碑文谷 坂本(ひもんや さかもと)/西小山

碑文谷の隠れ超予約困難店「碑文谷 坂本(ひもんや さかもと)」。最寄り駅は東急目黒線・西小山駅で、徒歩約12分。目黒駅からはタクシーで約10分ほどかかり、俗世の喧騒から隔絶された究極の隠れ家です。
店内は茶室のニュアンスを感じさせる和の空間。1日1組限定のプライベートダイニングであり、畳のテーブルカウンターが雰囲気を盛り立てます。白金の「茶懐石鮨(ちゃかいせきずし)」と方向性が近く、独特の凛とした空気が流れています。
この手のレストランとしてはアルコールの値付けが安く、ビールは中瓶で880円、日本酒は半合で700円から。ワインの用意もあり、私の大好きなシャンパーニュが私の大好きな価格でオンリストされていました。
まずは摺流し。新ジャガイモをなめらかに擦り流したベースは、ほっくりとした甘みと上品なとろみが特長的で、そこにカラスミの濃厚な塩気と旨みが重なり、味に深みと複雑さをもたらします。枝豆は鮮やかな緑の彩りと青々とした香りを添え、視覚的にも清涼感を演出。夏が来た。
お椀はアワビに新玉ねぎ。お出汁はマグロ節から引いており、透き通るほど澄んでいながら、滋味豊かな旨みを湛えています。主役のアワビは柔らかく炊き上げられ、新玉ねぎは加熱によって甘みが引き出され、出汁と一体となった優しい味わいに。
八寸は白バイ貝にトマト、クルマエビ、鞍掛豆(くらかけまめ)に合鴨のロースト。ビジュの通り合鴨が素晴らしいですね。噛むほどにジューシーな旨味が溢れる逸品で、赤ワインが欲しむ鳴る味覚です。
お椀で用いたアワビの肝もお出し頂けました。こちらをアテに日本酒をチビチビ。日本人として至福のひと時である。
お造りはイサキにミズダコ、ムラサキウニ。調味はレモン香るポン酢でサっと仕上げており、ウニの濃い味でイサキとミズダコを楽しむという試み。夏の海の恵みを凝縮した鮮やかな一段です。
昆布締めしたホタテにナス、ゴマのペースト。とろけるような茄子にホタテの旨みとゴマのコクが絡み合う、濃厚でありながら後味の軽いひと品です。
こちらは揚げた鮎をゴハンとエゴマで巻いたお寿司。鮎の清澄な苦みとエゴマの野趣が合わさり、初夏を象徴するような味わいです。
コースの山場を飾る和牛の幽庵焼き。醤油ベースのタレに漬け込みキレイに焼き上げています。お肉の表面は香ばしく、内部は脂と赤身のバランスが良く芳醇な味わい。幽庵地のの甘辛い風味と脂の甘味が深く絡み合います。
〆の御飯は、しらすとトウモロコシを炊き込んだ季節感あふれるひと品。夏らしい明るい彩りが印象的で、トウモロコシの粒のプチプチとした食感と弾けるような甘みを心ゆくまで堪能します。食べ切れない分はおにぎりにして持たせてくれるのも嬉しい。
沿えらえたキュウリの醤油漬けや赤出汁も抜かりないクオリティ。赤出汁は海苔とじゅんさいが組み込まれており、日本の食文化の根幹が感じさせるトータルコーディネートです。
デザートにわらび餅。とろりと柔らかな口当たりに香ばしいきな粉をまぶし、素朴ながら奥深い甘さを楽しみます。デコポンの氷菓は甘みと酸みのバランスが良く、夏らしい清涼感でゴハンで火照った身体をクールダウンさせる役割を果たします。
コースを薄茶で締めくくり。ごちそうさまでした。以上を食べ、お酒もそこそこ楽しんでお会計はひとりあたり1万7-8千円といったところ。料理の質および量を考えれば信じがたい費用対効果であり、都心の5万も6万もする日本料理は如何に家賃と人件費を食べているかを痛感します。予約が取れたら迷わず行くべき店が、また一軒増えた夜でした。

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