富山で蕎麦を語る際に必ず店名が挙がるのが「神通町 田村(じんづうまち たむら)」。富山駅から歩いて10分ほど。神通川沿いに位置しており、駐車場も何台か用意されています。
ちなみに「神通」は「じんづう」か「じんずう」か、人によって記載が異なるので、地元の親切な方は正解を教えてください。
ピークタイムど真ん中の正午にお邪魔したため30分近く待ちました。十割蕎麦は千切れ易く少量づつしか取り扱うことができないため、どうしても調理に時間を要するそうです。とは言え記帳台に名前と電話番号を書いておけば呼び出してくれるし、店内の待合スペースも涼しいので、それほどストレスに感じることはありません。
天ぷらの盛り合わせ。ご覧の通り、まさに盛り合わせであり、これで千円ポッキリというのは大変お値打ち。海老の美味しさは当然として、野菜類は地元の旬のものを用意してくれているのが嬉しいですね。コチラとビールや日本酒ですっかりゴキゲンです。
私は夏季限定の「冷やしニシン蕎麦」を注文。1,900円です。主役のニシンを口に運ぶと、その濃厚な甘辛さと魚の旨味がガツンと広がる。冷やされることでニシンの身が少し締まり、しっかりとした食感も頼もしい。臭みは抑えられ、蕎麦との調和が考えられた仕上がりです。お蕎麦は北海道の「キタワセソバ」。実をそのまま挽き込んだ玄挽きスタイルであり、濃い色と力強い風味が特長的。冷水でピキっと締めているため、エッジのある噛み応えとツルリとした喉越しが心地よい。なるほどニシンの甘露煮に負けない力強い味覚です。
ちなみにお蕎麦は最初にそのまま味わい、次に軽く塩で、続いてつゆで、更には山椒香味油を加えて食べることが推奨されています。つゆに漬けて食べてもいいし、ぶっかけスタイルにしても良い。口うるさい蕎麦屋から遠い距離にある自由度です。
山椒香味油はどこかオリエンタルな爽やかさを感じさせ後を引く美味しさ。蕎麦湯に入れても旨い。何なら瓶ごと買って帰りたいくらいです。素晴らしいお蕎麦屋さんでした。天ぷらの費用対効果の高さ、パワフルなニシンの甘露煮、野性的で深みのある蕎麦。どれをとっても一級品であり、久しぶりに旨い蕎麦を食べたなあと心が和みました。
今回は北海道産の蕎麦でしたが、そのほか常時5-6種類の用意があり、月替わり品も登場するというガチのヲタクな品揃え。近所にあれば毎日でも通い詰めて、色々と食べ比べるに違いない。

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富山は食の宝庫。天然の生け簀である富山湾にジビエや山菜が豊富な山々、そして米と水。レストランのレベルは非常に高く、支払金額は東京の3割引~半額の印象です。だいぶ調子に乗ってきた金沢が嫌な方は是非とも富山に。
- 鮨 大門 ←銀座の半額で味と居心地の良さはそれ以上。
- 海老亭別館(えびていべっかん) ←多皿なのにモブキャラがひとつもない。
- ふじ居(ふじい) ←非の打ち所がない日本料理店。
- 美乃鮨(みのずし) ←最も幸せパワーが発揮される価格帯。
- 吟魚のはなれ 吟チロリ(ぎんちろり) ←海鮮居酒屋の最高峰。
- ピアット スズキ チンクエ(Piatto Suzuki Cinque) ←青は藍より出でて藍より青し。
- ランソレイエ(Lensoleiller) ←フランスの田舎のレストランをそのまま持ってきたような感性。
- カーヴ ユノキ(Cave Yunoki) ←料理のほとんどを富山の食材で勝負しているのが素晴らしい。
- 日本料理 山崎 ←ミシュラン3ツ星和食がこの価格で楽しめるのは富山の奇跡。
- 天ぷら小泉 たかの ←富山駅から近く昼も夜も空いているのが旅行者にとっても便利。
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- レヴォ(L'evo) ←クマがぶらさがっている。
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待機児童ゼロ、結婚した女性の離職率の低さ、貧困の少なさ、公教育の水準の高さなど、日本型の「北欧社会」が富山県にはあると分析する1冊。10年間にわたって富山県でのフィールドワークを続けてきた財政学者の視点が興味深い。