港区三田の「トラットリアセレーナ(Trattoria Serena)」。2000年に開業した老舗のイタリアンレストランであり、通りすがりの一般人は見つけられないような場所(マンションの敷地内?)に位置します。白金高輪駅からだと歩いて7-8分といったところでしょうか。
店内はイタリアのトラットリアそのものといった雰囲気で、こんなところにこんなお店が、と驚きを隠せません。志村和弘シェフは埼玉出身で、トスカーナで腕を磨いたのち沼津に「オステリア サジオ」を開業。その後2000年に移転リブランドしたそうで、奥様と息子さんと共に居心地の良い空間を作り上げています。
コース料理には自動的に飲み物が1杯付くという面白いシステムで、そこから先の料理に合わせたグラスワイン3杯セットも3千円ポッキリと良心的。ボトルのワインも5-7千円のレンジのものが多く、安心して酔っぱらえるお店です。
アミューズにブランダード。タラとジャガイモを使ったパンケーキ的な料理であり、タラのほのかな塩気と旨味がジャガイモの甘みと調和し実に濃厚。初手から焼き立てのブツが出て来るとは、当店は良い店に違いありません。
真鯛のカルパッチョ。日本料理店におけるお造りを遥かに凌駕するポーションでびっくり。真鯛の甘みと弾力ある食感が際立ちます。
ホワイトアスパラをカルボナーラ風味のソースで。ホワイトアスパラは柔らかく茹でられ、甘みとシャキッとした歯ごたえが心地よい。ソースは卵やチーズ主体でコッテリとしており、黒胡椒がピリッと効く。パンで拭って余すところなく楽しみます。
イカスミを練り込んだパスタ。当店で一番人気の料理であり、貝を中心とした魚介類と共に楽しみます。黒く艶やかな見た目と独特の磯の香りに心惹かれます。
ニョッキは空豆と共に、クリーミーなソースで頂きます。モチっと柔らかな口当たりに空豆のほのかな甘みと鮮やかな緑が彩りを添えます。
メインは和牛。かといってギトギトしたサシは入っておらず、どこまでも清澄な味覚です。思いのほか量もあり、このとき私は絶頂に達しました。ちなみにお野菜は埼玉の実家で栽培された無農薬野菜を用いることが多いそうです。
デザートはヘーゼルナッツのプリン(?)にアプリコット風味のケーキ、ラズベリーのジェラート。とりわけヘーゼルナッツの風味がつよつよで、その香ばしさとコクが後を引く美味しさです。お茶も付いてまったりとフィニッシュ。ごちそうさまでした。以上のコースが1万円で、ワインやら何やらでお会計はひとりあたり1.4万円程度。これだけの質および量のイタリア料理を楽しんでこの支払金額は大変お値打ち。やはり住宅街にある老舗の家族経営は間違いがありません。芸風は異なりますが「ヴォーロ コズィ(Volo Cosi)」に似た満足度を覚えました。
今回は一番高いコースでお願いしましたが、アラカルトでの注文も可能であり、ランチのセットは1,500円~と非常に親しみ易い価格設定。このマンションに住んでいる方々は幸せだ。

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イタリア料理屋ではあっと驚く独創的な料理に出遭うことは少ないですが、安定して美味しくそんなに高くないことが多いのが嬉しい。
- ウシマル(Ushimaru)/山武市(千葉) ←ちょっとした海外旅行に来たような満足感。
- ヴィラ・アイーダ(Villa AiDA)/岩出(和歌山) ←我が心のイタリアン第1位。
- プリズマ(PRISMA)/表参道 ←高価格帯のイタリア料理という意味では東京で一番好きなお店かもしれない。
- 三和(さんわ)/白金台 ←直球勝負で分かり易く美味しい。
- merachi (メラキ)/西麻布 ←質実剛健ながら日本的な繊細な感性も感じられる。
- Il Lato(イル ラート)/新宿三丁目 ←お魚料理のひとつの究極系。
- ヴィンチェロ(Vincero)/新宿御苑 ←どのような大食漢が訪れたとしても満足すること間違いなし。
- リストランテ ラ・バリック トウキョウ(La Barrique Tokyo)/江戸川橋 ←無冠の帝王。
- TACUBO(タクボ)/代官山 ←ポイントは二番手の存在。
- アロマフレスカ(Ristorante Aroma-fresca)/銀座 ←好き嫌いを超えた魅力。普遍性。
- ザ・ひらまつ ホテルズ&リゾーツ 仙石原/箱根 ←最高の家畜体験。
- クッチーナ(CUCINA)/大垣(岐阜) ←何でもアリの旨いもの屋。
- ひまわり食堂/富山市 ←こねくり回すことなく、いま何を食べているのかハッキリとわかる味と量。
イタリア20州の地方料理を、その背景と共に解説したマニアックな本。日本におけるイタリア風料理本とは一線を画す本気度。各州の気候や風土、食文化、伝統料理、特産物にまで言及しているのが素晴らしい。イタリア料理好きであれば一家に一冊、辞書的にどうぞ。