしめると、中から羊肉特有の豊かでミルキーな風味が溢れ出ます。ワンタンだけでなくスープの味わいも見事であり、「広州市場(こうしゅういちば)」もそうでしたが、ここのところワンタンに恵まれた丁寧な生活をおくっています。
以上をつまみ、軽く飲んでお会計は6千円。ワインバーで旨いツマミが出てこの支払金額であれば妥当でしょう。ポーションは小さくあくまでツマミという位置づけであり、店主が独りで運営しているので腹いっぱい注文するには気まずいものがある。0次会や2次会に是非どうぞ。

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それほど中華料理に詳しくありません。ある一定レベルを超えると味のレベルが頭打ちになって、差別化要因が高級食材ぐらいしか残らないような気がしているんです。そんな私が「おっ」と思った印象深いお店が下記の通り。

本場志向で日本人の味覚に忖度しない中華料理が食べたい方へ捧ぐ書。東京の、中国人が中国人を相手にしている飲食店ばかりが取り上げられています。ある意味では中国旅行と同じ体験ができる裏技が盛りだくさん。

創作うどんの店 だいすけ/旭橋(那覇)

大阪の超人気店「麺くいやまちゃん」で名物の「かすカレーうどん」を食べ、すっかり虜になった私。那覇にも「かす」をテーマとしたうどん屋があると知り、すぐに向かってみます。が、妙に臨時休業の多い店であり、3度目の訪問でようやくお邪魔できる運びとなりました。
店内はカウンター席に加え小上がりの用意もあります。レジ近くの熱帯魚の水槽がかわちい。また、たまたまかもしれませんが、店内は妙に外国人観光客が多く、スーツケースがパンパンで圧迫感がありました。また、時たま営業しているかどうかの確認電話が鳴っており、やはり臨時休業が定番化しているのかもしれません。
私は「麺くいやまちゃん」での体験の再来を期待し、「かすカレーうどん」を注文。デフォが900円で、温玉と豚肉を追加し合計で1,250円。ランチタイムは塩むすびが無料でサービスされます。
「かすカレーうどん」は、うーん、よっと思ってたのと違いました。まず、「かす」の量が非常に少ない。かといって10グラム増量が170円と妙に高く、当店の主力選手の割になんだかなあというお気持ちです。ちなみに「かす」とは「油かす」のことであり、牛の腸(ホルモン)をじっくり揚げて水分や脂を飛ばした食材で、大阪を中心に関西の食文化で親しまれています。
スープはモッタリとした粘度があり、カレーうどんのスープというよりも実質カレーに近いものでした。麺は柔らかく、讃岐うどんのような強いコシを追求するスタイルとは真逆を行きます。
せっかくなので、残ったスープにオニギリを移設しカレー化計画。やはり粘性の高いスープであるため、いよいよカレーライスです。
那覇において「かすうどん」という新しいテーマにチャレンジする心意気は認めますが、味そのものはチェーンのうどん専門店のカレーうどんと変わらないなあという印象を抱きました。不定休でお邪魔するタイミングも難しいので、旅行者というよりはご近所さん向けのお店なのかもしれません。

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寒い季節は沖縄で暮らしているので、旅行やゴルフだけで沖縄に来る人よりかは一歩踏み込んでいるつもりです。沖縄の人ってネットに書き込みしないから、内地の人が知らない名店が結構多いです。
沖縄通を気取るなら必ず読んでおくべき、大迫力の一冊。米軍統治時代は決して歴史のお話ではなく、今の今まで地続きで繋がっていることが良くます。米軍の倉庫からかっぱらいを続ける悪ガキたちが警官になり、教師になり、ヤクザになり、そしてテロリストへ。沖縄戦後史の重要な事件を織り交ぜながら展開する圧巻のストーリー構成。オススメです。

カンタスクラブ(Qantas Club)/シドニー空港ターミナル3

シドニー空港の国内線ターミナル3内にある「カンタスクラブ(Qantas Club)」。国内線利用者向けのプレミアムラウンジで、保安検査場を通過した後のエアサイド、出発階(Level 2)にあり、エントランスはゲート4とゲート5の向かい側に位置します 。
ターミナル3の最上階の大部分を占める広大な空間であり、中央にサービスカウンターやビュッフェエリアがあり、そこから放射状に座席エリアが広がる円形のレイアウトが特徴的 。  広さは千平米㎡以上あり、座席数も数百はあるのですが、やや古めかしさも感じます。
大きな窓からは自然光が豊富に差し込み、駐機場や滑走路を一望できる開放的な眺望が楽しめるます。ビュッフェ周辺は最も混雑するエリアですが、ラウンジの奥に進むにつれて客室は落ち着いていきます。家族連れ向けに専用のキッズエリアも設けられています。
国内線ラウンジながら食事の用意もあり、このあたりは日系エアラインも見習ってほしいところです。時間帯によって提供される食事は異なり、ちょっとしたホテルの朝食会場のラインナップと同等のクオリティを誇ります。
「バリスタが常駐し美味しいコーヒーを淹れる」と鼻息は荒いのですが、けっきょくエスプレッソマシーンのボタンを押しているだけなので、味わいに変わりはありません。このあたりはニュージーランド航空のほうが気合が入っているように感じました。なお、アルコールの提供は正午からで、地元のワインやビールがたっぷりと取り揃えられており、そのへんの居酒屋よりも充実したラインナップです。
そういえばここは国内線のラウンジだった、と後から気づくほどサービスが充実したラウンジでした。国内線でこのクオリティは凄いかもしれない。きっちり食事も摂れるので、安心して頼って良いでしょう。

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